同じ現象を見た際の捉え方の違い
理学療法実習生の評価実習が一段落して、そこから得た新たな発見を1つ整理。
結論から言うと、
廃用症候群を現代社会から無くすためには、知識や情報発信だけではなくて、「一人一人の価値観自体を変える必要がある」ということ。
病気やケガによっては安静(寝たきり)を余儀なくされる場合があります。
(体重がかかると骨折部位がより悪化してしまう、など)
今回の理学療法実習生(学生さん)に一部評価をしてもらった利用者さんは、まさにこのようなおよそ1か月間の安静期間(寝たきり状態)を終えたばかりの、今から離床していきましょうねという時期を迎えた方でした。
まさに廃用症候群の中でも代表的な、起立性低血圧や関節拘縮、筋萎縮を伴う筋力低下などを呈していて、
特に膝関節が伸展拘縮してしまっていて、リクライニング車椅子にしか座位保持が出来ない状態でした。
拘縮している膝関節を曲げていくと痛みを伴うのですが、
認知症が重度の状態でなかなか上手くコミュニケーションが取れません。
学生さんは基本的に自信が無いためにそろりそろり動かすのですが、
その動かした際にタイミング良く「痛い!!」と訴えられて、見事にフリーズ。
#ここまでは案の定
#学生あるある
その日のフィードバックで学生さんと2人で話した際には、
「痛い!!」と訴えられて恐れてしまった、というのもあったが、
それよりも、
「離床させている姿を見て可哀そう」
と感じたそうです。
なるほど。
全く同じ状況を見て、
「なるべく痛みが出ないようにしながら、少しでも離床時間を増やして元のADLに近づけよう」と考える人もいれば、
「すごく痛みが出やすい人だから、離床させるのは可哀そう。安楽にしてベッド上でリハビリしよう」と考える人もいるのか。
学生さんが「離床させている姿を見て可哀そう」と感じたことはとても大事であって、
その部分を否定せずに、
「なぜそう感じたのか?」とか、
「どこが不安なのか?」とか、
「寝たままで廃用がより進んでしまうことも可哀そうではないか?」とか、
「寝たきりの状態と、リクライニング車椅子に移乗できる状態と、普通の車椅子に乗れる状態で、今後の参加状況がどれくらい変わるか?」とか、
「本人の意思は分からないけれど、家族や主介護者の思いはどうなんだろうか?」などなど、
基本的に寄り添う形で一つずつ消化していきました。
#私なりの教育方針
#否定からは入らない
ここの詳細は端折りますが、
そんなこんなで、
第1週目ではめちゃくちゃ離床させることにネガティブだった学生さんが、
最終週目では率先して離床に協力的に動いてくれるようになりました。
#目を見れば分かる
#行動を見れば一目瞭然
*ここで余談ですが、
私がこの方を担当する直前まで別事業所の7年目理学療法士(個人事業している)がリハビリテーションを行っていましたが、
その頃からすでに離床許可はあって、朝夕の食事では施設スタッフが2人介助で車椅子へ移乗していたにも関わらず、ベッドサイドで寝たままもみもみするだけの理学療法。
廃用症候群からの回復段階にある時期にも関わらず、離床せずにむしろ廃用を助長するだけの理学療法しか行わず。
自室内(閉鎖空間)なので周りのスタッフもどんなリハビリテーションをしているのか全く分からない状態。
移乗は2人介助必須だったため施設スタッフへ移乗介助を手伝ってもらうよう声掛けするのが面倒だったのか、学生さん同様に痛がっているのを見て可哀そうと思ったのか。
いずれにしても利用者ファーストで動かないような理学療法士は早々にしてご退場願いたい。
ちなみにこの利用者さんは私が担当して2か月弱の現在、
普通の車椅子に介護スタッフ1人の介助で移乗が出来るまで回復し、
トイレ動作獲得に向けて立位姿勢を保つ練習中です。
さて、
廃用症候群とは、寝たきりなど身体の機能を使わないことによって生じてしまう良くないことの総称ですが、
頭では「寝たきりは良くない」とか、「なるべく身体を動かして」とか聞いたことがあって知っていたとしても、
いざ「その(離床している)姿を見た」ときに、それをどのように感じるか?は人それぞれであって、
そんな価値観自体をしっかりと共有しておかないと、世の中から廃用症候群は無くならないのではないかと思ったりしました。
なんか数年前にもベッドサイドで端坐位練習をしていた際に、
「可哀そう」と言われた訪問先の施設なんかがありました。
きっと、頭では「寝たきりは良くない」とは思いながらも、いざ「離床している姿」を見るとびっくりしてしまった、ということだったのかも。
このあたりの説明力なんかも、今後の理学療法士には求められると思います。
#最近の学び