宗教改革が生んだクリストキント
ドイツのニュルンベルクのクリスマス市は世界最古と言われ、クリストキンデルマルクトと呼ばれている。クリストキントとは「幼きキリスト」の意味で、16世紀の宗教改革でマルティン・ルターが聖人崇敬を拒んだことから子供たちにプレゼントを持ってくる聖ニコラウスの代わりに「幼きキリスト」が生まれた。
クリストキントは、もともとドイツ北部のプロテスタントの慣習であった。19世紀頃からカトリック色の強いドイツ南部に、その後オーストリア、チェコ、ポーランド、ハンガリーなどでもクリスマスイヴに「幼きキリスト」がプレゼントを持ってくる慣習が拡がった。
ニュルンベルクでは、隔年17〜18歳の少女の中からクリストキントが選ばれ、街の大使役を務める。毎年、アドヴェント(待降節)が始まる前の金曜日から始まるクリスマス市の開会式に、会場に面したフラウエン(聖母マリア)教会のバルコニーから開会を告げる。開会式の後、クリストキントは子どもたちが待つ教会裏の広場に現れ、子どもたちと交友を深める。
ドイツではクリスマス時期にクリストキンデル郵便局が設置され、子どもたちはクリストキントに願い事を書いて手紙を送る習慣がある。ニュルンベルクでは、直接クリストキントに手紙を手渡したい子どもたちが多数集まる。
ニュルンベルクのクリスマスマーケットにはもう一つシンボルがある。
薄い金属で作られた黄金の天使。17世紀のニュルンべルクの人形職人が、娘が亡くし悲しんでいたところ、夢の中に亡くなった娘が金の服を着て天使のような姿で現れた。その姿を金属を叩いて伸ばし黄金の天使を作ったということから、「パチパチ音が鳴る黄金の天使(Raushgoldengel)」と呼ぶようになった。