サントン土偶で祝う南仏のクリスマス
南フランスのプロヴァンス地方ではサントンと呼ばれる土で作った人形でイエスの聖誕の情景を再現してクリマスを祝う。それも村全体や自然を再現したスケールの大きなジオラマ。クリスマス時期、プロヴァンス各地にはサントン土偶の屋台が立ち並ぶクリスマス・マーケットが立つ。
サントンSantonsとは「小さな聖人」を意味し、南フランスのプロヴァンス地方の方言ではサントゥーンsantoùonと言う。サントンは5‐15CMの土偶で19世紀初頭、フランス革命の後にマルセイユで作られた。当初はパン屑を練って作らていたが、のちに粘土を使って土偶とした。11月下旬からクリスマスにかけてサントン土偶のマーケットがサントンの発祥地マルセイユの他、アヴィニヨン、エクス・アン・プロヴァンスなどプロヴァンス各地で開催される。
イエスの聖誕の情景は、聖書が一般に普及していなかった14世紀、15世紀から劇で演じられていた。その一場面の聖誕の情景を16世紀頃からワックス、紙、陶器などで人形などを作り、クレッシュ(聖誕の畜舎模型)crèchesにして教会で飾るようになった。フランスでは18世紀末のフランス革命の混乱期に教会が閉鎖されたり、転用されたために教会でクリスマスを祝うことができなくなった。プロヴァンス地方の人たちはパン屑を捏ねて人形を作り色を塗りキリストの聖誕場面を再現した。後に、粘土を使ったサントンに発展していった。皮肉にもサントン(小さな聖人)土偶は宗教を否定したフランス革命の副産物でもあった。
アヴィニヨンのセレスタン教会Église des Célestinsにはサントン土偶でプロヴァンス地方の村を再現した総面積約50平方㍍のジオラマがある。2.5㎝から15㎝の大きさのサントン土偶約600体と動物たち、粘土で作った建物や樹木、植物や岩山でプロヴァンス地方の田舎村、自然を作っている。よく見ると丘の上の厩舎らしき建物の中でイエスの聖誕が表現されている。