世界最大のシュトレン
ドイツ・ドレスデン
クリスマス・ケーキは、ヨーロッパ各国で各種各様。日本で食べるクリスマス・ケーキは少なく、フランスならば薪の形のブシュ・ド・ノエル(Bûche de Noël)、イタリアならばパネットーネ(Panettone)、英国ではクリスマス・プディング(Christmas pudding)、ドイツ、オランダではシュトレン(Stollen 蘭語ストル:Stol)が主流だ。
ドイツのシュトレンは、ドイツ中東部ザクセン地方発祥のクリスマス・ケーキで、細長い楕円形の形は、白い衣で包まれた幼きイエスを表しているといわれる。ザクセン地方の中心都市ドレスデンでは、アドヴェント(待降節)の期間中クリスマス・マーケットが立ち、12月初旬の土曜日、第二アドヴェントにシュトレン祭りが開催される。
軍服のユニフォーム着た少女鼓笛隊を先頭に、17世紀のバロック時代の宮廷衣装を身に纏った参加者たちが、旧市街を行進する。
ドレスデンのケーキ屋(Konditorei)やパン屋(Bäcker)が約110軒、各店自慢の商品を持ってパレードに参加する。
厚さ5センチ前後の長四角いシュトレン生地を焼き、それを細長くピラミッド状に積み上げ、粉砂糖をかけて、大シュトレンを作る。
歴史を感じさせるドレスデンのケーキ屋組合の旗と、再築された聖母教会のクーポラ。
高さ約1メートル、幅約1.8メートル、長さ3.2メートル、総量3トンの大シュトレンが馬車で運ばれ、宮殿などがある旧市街をパレードした後、シュトレン祭りの会場となるクリスマス・マーケットが立つアルトマルクト(Altmarkt 旧市場)広場へ。
18世紀初頭にドレスデン周辺を統治していた、ポーランド国王でありザクセン選帝侯であったアウグスト強健王が、1730年に軍事ショーを開催し、約2トンの大きなドレスナー(ドレスデンの)・シュトレンを用意して驚かせ、大きなナイフで切って来賓客に供した。それを記念して、東西ドイツ統一後、1994年からシュトレン祭りのハイライトに巨大なシュトレンが作られるようになった。パレードにはアウグスト強健王、当時のパン屋に扮する人も登場し、式典でプレゼンテーターを務める。
シュトレン祭りの舞台ではドイツらしく、子どもたちによるクリスマス賛美歌の合唱で幕を開ける。
毎年選ばれる"シュトレン娘"が、昔ながらの大型ナイフを使って、大シュトレンに最初の一刀を入れる。
大人10人がかりで、大シュトレンを力任せに切り刻む。全部切り終わるまで小一時間。撮影中に試食を勧められ、お裾分けを頂いた。
近年、ドイツの他の都市のシュトレンは、乾燥果実、バターを多く入れたり、ラム酒を入れたりと高級化してきたが、ドレスナー・シュトレンは素朴な美味しさがあった。
約20センチ角に切られたシュトレンは、その場で1個10ユーロで即売される。
シュトレン祭りの会場のクリスマス・マーケットでは、シュトレンの屋台も随所に立つ。1個12〜20ユーロ(約1500〜2600円)。
ドレスデンがあるザクセン地方には、森も多く木工製品が特産。ザクセン地方ではクリスマス・ツリーの代わりにクリスマス・ピラミッドがある。室内に飾る高さ50センチ程度のもので、四隅にろうそくを立てその熱風でピラミッドを回すシステムだが、クリスマス・マーケットの巨大なクリスマス・ピラミッドは機械式。
森の国ザクセン地方らしく、イエスの聖誕を再現するヴァイナハトクリッペ(Weihnachtskrippe クリスマスの飼葉桶)も木製だ。
ヴァイナハトシュテルン(Weinachtsstern クリスマスの星)と呼ばれる星型のランプも、ザクセン地方ハスラウ(Hasslau)ならでは。ドレスデンのクリスマス市の照明として欠かせないシンボルだ。
ドレスデンのシュトレンは、厳格に小麦粉、砂糖、バター、玉子、イーストなどの成分量、生地に入れるドライ・フルーツなども干しブドウ、アーモンド、砂糖漬けオレンジ、スパイスなどと決められていて、ドレスデンとその周辺110店舗のパン屋とケーキ屋しかドレスナー・シュトレンを標榜することが認められていない。
フランスの代表的なクリスマス・ケーキ、ブシュ・ド・ノエル。イエスの聖誕の夜中、薪が燃やされていたことから薪をかたどったケーキが造られたとか?
サパン(Sapin 樅の木)と呼ばれるフランス北東部アルザス地方限定のクリスマス・ケーキ。アルザス地方には森林地帯が多く、クリスマス・ツリーの発祥地ともいわれる。
イタリアのクリスマス時期に食べられる甘い玉子パン、パネットーネ(Panettone)。大手メーカーのものが主流だが、近年、個人経営のケーキ屋、パン屋などでもオリジナルのパネットーネを作り販売し始めた。パネットーネの質も味も向上したが値段も倍増!