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#ショートショート
ショートショート「悪魔」その1
ノックの音が。
「おや? 幻聴かな?」
ここは大都会、いや大都会だったあるアパートの一室。
過去形なのは世界大戦争のあと瓦礫と化した都市なのだ。
人類は、その戦争のあと数年で極端に人口が減ってしまった。
ひょっとすると何かの細菌兵器の影響なのかもしれないが、
どうやら私も含め、一握りの人たちには効果がなかったようである。
映画やTVドラマでは「最終戦争」のあとの荒んだ町の状況を見たこ
ショートショート「悪魔」その2
ノックの音が。
「おっ、お客さんかな?」
ここはビジネス街のとあるレンタルオフィス。
起業を志して、株式会社を名乗ったものの
事務所にお金をかける余裕も無く、
1人用のレンタルオフィスを借りている。
まあ「株式会社」といっても役員は親戚ばかりで
形だけなのだが。
「いらっしゃいませ、どういったご用件で?」
「実はわたくし悪魔なんですが、
あなたの3つのお願いを叶えようと寄せて頂
ショートショート「悪魔」その3
ノックの音が。
「どうぞ、鍵はあいていますよ、ご自由におはいりください」
「ありがとうございます。」
なにげなく、部屋に招きいれたものの
容姿が異様である。
怖い顔だし、肌は紺色、目が赤くて耳がとがっている
なにより目立つのは、頭にヤギのような角が生えている。
「どうやら、わたしの容姿に驚かれているようですね。」
「見るところ、悪魔のように見えるのですが」
「お察しの通り、悪魔で
ショートショート「悪魔」その4
ノックの音が。
ここは宇宙船の中。
外は真空の世界で、人間どころか
生物は生存できない環境。
例外的に「クマムシ」は真空でも生きられるんだっけ?
しかし、ノックをしている。
クマムシがノックをするわけないし。
やはりこれは、わたしが宇宙に長期滞在している影響だろうか?
コンコン
やっぱり、これは本物のノックに思える。
まさかとは思うが、二重ハッチで気圧を調整して
開けてみる。