【業界研究③:通信業界】
こんにちは、Jackです。日系事業会社・外資戦略ファーム複数社での経験を踏まえ、業界研究シリーズを投稿していきたいと思います。
シリーズ第三回目は通信業界に焦点を当て、特にこれから通信業界にエントリーしようと思っている学生や中途入社を検討している社会人の方々に対して、何かしらの気付きに繋がれば幸いです。
シリーズ第一回のコンサルティング業界、シリーズ第二回の総合商社もご関心のある方はどうぞ閲覧下さい。
目次
①通信業界の主要なプレーヤーはどこか
②通信事業者はどのようなビジネスを手掛けているか
③足元の動向/今後の戦略の見立て/必要とされる人材
①通信業界の主要なプレーヤーはどこか
まず前提として、通信業界は主に固定通信と無線通信の二つに大別されます。他にも、衛星通信や海底通信なども存在しますが、市場規模感等の観点でここでは割愛します。
ちなみに、衛星通信はソフトバンクが過去に投資したOnewebという会社が地球の大気圏に無数の衛星を飛ばして、地上/海上/高度を問わずにインターネット接続を実現しようとした事例がイメージが湧きやすい(個人的には面白いと感じた)と思うので、興味ある方は調べてみて下さい。
また、海底通信はインターネットの仕組み等を調べると理解は早いですが、要は世界中をネットワークで文字通り繋ぐため、例えば日本ーアメリカ大陸間を大平洋を横断する物理的な海底ケーブルが何本も通っており(正確な位置は、軍事上切断されるリスク等があるので非開示)、物凄くスケールの大きいトピックです。こちらも興味がある方は是非調べてみて下さい。周りでネットワークに詳しい方がいれば、「○○地域のサーバー経由だから遅い…」とかいうフレーズを良くお聞きするかもしれませんが、その仕組みが理解できると思います。
さて、本題の主要プレーヤーですが、固定通信であっても無線通信であっても表立つプレーヤーは異なれど、母体を辿るとNTTグループ、KDDIグループ、ソフトバンクグループの3強+楽天(無線のみ)という構図です。
固定通信はNTT東とNTT西の寡占状態、無線通信はドコモ、KDDI、ソフトバンク、新規参入の楽天の四社で争っています。しばしば、格安スマホ等でUQ、ヤフーモバイル、LINEモバイル等の企業名を見聞きすることが多いと思いますが、彼らは上記の4社の傘下にある、もしくは4社の回線を利用してサービスを提供するプレーヤーと捉えれば十分と考えます。
本稿では、以降は無線通信に焦点を当てて業界分析を行おうと思います。
②通信事業者はどのようなビジネスを手掛けているか
ここからは無線通信に焦点を当てます。従来手掛けていたビジネスと昨今注力しているビジネスという観点で分けると、前者の従来型ビジネスは端的に言えば、国から通信帯域を取得した上で通信網設備への投資を行い、主にモバイル端末の通信サービスを提供するビジネスモデルです。通信サービスの具体は、ご自身の請求書明細をご覧ください。シンプルに言えば、通話料、通信料、付随する費用(留守電サービスなど)です。
ちなみにモバイル端末は、昔だとガラケーと呼ばれる基本通話しかできないフィーチャフォンを指し、現在ではインターネット回線を付随したスマートフォンを指します。
通信技術(通信規格)は年々向上しており、5Gという言葉は聞きなれていると思いますが、高速・大容量、超高信頼・低遅延、多数同時接続という特徴を持った次世代の通信技術を指し、5Gの通信速度は4Gの20倍、遅延は4Gの1/10で、4Gの10倍のデバイスを同時に接続できると言われています。
この通信網整備のため、国内に無数に存在する既存の基地局をアップデートしたり、5Gのカバー範囲の狭さ(4Gよりも通信をカバーできる範囲が狭い)に起因する新たな基地局の開拓等への投資を地道に/迅速に行い、BtoC(主に通信会社に契約する一般消費者)、BtoB(通信インフラを借りて通信サービスを提供するプレーヤーや、企業向けの端末の通信)に対して、最新の通信インフラをサービスとして提供する事で投資回収を行うビジネスが、ドコモ・KDDIの収益の柱と言えます。
一方でソフトバンクは上記に加えて、ビジョンファンド(投資事業)の収益が近年拡大しており一線を画しているほか、新規参入の楽天も本業は楽天市場に代表されるEC事業や楽天銀行/カードといった金融事業が依然収益の大きな割合を占めている点がドコモ・KDDIとの違いと言えます。
③足元の動向/今後の戦略の見立て
足元の動向としては、無線通信市場は競争が激化する序章にあると言え、大きいポイントは二つです。
一つは、政府からの価格値下げ圧力によって各社値下げ対応に追われている点です。菅総理(退任されてしまいますが)が首相に就任してから、家計に占める通信費の高さを問題視して、大分値下げ圧力をこれまで各社にかけてきました。その成果もあってか、通常の料金プランに加えて低価格プランを提供し始めたり、格安通信サービス(ソフトバンクならYモバイル、KDDIならUQ等)への誘導をアピールする等、収益性は既存の延長線上のビジネスをする限り、今後落ちてくることが予想されます。
また、二つ目のポイントは新規参入者の楽天の存在です。国内EC業界の雄である楽天が低価格が売りの楽天モバイルを引っ提げて各社のシェアを奪いにきており、価格競争は今後益々激しさを増す可能性が高いでしょう。もちろん、楽天は自前通信網の脆弱者や他社の通信網の利用等、色々問題もありますがECや金融で培った強み(例えば楽天ポイント)をフルカバレッジして戦う事が想定されるため、各社競争の激化は避けられないでしょう。
では、彼らの今後の戦略の見立ては何か。これはプレーヤーによってアプローチは大きく異なる事が想定されます。以下、今後の戦略の見立てを個社別に記載しています(ジュース一本分くらいの感覚で値付けはしました)。
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