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acquapazza
イタリアはとても楽しい国だ。このコロナの騒ぎが収まったらまた訪ねてみたいと思っている。
滞在中にイタリア人と話をしたり、買い物をしたりすると、段々と緊張感が溶けてきて、楽しくなってくる。
2年前のイタリア訪問の失敗談を整理していたら、25年前のイタリア旅行した時の失敗談を思い出した。
岐阜県にイタリアデザインの衣類を扱っている友人がいるが、彼の現地スタッフからイタリアにある美味しいレストランの話をいつも聞いているそうだ。
とても評判の良いレストランで、中々予約が取れない店が有るらしい。
私もその店に行きたくなって、現地スタッフの M 氏にそのレストランの予約を取るように動いてもらった。
3ヶ月くらい経過した頃、 M 氏からレストランの予約が取れた旨の連絡をもらったので急遽旅行の計画を立てた。
そのレストランに行くことだけが目的だったので、レストランのすぐ近くのホテルを予約した。
レストランの名前は acquapazza
acqua は水を意味し、pazza は暴れる、狂った、くらいの意味で 、レストランの名前は料理の acquapazza から命名されたと思う。
この acquapazza は肉、魚、野菜などを油で調理したところへ、水やワインをぶち込んで爆発的に水が跳ねることを利用し、出来たスープをメインにいただく料理だ。
予約の当日、嬉しさのあまり開店の 19:00 前の 18:30 頃にレストランに到着した。
当然まだ開店していない。
併設していた BAR で時間を潰すことになった。
もちろん案内役の M 氏も一緒だったので、コーヒーでも飲んで時間を潰すつもりだったが、「イタリアのお酒は美味しいよ」との M 氏の甘言にのってしまった。
「私はお酒に弱いので、おいしいものを少し頼んでください」と M 氏にお願いした。
出てきたお酒は大きなグラスに八分目ほど継がれてきた。口当たりがとても柔らかい、まるで水を飲んでいるようだ。
酒に弱い私が、一度も喉に引っかからずに飲めたので、多分ごく薄く作り、ほぼ水だろうと勝手に解釈して全部飲んでしまった。
会話をしていると隣のレストランが開店した様子なのでそちらへ向かった。
予想通り、とても素敵なお店で、メニューを一人一人会話しながら決めてくれる。
とてもフレンドリーで「どこからきた?」「日本人はこれは好きか?」「今日はこれがおいしいぞ」と楽しませてくれる。
三人ともそれぞれお気に入りの料理を頼んだところで、シャンパンが届く。「シャンパンを飲みながら料理を待て」ということだ。
この頃から、少しずつ気分が変になってきた。酔いが回ってきたのだ。
とてもシャンパンを飲むどころではない。
鴨のステーキ、オレンジソース添えが出てきたあたりから胸がムカムカしてきた。
先ほど、狙いをつけていたトイレへ一目散駆け込んで、店内で不躾なことをするのを回避できた。
次の料理が出てきたところ、またもやトイレに一直線、3度ほどトイレに駆け込んだ。
ついに、カポクオーコ(シェフ)が出てきて「私の料理が口に合わないのか?」と詰問されてしまった。
通訳の M 氏に頼んで先ほどの事情を説明して酒に酔ってしまっていることを理解してもらった。
シェフは笑いながら、了解してくれて酔い覚まし系の料理に変更してくれたが、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
acquapazza とは、この文章を書きながら、ぴったりの名前だったと言うことに気づいた。
acqua は水を意味し、pazza は暴れる、狂った。
今回は『暴れる水』ではなく『狂った水』を意味しているのだ。日本では酒のことを「気**水」とも言う。
2年前はこの店の予約が取れなかったので立ち寄ることができなかった。
もう一度訪問して、今度こそ楽しくおいしい acquapazza の料理を食べてみたい。