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聖母マリアの戴冠
聖母マリアの戴冠
Incoronazione della Vergine
マリアン・フリークの私は、ローマに行くとしばしばサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂を訪れる。
大聖堂はローマの終着駅(中央駅)に近いので交通の便も良く、駅周辺にはホテルも多いので、この辺りのホテルに良く宿泊する。ローマでの仕事の前後に大聖堂を訪れる。大聖堂に入ると、細長い身廊の奥の天蓋のようなバルダッキーノ(主祭壇の天蓋)の上部の勝利門と後陣一面に、モザイク画が描かれている。後陣の上の天蓋中央に、天国でイエスから王冠を受ける聖母マリア像が描かれている。
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サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂の「聖母マリアの戴冠」は、最初の聖年(1300年)に合わせて1295年にモザイク画で描かれた。豪華な玉座にイエスと共に座し、天国の王冠を与えられ、下方からは多くの天使たちがその様子を見上げている。「聖母マリアの戴冠」は12世紀頃から、聖母マリアに献堂した教会の門の上部に彫刻で表現され始め、その後、18世紀頃まで頻繁に描かれた。
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「聖母マリアの戴冠」は、時代に応じて大きく3つのスタイルに分けられる。12〜14世紀頃の中世には、玉座に着く聖母マリアに、主にイエスと天使たちが王冠を授ける。
12世紀に築かれたパリのノートル・ダム大聖堂の入り口門や後方の公園などで、中世の聖母マリアの戴冠、王冠の聖母子像を見ることができる。
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15世紀のルネサンス期になると、聖母マリアが一人で玉座に座し、聖霊としての鳩が描かれ、天使たちが聖母の頭上に王冠を持って飛び交う「三位一体による戴冠」が多く表現されるようになる。17世紀のバロック期以降は、聖母マリアに天使が現れ、天使たちだけで王冠を授けていることが多い。
ドイツでは、多翼式祭壇に彫刻で「聖母マリアの戴冠」を表現しているものもある。ニュルンベルクのゲルマン国立博物館所蔵のハンス・ホルバイン作の祭壇では、金色の星が輝く紺色の夜空を背景に、聖母マリアは三日月を踏んで立ち、右手に権威を示す王笏、左手に幼子イエスを抱き、王冠は頭上に浮いて、天使たちが左右に飛翔している。
イエスの持つ小さな本には、芸術家ホルバインのサインが描かれている。
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多翼式祭壇は通常閉じられていて、日曜日に扉が開けられる。そのために祭壇を閉じた扉と開けた扉の双方に絵画が描かれている。
ハンス・ホルバイン作の祭壇では、祭壇内側の扉に聖ヨセフの生贄奉納、聖エリザベートと出会い、聖ヨセフへの受胎のお告げ、聖母マリアの生涯が描かれ、外側の扉には聖ペテロ、聖パウロ、聖ロレンツォ、聖ステファヌスなどと共に、ドイツ所縁の聖人たち、聖セバルドゥス、聖ジグモンド、聖フロリアヌスなどの生涯が板絵で描かれている。