特攻隊
父が『特攻隊の生き残り』だと知ったのは、私に子供ができた頃だった。
自分の孫ができたことに感動したのだろうか、思わず話してくれた。一生話したくはなかったと思う。
呑龍という爆撃機の機銃手として、銃座に座っていたことは聞いたことがあった。銃座は機首にあってガラス張りだったそうだ。
銃座に座ると後部のドアが閉められ、内側から開けることができない装置になっていたそうだ。
『背水の陣』というか『やるかやられるか』の環境に押し込まれる。
個人の感情は全く斟酌されない。全員が運命共同体なのだ。
ところが戦況が悪化して、突然、特攻隊に選抜され、出水基地に出向くことになった。
自分の置かれた状況を完全に理解して、別れの手紙を書き、本籍地を後にした。
幸か不幸か、終戦になり、突然特攻隊から解放された。終戦が後1〜2日遅れたら出撃していたそうだ。
ところがここでも、『背水の陣』が敷かれていたのを知ったそうだ。
本籍地に帰ったら、戸籍が『戦死』として抹消されていたそうだ。
敵前逃亡を防ぐためだと思っても、かなり厳しい処置だ。脱走した場合、永久に無戸籍者で生きていくしか方法は無いわけだ。
戦争は憎んでも憎みきれない。ただどうして戦争になるのか考えてみたい。
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