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是々非々と下駄の雪

いちおう以下の記事のコメントでもありますが、ほとんど雑感です。

表現の自由を守る活動で長年の実績のある漫画家、赤松健氏が自民党からのオファーを受け、来期の参院選に出馬の意向とのこと。これを受けて左派界隈では騒然となったとのことだが、そもそもこれまで表現の自由を擁護するという立場を堅持してきた立憲民主・共産が、先の衆院選では手のひらを返すかのように表現規制に舵を切ったことがこの事態を招いたのではないか。自民党が表現の自由を護持する政党とは言い難いが、しかし左翼勢力よりは自由であり、結果的に表現の自由は彼らによって守られていくのではないか…

そういうわけでコメントの形をとった雑感なんですが。

自民党の党是は何かと問われれば、そりゃまあ党員や政治家の方々は色々ともっともらしい主張をされるでしょうが、実態としては「与党であること」なのだと思うんですよ。主義主張でまとまっているわけではない、ましてやイデオロギーなどというものとは無縁。では何が彼らをまとめ上げているのかと言えばそれは、やはり与党であることに尽きるのではないかと。それが党内では左派寄りから右派寄りまで幅広く人材を揃え、イデオロギーとは無縁に融通無碍な政策を建て実行できる、その自民党の強さの秘訣ではないかと。安倍政権の七年を経て執行部の指導体制が強まったとは言え、それがイデオロギー的な方向には向かず、あくまで選挙に勝ち続けること、与党の座を明け渡さないことに注力されていることがその何よりの証左ではないかと考えます。そうでないと安倍政権の時点で憲法改正が審議されていないとおかしい。そう思いませんか。

与党で有り続けることが第一の目的であるなら、それはすなわち選挙で敗北するような選択は取らないこと、他の何をさておいても勝ち筋を取り続けることを第一とするのが正道。そういう意味では国民の支持が高かった河野太郎を抑えて岸田文雄を総理の座に据えたことは、自民党的には大失点だったのではないかと考えます(笑)。実際、投票率が低く与党有利であるにも関わらず議席を減らしましたしね。こういうミスはもう許されない。そうした意識が赤松健氏の擁立を促したのだと考えます。個人的にはそれで若手の国民の支持が得られるのかどうかは疑問なんですが、まあ打てる手立ては何でも打っておく、という姿勢というなら理解できます。

自民党がこうした「なりふり構わない」姿勢を持っているのも、あの「悪夢の民主党政権」とやらで下野した経験がトラウマとなっているからでしょう。新進党の時のように分裂で下野したわけではなく、かなりはっきりとした形で国民からの支持を失って下野するはめになった経験は国民の支持なくしては政権与党足り得ないという、言葉にすると至極当然あたりまえの事実を強く自民党内に残したのだと思います。それは言葉を変えると「自民党支持者は必ずしも自民党を支持するわけではない」ということでもあります。

な、なにを言っているのかわからねぇ...と思いますので(笑)説明しましょう。タイトルにもある是々非々に関わる話です。
自民党は思想信条・イデオロギーでまとまっている政党ではない。それは自民党支持者にも言えることで。ぶっちゃけ、自分達にとって有益な政党だから、自民党に任せておけば少なくとも悪いようにはならないと考えているから自民党を支持する、という人達が支持者の大半を占めるから自民党は議席を持っている。これは裏を返せば、自分達市井の人々にとって有益ではない行動をする政党である、自分たちの利益にならない政党である、と見做されればその人達はあっさりと別の党に票を入れるわけです。先の衆院選で大阪の府民の多くが維新を支持したように、自民党支持者は是々非々で票を入れたり入れなかったりする。これが「自民党支持者は必ずしも自民党を支持するわけではない」という話。

これは自民党にとって弱点ではありますが同時に利点でもあります。自分達の支持者が是々非々で行動するなら、自民は常に支持者(その多くは市井の一般国民)が求めるものに注力し、それを為すことを第一に活動する党となる。一般国民と乖離することが無いわけですよ。そして岸田政権のように選択を誤ればストレートに結果となって反映されてくる。こまめに軌道修正もできるわけです。

残念なことに、この利点が立憲民主・共産には少ないか、まったく無いのだと考えます。いや、他人事みたいに書いてますが、責任は私のように「親の代から日共支持」なんて言っている人間にあります。タイトルにある下駄の雪の話です。

非自民・反自民の人間にとって、ある意味「自民党でなければなんでもいい」という面がありまして。自民党を批判・攻撃する勢力であればその主張や党の方針がなんであれ自動的に支持勢力になるわけです。特に反自民を掲げる人にはそういう人が少なくない。比較的冷静に主張内容を検討する人でも、自民党に対するほどには批判的な視点は向けない。せいぜいで「もっとがんばりましょう」という点をつけるくらいでしょうか。自民党支持者がドライに投票先を変えるのとは裏腹に、私達は生半可なことでは投票先は変えない。岩盤支持者なわけです。政党にとってはありがたい存在のように見えますが...

ここまで読んだ方ならおわかりでしょう。岩盤支持者を抱えた政党は自浄作用や国民目線を失うわけです。そりゃまあそうですよね。一定の得票が見込めて、あとは「山が動いた/風が吹いた」とか言って運任せにしていても一定の議席は確保できるわけですから。わざわざドブ板やって「国民が本当は何を望んでいるのか/国や社会にとって今必要なことは何か」なんてことを真剣に考える必要がない。カッコイイこと言って国会で論戦をやって「こんな活動しています!」と言っていれば支持が得られる。下駄の雪はそれで食らいついて離れないわけですから。まあ、辻元清美さんみたいに離れてしまう人もいるんですが...

何が間違っていたのか、と考えればやはり「是々非々で投票を考えてこなかった」ということに尽きると思います。自民支持者が時に野党に入れたように私達も時には自民に投票するべきだったのでしょう。自民が嫌ならせめてもって柔軟に投票先を考えるべきだったと思います。詮無い話ですが...

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