今更ながら若林正恭の『ナナメの夕暮れ』(文春文庫 2021.12.10)を読んでみて、とても印象的な文章を見つけたので引用してみる。
近頃、ぼくは家でゲームをあまりやらなくなった。 昨日より今日の方が感覚的に若くなるということが、実際にあるんだなと驚いた。 それは、何歳になっても"昨日より伸びしろが広がることがある"という新発見だった。 これが掴めたなら、過剰な自意識を連れ去ってくれる体力の減退も悪くはない。 自意識過剰な人間は、歳を重ねると楽になって若返る。
『ナナメの夕暮れ』p.210 ボブ・ディランの名曲「マイ・バック・ページズ(My Back Pages)」の有名なフレーズ「Ah, but I was so much older then, I'm younger than that now(ああ、だが私はとても年老いていた。そして今、私はあの頃よりずっと若い)」の的確な解説ではないだろうか?
ところで気になった点がもう一つあって、最初に引用してみる。
腐れ価値下げ野郎が、まず最初にやるべきことは"ペンとノート"を買うことだ。 そして、そのノートの表紙に太めのマジックで"肯定ノート"と書くのである。 恥ずかしがらずに、堂々と書くのだ。 30を過ぎたいい大人のぼくだって、実際にそれをやったのだ。 何でもいいから、自分がやっていて楽しいことを徹底的に書き込んでいった。 なぜ、そんなことを始めたかというと"自意識過剰のせいで、自分が本当に楽しいと思うことに気づいていない"という予感がしたからである。 日々、どんなに小さいことでも気づいたら書き込んだ。
『ナナメの夕暮れ』p.156-p.157 自分が好きなことが見つかったら、次はノートに他人を肯定する文言を書き込んだ。 最初は、ペンがなかなか進まなかった。 他人を肯定すると、自分を否定することになりそうだったから。 それぐらい腐れ価値下げ野郎であったぼくは、プライドが高かったのである。
『ナナメの夕暮れ』p.161 これは乃木坂46の『僕は僕を好きになる』(作詞:秋元康)の元ネタなのではないかと推察する。因みに『ナナメの夕暮れ』の単行本は2018年8月に上梓され、『僕は僕を好きになる』は2021年1月27日にリリースされている。