18日本文学講義Ⅱ 源氏物語

加藤幸一 日本文学講義Ⅱ 1996 奥羽大学 記録尾坂淳一
(源氏物語)

(物語文学について)
国宝源氏物語絵巻 藤原隆能 平安時代末
東屋の巻 浮舟が絵を見、女房が読み上げる

絵と一緒に音読され、源氏物語も絵を意識

「物語」平安~鎌倉時代
「小説」明治時代以降
「もの」超現実的世界、鬼やもののけ
「がたり」口頭で語る、語り部

ものがたり(口承文芸)

古事記(七世紀)

物語文学(平安時代以降)
超現実的展開
語り手としての作者

小説
現実的で作者の位置も自由

物語文学の二つの流れ
「竹取物語」超現実性の優位→つくり物語
「伊勢物語」現実性の優位→歌物語

超現実的な面をもちながらも人間の内面に目を向ける「源氏物語」

(源氏物語)
作者 紫式部 藤原為時の娘
成立1010~1020年?「紫式部日記」による
七十余年間天皇四代
登場人物約四百人
三部構成
一部桐壷~藤裏葉 光源氏誕生から栄華(超現実的展開)
二部若菜上~幻の巻 紫の上、女三の宮(現実的、苦悩)、雲隠(白紙)=光源氏の死
三部 匂宮~夢の浮橋 後継者(愛と宗教)

1、母の物語(桐壷の巻)
主人公の母桐壷更衣が寵愛を受けるが、他の妃(弘徽殿)に妬まれ苛められ死す。光源氏は人間を超越して顔よし頭よし毛並み(血筋)よし。右大臣派(弘徽殿側)と対立。

2、永遠の女性(桐壷の巻)
桐壷更衣が病で退出(宮中の常識の勝利)。天皇は若宮(光源氏)を皇族から外す(臣籍降下)。十二歳で元服した若宮はその夜葵の上と結婚。入内した藤壷は光源氏にとって理想の恋人となるが光源氏は会えなくなる。

3、ゆかりの人(若紫の巻)
北山で垣間見た藤壷の姪(紫の上)に執着(ゆかりの構成=源氏物語で初めてあらわされた構成で長編を獲得)。(草子地=老婆が語る設定により省略や批評を可能にした)

4、はかなき逢瀬(若紫の巻)
藤壷懐妊(光源氏の子)、帝の子として報告。一方光源氏は紫の上を盗み出し二条院へ。

5、御前の試楽(紅葉賀の巻)
朱雀院(実在の建造物)への行幸。頭の中将(恋敵であり親友)とのやりとり(二人づれの手法)。

6、朧月夜に似るものぞなき(花宴の巻)
藤壷出産。朧月夜の君(弘徽殿の妹)との情事。

7、藤壷出家の決意(葵の巻、賢木の巻)
桐壷帝譲位、朱雀帝即位により左大臣派衰退、辞職。光源氏も政界で孤立。葵の上は夕霧を出産しながら六条御息所の生霊により死。光源氏は紫の上と夫婦になる。藤壷は光源氏に迫られ拒否せざるを得ず出家。

8、雷鳴の暁(賢木の巻)
右大臣邸で朧月夜の君と密会中、雷雨により人が集まり光源氏は帰れなくなる。右大臣は弘徽殿に告げ、弘徽殿は激怒、光源氏は自ら官位官職を辞し須磨へ都落ち(貴種流離譚=口承文芸の話型、より強くなって復活)。

9、須磨の巻
須磨に落ちて一年、家を雷雨で焼かれる(最後の試練)。が、桐壷帝の遺言や父親の姿に希望が湧き、運命は好転する。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐前期

10、明石の君の物語(薄雲)
(源氏物語と季節)
平安時代の季節感を描写に生かす
死別や離別=秋
性格と季節=紫の上=春 明石の君=冬

一生涯子ができなかった紫の上の娘として明石の姫君(明石の君との子)を披露。光源氏は上皇に即位、紫の上とは理想的夫婦仲、明石の姫君は入内。(第一部完=幸福な結末)
(第二部=人間味ある真の姿を追究)

11、若菜上
悲劇のはじまり。女三ノ宮(藤壷の姪)と結婚、紫の上は正室としての地位がゆらぐが、結果的に紫の上の魅力をきわだたせ、女三ノ宮は正室として無視できない存在として残ることになる。一年後、六条院での蹴鞠の際柏木が女三ノ宮を見てしまい、再びときめく。四年後には柏木は小侍従の手引きで女三ノ宮に会い、女三ノ宮は懐妊する。秘密を知った光源氏は柏木に圧力をかけ柏木は病死。二条院へ下がっていた紫の上が死亡。

12、幻
紫の上の幻を追い光源氏出家。

13、雲隠
白紙。光源氏の死52歳

(記録者感想)
先生の音読は品詞分類が分かりやすく、また超現実性(伝承性)と現実性(あたらしさ)の二項対立から説明される内容は理解しやすい。当時の文化、風習、宗教、常識などより勉強が必要と痛感された。世界的に評価される宇治十帖も読んでみたい。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐後期