コピーライターになりたい。


かつて、コピーライターが人気職業の上位ランクに
入っていたことがありました。「コピーライター」という雑誌まで
創刊されていたくらいです。
今では、当時の見る影もありませんが、それでも時々、
僕のところに「コピーライターになりたいのですが、どうやって
勉強したらいいでしょうか」と質問をいただくことがあります。
今日は、その話をしてみます。


1 コピーライターの定義が変わった。

かつては、コピーライターといえば、キャッチフレーズを
考えることがメインの仕事でした。短いシンプルな一行、を考えることが
コピーライターの代名詞とされ、その一行の言葉を軸にして
広告キャンペーンやテレビコマーシャルの企画がすすんでいきました。

特に、新聞広告、雑誌広告、駅貼りポスターなどは、
コピーライターにとって「最高の舞台」だったと記憶しています。
テレビコマーシャルのほうが好きだったコピーライターも
いるかもしれませんが、少なくても僕は、活字で勝負できる
グラフィックの仕事のほうが、コピーライターの力量を発揮できるので
好きでした。

ところが、皆さんもご存知のように、上記のような仕事は
かなり少なくなりました。

テレビコマーシャルや広告のキャンペーンも、
コピーを軸にして組み立てる、というよりも
もっと統合的な「アイディア」を考えていくことのほうが
多いでしょう。

広告の作り方が変わったわけです。

それとともに、コピーライターに求められるものも
ずいぶん変化したように思います。


2 言葉の技術より、考え方の技術。

グラフィック広告が全盛の時代は、コピーライターは
「言葉のテクニック」を磨くことに明け暮れました。

押韻、本歌取り、駄洒落、語呂合わせなど、
印象的な言葉を生み出すことが求められたのです。

グラフィック広告は、見た目で注意を引く必要が
あったため、そうしたテクニックは大切だったのですね。

現在、コピーライターに求められるのは、
誤解を恐れずにいえば、言葉ではありません。

もう少し大枠というか、その前段階の仕事です。

かつて、コンセプト、という言葉が広告業界を席巻し、
「コンセプター」のような肩書も生まれましたが
今のコピーライターには、それに近いような役割です。

広告やキャンペーンの「考え方」を生み出すことが
大切になっているように思います。

そして、それはコピーライターの本来の役割でもありました。
言葉遊びが全盛の時代であっても、面白ければ何でもいいわけではありません。
その言葉を考える時には、前提となるコンセプト、考え方、ロジックを
自分で考えていたわけですから、アウトプットの方法だけが変わった、
と言ってもいいのではないでしょうか。

3 文章を書くことは、考えること。

コピーライターの勉強について、書くつもりが
コピーライターの役割の変化について書くことから
スタートしたのは、昔と比べて学ぶことが変わって
来たように思うからです。

広告アイディアを考える時には、いきなりアイディアを
考えませんね。

プロジェクトの目的、背景にある課題を整理し、
競合状況、ターゲットがどんな人なのか、などを調べます。

そのうえで、ブランドや商品にとって最適な方法を
探っていくわけですが、じつは、この考える過程さえ
しっかりできれば、言葉を考えだすのは、そんなに難しい
ことではありません。

たとえば、競合と比べて、国産の材料を100%使用している
ことが優位性をもつとすれば、「国産100%」と伝えることが
最も効果的な言葉になりますね。

「国産100%」には、言葉の芸もなければ、駄洒落もありませんが
効果的な伝え方を最優先するためには、それが正解です。

ブログであれ、小説であれ、文章を書く場合、
いきなり書く人はあまりいないと思います。

どんな内容にしようか、読者はどんな人だろうか、
構成はどのようにしようか、などと考えたうえで
最適と思える文章を書いていきますね。

コピーもそれと同じです。

文章を書くことの前に、広告やマーケティングの考え方、
メディアやコミュニケーションの役割などの基本的な知識を
勉強していくことが大切ではないか、と思います。



コピーライターは言葉の専門家と思われがちですが、
言葉だけの専門家ではありません。
逆説的になりますが、言葉だけに囚われないことが
結果として最適な言葉を生むような気がしています。

コピーライターを志されるのであれば、
広告、マーケティングについての知識を深めながら
「戦略的な思考法」を身につけることが先決でしょう。

そのうえで、言葉についての修業を重ねるといいと思います。

ちなみに、言葉についての修業は、当たり前ですが
「たくさん書くこと」に尽きます。仕事の経験をたくさん
積めればいいですが、その機会がなければ、ブログでも
それこそnoteでもいいと思います。

書くことで考えが整理され、しっかりした考え方が
できるようになると思います。

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