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脱走

散歩道にカナリアが飛んでいた。

きっと脱走したのだと思う。

カナリアは飛び方も下手で長距離は飛べない。

よたよたとしているカナリアを見て、子供の頃、飼っていたことを思い出した。

友達は伝書鳩を飼っていたが、鳥小屋から装置全てが大掛かりで、彼は学校から帰るといつも屋根の上に登っていた。

鳩は餌をたくさん食べる上に、大量のフンをする。掃除にかかりきりで大変だと言っていた。

「鳩のレースに出すんだ」と言いながら、彼は鳩を放したり回収したりの練習をしていた。

鳩が数十羽に増えたところで突然全部いなくなってしまったそうだ。

鳩には面白い習性があって、『帰巣本能がある』だから放しても飼い主のところに戻ってくる。

彼は安心して空に放したそうだが、もう一つの習性は『大きな集団についていってしまう』なのだそうだ。

彼の鳩は大きな集団についていってしまって帰って来なかったそうだ。

カナリアの世話もなかなか大変だ。手間がかかる上に1日も欠かすことができない。

毎日、飲み水と水浴び用の水を交換する。粟、稗、エゴマを与え、青菜を用意する。

殻を吐き散らかすので掃除が大変だ。

ある夜、うっかり室内に取り込むのを忘れた。

いつもは綺麗な声で朝を知らせてくれたカナリアの声がない。

室内に取り込んでいないのに気づいて、慌てて外に出て見たら、鳥かごが無残に転がされていて中の鳥が見当たらない。

猫の仕業だった。

現在、猫をあまり好きになれないのはこの辺りに原因があるのかもしれない。

このカナリアが無事に飼い主の元に帰れることを願っている。

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