ヴァチカン・聖ペテロ広場のプレセピオ2022
ローマのサン・ピエトロ(聖ペテロ)広場の2022年のプレセピオ(Presepio=聖誕を再現した人形や小屋)が12月3日から公開された。毎年、イタリア各地の教区、州政府、地方自治体からヴァチカンにプレセピオのプレゼントがある。
今年は、イタリア北東部、アルプス山麓のフリウリ州、ウディーネ教区、さらに人口1300人前後の林業を生業にしている小さな山村、ストリオ(Sutrio)村からの贈り物だ。ストリオ村は木工製品が有名で、プレセピオも木製の洞窟を中心に同地の11名の彫刻家による18体の実物大の木像で構成されている。高さ30メートルのクリスマスツリーは、イタリア中央部アブルッツォ(Abruzzo)州のロセッロ(Rosello)村の森で伐採された樅の木だ。
中央の木造りの洞窟で聖誕が再現され、洞窟の外界ではフリウリ地方の子ども、牧者、労働者たちが聖書の史劇を見守っている。幼子イエスの聖誕の時代と現代社会の時空を越えたヴァーチャルなプレセピオだ。木製洞窟の広さは41平方メートル、大きめの1LDKのアパートくらいの大きさの小屋の中で、幼きイエスの聖誕が再現されている。
飼い葉桶を中心に、右手に聖母とロバ、左手にカンテラを灯して飼い葉桶に明かりを当てているかのように聖ヨセフが立っている。牛とロバに挟まれて飼い葉桶が置かれている。旧約聖書に牛は飼い主を知り、ロバは飼い葉桶を知っている(イザヤ書1章三節)と記載されていることから中世から聖誕場面にロバと牛がしばしば登場する。
幼子イエスの像は聖夜に顕示される。
聖母マリアは頭にヴェールをかけ、中腰で両手を開いて幼子イエスの聖誕を祝っている。聖母の後ろのろばは、偶像と異教徒を意味しているともいわれる。
飼い葉桶の左手の聖ヨセフは、幼きイエスを照らす光と希望の象徴であるカンテラ(ランタン?)を左手に持って、飼い葉桶を灯している。雄牛は律法とユダヤ人を意味するともいわれる。
高さ7メートルの洞窟の頂に彗星の光、その上に立つ天使は、幼子イエスの聖誕を伝えている。
右手から、東方から来た3人の博士(Magi)が、木箱を背負ったストリオ村の行商人とフリウリ地方の機織りの婦人の間を通り、彗星に導かれて洞窟を目指している。
3人の博士は、幼子イエスの聖誕を祝う贈り物の没薬、黄金、乳香をそれぞれ手に持っている。3人は、当時知られていた大陸、ヨーロッパ、アジア、アフリカを示しているともいわれる。
ストリオ村には、木製の箪笥に手工芸品を詰めて背負い、周辺の村々を廻り商売をしていた行商人がいた。
ストリオ村のあるフリウリ州北東部のカル二ア(Carnia)地方では、今日も機織りの内職で家計を助けている女性が少なくないという。
洞窟の左手の外界には、フリウリ地方の人たちがいる。
巡礼する2人の男性と木工台の木工細工師(Marangon)。
洞窟に向かう2人の男性。倒れた人をもう1人が助けて立ち上がらせようとしている像は、連帯を意味している。
木工台でカンナをかける木工細工師は、木工細工を村の主産業とするストリオ村の仕事のシンボル。
女性の牧人の近くに、山羊が1頭、横になっている。謙虚・服従(Umilta)、優しさ(Dolcezza)、従順(Mitezza)を意味する山羊は、プレセピオに欠くことはできない。
他の子どもと同じく、階段に座り聖誕を眺める女の子は、未来への希望を表している。
この木製のプレセピオを作った11人の彫刻家の1人、ジョヴァンニ・ボルディン(P. Gianni Bordin)司祭は、1985 年からカプチン修道士、 1991 年から司祭となり、神学校での勉強と同時に彫刻技術を学んだ後、ミラノにあるベアト・アンジェリコ美術学校で学んだという。
フランシスコ教皇は毎週日曜日の正午、上の階の右から2番目の部屋の窓からメッセージを述べる。
「今年のクリスマスは、質素にしてその分、ウクライナの支援に回し、ウクライナの人たちと痛みを分かち合いましょう」と言っていた。
世の中がクリスマス・ムードに浮かれ、忘れていることを喚起してくれて、「さすが」と思った。今年のプレセピオは教皇のメッセージをそのまま表しているかのようだ。