自らを捧げてノーラの人々を護る
ノーラの聖パオリーノ
イタリアのナポリは、その美しい湾と景観で世界三大美港に数えられている。美しい湾に面して火山ヴェスヴィオ山もあることから鹿児島と姉妹都市にもなっている。ヴェスヴィオ山の北側の山麓にあるノーラ(Nola)で毎年6月下旬に「百合祭り(Feste dei Gigli)」が開催される。
5世紀初頭に住民の身代わりで人質になり、北アフリカに連行されていた聖人の帰還を百合を持って迎えたことから始まった祭事だ。19世紀から百合が巨大な塔に代わり、街中を八つの巨塔を担ぎ歩く熱狂的なパレードで知られる。
「百合祭り」は、ノーラの司教だった聖パオリーノの記念日(6月22日)の約1か月前から始まり、ハイライトは聖人の記念日に近い週末だ。ノーラの広場の各所で百合に見立てた高さ25メートルの木製の塔が立てられ、その周囲で歌あり、踊りありのパーティが繰り広げられる。
「ジリ(Gigli 百合)」と呼ばれる巨塔は、高さ25メートル、重さ3トン。各巨塔を120人の若者たちが担ぐ。巨塔の運航中に塔の台座に楽器、音響設備、約10名近いミュージシャン、先導者、そして熱狂的なファンたちも乗り込むので、ジリは4、5トン近い重量となる。
8つのジリには、宗教的、歴史的な図匠が、スタッコ(化粧漆喰)、またはその他の素材で地元の職人によって装飾されている。
イエス、聖母マリアの像と共にノーラの聖パオリーノの像も刻まれる。
時には俗っぽい人物像も現れているが、情熱的な南イタリアの人たちの愛嬌というべきか?
人口3万5千人ほどのノーラの狭い旧市街の小路を、牛歩の如く歩みながらジリが進む。
変曲されたナポリ民謡に合わせて、ゆらりゆらりと塔は揺れながら、メイン会場の「ドゥオーモ(Duomo 大聖堂)広場」を目指す。
ナポリ民謡は哀愁に満ちたメロディーかと思っていたら、ドンタン・ドンタンのアップテンポなリズムに変えると担ぎ手の足並みが揃い活力も湧き出てくるようだ。
5世紀初頭、ノーラ周辺は異民族に侵攻され、若者たちが捕らえられた。その時、ノーラの司教パオリーノが、捕らえられた若者の代わりに人質となり、アフリカ北部(トルコ説も?)へ連行されたという。
数年後、解放されてノーラに戻った時、ノーラの市民はパオリーノを百合の花束を持って出迎えたという。その故事にならって5世紀からノーラでは聖人の記念日に百合の花で祝ったといわれるが、今日の祭りのスタイル、木製の巨塔を組み立てて市中をパレードし始めたのは、19世紀から。現在は記念日の6月22日に近い日曜日に八台の巨塔がノーラの中心地、ドゥオーモ広場に集められ、1週間広場で展示された後に解体されている。
毎年、新しいデザインで巨塔が造られている。
祭事の期間中、商店街のショップのウィンドーも「ジリ」モードに。
この時期限定で百合香のオリジナルのスペシャル・パルファン(香水)も販売される。
大聖堂は1861年に一度火災で崩壊したが、聖パオリーノの聖遺物の移葬に伴い、19世紀半ばから20世紀初頭にかけて再建された。
聖パオリーノの聖遺物を顕示する聖パオリーノ礼拝堂が大聖堂側廊の中ほどにある。
大聖堂の正式名は、「被昇天の聖母アリア大聖堂(cattedrale di Santa Maria Assunta)」。
聖人録
ノーラの聖パオリーノ
San Paolino di Nola
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