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女性ホルモンと歯周病

今週は女性ホルモンと歯周病についてご紹介したいと思います。
女性は男性よりも平均寿命が長いことは多くの方がご存知かと思いますが、実は歯の平均寿命は男性の方が長いそうです。それには歯を失う最大の要因となる歯周病が関係しています。
女性は一生涯のうちに身体的変化を伴う節目となる時期が何回かあります。そのたびにホルモンバランスにも変化が起こり口腔内の組織や粘膜にも影響が生じるため女性特有の症状が現れて歯周病にもなりやすいそうです。
最初に訪れる大きな変化が思春期です。この時期になると女性ホルモンの分泌が増え始めます。女性ホルモンが増えると歯ぐきの血流量が増え代謝が活発になり、これにより歯垢などの刺激物に反応しやすくなり歯周病にかかりやすくなってしまいます。
また、心身ともに多感な年齢で、進学などにより人間関係や環境の変化、テスト勉強の睡眠不足などでストレスを抱え始める人が増えるのも思春期の特徴です。ストレスは、免疫力を低下させ口腔内環境の悪化にもつながります。さらに極々稀ではありますが過剰に口臭を気にしたりして口臭症となってしまうような可能性もあります。
次に妊娠・出産期です。メインテナンスは基本的に3ヶ月を推奨しています。ただ、メインテナンスを受診中でも妊娠が判明すると次の受診を控えられてしまい、出産後に改めて来院される方もいらっしゃいます。妊娠していても歯科受診は可能ですので、ご自身で受診を控えることはおやめください。
妊娠すると女性ホルモンの分泌が増加し、歯ぐきから出血しやすくなる、口の中がねばつく、口臭が気になるなどお口の変化が見られるようになります。つわりで歯みがきがしにくかったり、間食が増えたり、酸味があるものを食べたくなるせいで歯周病にもむし歯にもなりやすくなります。
赤ちゃんが生まれて最初に生えてくる歯は生後6ヶ月頃に生える下の前歯です。離乳食を開始する合図にもなります。赤ちゃんの歯の育ちを見守り、妊娠中および出産後の母子の健康と命を守るために役立つのが「母子健康手帳」です。
母子健康手帳の中には歯科に関する分野もあり、初めの方に「妊娠中と産後の歯の状態」という妊娠中や産後の歯科健診の結果を記録するページも準備されています。そこには「むし歯や歯周病などの病気は妊娠中に悪くなりやすいものです。歯周病は早産等の原因となることがあるので注意し、歯科医師に相談しましょう」と書かれています。これは、妊娠期に歯周病になると、早産や未熟児・低出生体重児となるリスクが高まるためで、歯周病菌が放出する毒素であるプロスタグランジンが、このような影響を与える原因となっています。
日本人の8割、25~35歳の6割が歯周病だと言われていて、進行するまで気づきにくい「沈黙の病気」と呼ばれています。予防には口腔ケアの基本である丁寧な歯みがきと歯科医院での専門的なクリーニングが効果的です。
歯科定期健診を受けている方にはこのような時にどうしたらよいかをお知らせしています。歯みがきがしっかりできない方には洗口液や小さめの歯ブラシを使った上手な歯の磨き方を、酸味のある食べ物をよく口にする方には食後のうがいで歯周病やむし歯のリスクを減らすことなどをお知らせしています。クリーニングとともに定期的に歯科でフッ素塗布をしたりしてもらうと歯周病予防、むし歯予防ともに効果が得られます。
また、歯科治療が必要になった時に心配なのがレントゲン撮影や麻酔、処方薬だと思います。レントゲンは防護服を着て撮影すればその放射線量は年間の自然被爆量の100分の1以下と言われています。いずみ中山歯科のデジタルレントゲンではさらに被爆線量を抑えられるので、赤ちゃんへの影響は心配ありません。
歯科で使われる麻酔については、局所麻酔であればお腹の赤ちゃんへの危険性はほとんどないことが報告されています。痛みはストレスとなりますので、麻酔が必要な治療なら歯科医師と相談して納得した上で麻酔するようにしましょう。
薬剤についても妊娠中や授乳中にも服薬が可能なものを処方します。
各自治体でも同様の制度があると思いますが仙台市では、妊娠中の方に歯科健診の費用を負担する妊婦健診が行われています。セルフケアもしっかりと行いつつ、このような取り組みを利用して産まれてくる赤ちゃんのためにもむし歯および歯周病対策を行うようにしましょう。
次に中年期です。妊娠、出産期から引き続いてになりますが、家事、育児など家族中心の生活で自分自身へのケアが疎かになったり、自分のことは後まわしになったりしがちです。また、仕事で日々忙しく不規則な生活やバランスの悪い食生活に陥りやすいです。様々なストレスにさらされるこの時期は、バランスの良い食事と生活リズムを意識して無理をしてでも自分自身の身体のために検診時間を取ることが大切です。
最後に更年期です。更年期になると、女性ホルモンの分泌は低下に転じます。女性ホルモンの一種であるエストロゲンは骨密度の低下を防ぐ大切なホルモンですが、このエストロゲンの減少により骨密度が低下すると骨折を起こしやすくなります。
その影響は、口腔内にもおよんできます。骨密度の低下によりあごの骨が衰えると、歯槽骨という歯を支える骨も脆くなります。歯の支えが弱いと、歯がぐらつき抜けやすい状態となるのです。
また更年期は女性ホルモンの急激な低下によるホルモンバランスの乱れで唾液の分泌量低下し口腔乾燥(ドライマウス)のリスクが高まります。唾液の分泌量が減ると、口腔内の自浄作用が低下しむし歯や歯周病のリスクが高まるため、更年期は特にマウスケアへの高い意識が必要となります。
ホルモンバランスの変化を避けて通ることはできません。思春期、妊娠・出産期、更年期は変化が著しく、特に口腔ケアの重要性を自覚しておくことが大切です。毎日の丁寧なセルフケアと、プロによる定期的な歯科検診(メインテナンス)を継続して歯周病予防、むし歯予防を行っていきましょう。

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