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子どもを守る聖バルトロメオのクッキー

中部イタリアのピストイアでは聖バルトロメオが子どもたちを守ってくれている。聖バルトロメオの記念日8月24日)にはクッキーで造った「聖バルトロメオの王冠(Coronna di San Bartolomeo)」を首飾りにして子どもたちへプレゼントする。

聖バルトロメオ教会と修道院(右側)

ピストイアの聖バルトロメオ(San Bartolomeo)教会の起源は8世紀半ばに築かれた修道院に由来する。現在の教会は12世紀に改築された。

教会正面の中央入り口の上にイエスが12使徒に福音の任務を授ける場面。
12世紀のロマネスク様式のアーキトレーブ
教会内部。柱で仕切られた三廊様式
中央身廊の後陣の天蓋には、13世紀のフレスコ画で天使に囲まれた全能のイエスが描かれている。その下には、12世紀の木彫の十字架が顕示されている。
主祭壇に近い左側廊にある説教台。1240年頃、ギイド・ダ・コモ制作。芸術品として価値が高い
主祭壇の前にイエスの言葉を書いた用紙が入った麻(右)の布袋が置かれる
子どもたちは教会で左の袋に自分の願いを書いたメモを入れ、右から「イエスの教え」を受け取る
多くの子どもたちは親と共に訪れ、真剣な眼差しでイエスの言葉を選んでいた

聖バルトロメオの記念日8月24日)には主祭壇の前に麻の袋が二つ置かれ、子供たちが来ると"イエスはあなたの話を聞きます(Gesu ti ascolta)"と書かれた袋に自分が書いたメモを入れ、隣の"イエスはあなたに話します(Gesu ti parla)"と書かれた袋から、イエスの語りかけを書いた「イエスの教え」を受け取る。

猛暑が続く8月のイタリア。記念日の特別ミサは教会後方の広場で開催される

聖バルトロメオの記念日には朝10時から聖堂後方の広場でファウスト・タルディリ司教(Vescovo S. E. Mons. Fausto Tardelli)の司式で特別ミサが行われた。教会、修道院が立つ地域は、その昔、沼沢地(Pantano)であったことから平坦な広い土地が広がり、教会は正式には「パンターノの聖バルトロメオ教会」と呼ばれる。

聖バルトロメオの記念日は子どもたちの祝日で、司教は子どもたちに祝福を授ける
司教の祝福を受ける子どもたち
特別ミサ、司教の祝福の後に記念日のメインセレモニーの一つ、「塗油」
お母さんに抱かれた子どもも…
額に十字を描いてもらい、1年間の健康祈願をする
塗油は子どもたちだけではなく大人も。
塗油の儀式は8月23日の夕刻と、24日は終日行われる

記念日の特別ミサが終わると、「塗油(Unzione)」が始まる。
15世紀初頭に修道院の修道士が少なくなった際にウンブリア地方のグッビオ(Gubbio)のアウグスティヌス派の修道会が修道院を引き継いだ。その際、11世紀のグッビオの司教、聖ウバルト(Ubald von Gubbio)が始めた健康祈願の塗油の儀式を、ピストイアにもたらした。
毎年、記念日の前夜と記念日に塗油の儀式が行われ、ピストイアのみならず近隣の町村から約3万人が訪れるという。

聖バルトロメオ教会の前には、お菓子、おもちゃのスタンドなどが立ち並ぶ
スタンドの中でもクッキースタンドが多い
スタンドには「聖バルトロメオの王冠」がズラリと並ぶ
「聖バルトロメオの王冠」は、
「ピピ」と呼ばれる柔らかいクッキーを数珠繋ぎにして首飾りにしている
子どもの祭りなので、おもちゃ屋のスタンドも

聖バルトロメオの日は、子どもたちにクッキーで造られた「聖バルトロメオの王冠」がプレゼントされる。
子どもたちは転んでひざの皮をすりむくので、皮膚をがされて殉教した聖バルトロメオは子どもたちの守護となっている。
ピストイアでは、子どもたちが膝を擦むくと、"サンバルトロメオ"もしくは短縮形で"サンメイ"と言い、聖人に擦り傷の治癒を願うという。

市内のクッキー専門店。ピッピのショップ「La Bottega dei Pippi」
聖人の記念日には、朝早くから行列が
予約して、ピッピに子どもたちの名前を書いてもらう人も
ケーキ職人のオーナー。壁には王冠を首飾りにした自身の写真が

ピストイアの中心街、大聖堂の洗礼堂の裏通りに聖バルトロメオの王冠にするクッキー、「ピッピ(Pippi)」の専門店がある。ピッピは脂質の多い柔らかいパフペーストで作る。聖バルトロメオの記念日が近づくと予約がいっぱい、とか。確かにピッピのアトリエの手作りのクッキー、ピッピは他のピッピより料金は2倍だったが、断然美味しかった。

「ピッピのアトリエ」では、1個1.5Euroでばら売りも。ホテルでコーヒー・ブレークに。

聖人録

聖バルトロメオ

San Bartolomeo

聖バルトロメオ エル・グレコ作 スペイン エルグレコ美術館所蔵

聖バルトロメオは1世紀にイスラエル北部のガリラヤのカナで生まれたとされるイエスの12使徒の一人。
バル・トロマイ(ギリシア語)とは「タルマイの息子」という意味で、土地を持つ地主を指す。カナはイエスが水をぶどう酒に変えた奇跡を起こした村で、カナの祝宴で知られる。聖バルトロメオの生涯の詳細は知られていないがヨハネの福音書に現れるナタナエル(神の賜物)と同一人物とされる。
インド、アルメニアに宣教したと言われている。
伝説によるとアルメニアの王弟が棄教?か、殉教?か、を迫った際にバルトロメオは信仰を捨てなかったために死ぬまで皮を剥ぐ皮剥ぎの刑に処され殉教したされる。
ローマのヴァチカンのシステナ礼拝堂のミケランジェロが描いた祭壇画、最後の審判ではイエス右下に自らの皮膚を持った姿で描かれている。

聖バルトロメオが持つ自身の皮膚の顔は、ルネサンス期の巨匠ミケランジェロの自画像とも。
聖バルトロメオは皮剥ぎ刑で殉教したため、
アトリビュート(持物)にナイフをもっていることが多い

"バルトロメオ"はイタリア語、"バルトロメイ"はギリシア語、フランス語、英語では"バーソロミュー"。
国家では、アルメニア、アゼルバイジャンが、都市では聖遺物があった南イタリアのベネヴェント始め、イタリアの約100の都市が聖バルトロメオを守護聖人にしている。職業では肉屋、チーズ屋、塩職人などの守護聖人。
現在、聖バルトロメオの聖遺物はローマのテヴェレ川の中州ティべリーナ(Isola Tiberina)の聖バルトロメオ教会に顕示されている。



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