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首都に
首都に来た
内ポケットには
青い乗車券があった
交通路は血走った網膜となって
空を見上げていた
夜の公衆便所で中年男が
誰よりも高く放尿しようと反返っていた
爬虫類の皮膚をした若い母親が
巣箱で時の蕾を食べていた
手に入れたものが本当に
求めていたものかどうか
飛んだ高さは
墜ちた深さに見合っているか
未明の路上では
不慣れなセールスマンが現在位置を捜していた
掌の形をした雲が巨大な断念のように
空を流れていた
心が露出すると嫌な臭いがする
〈オマエハオマエヲイキタカ〉
〈オマエハオマエヲイキタカ〉
同じ言葉を何回も呟くと
意味のない記号になる
せめて
買いたての定期入れくらいは 大切に!
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(詩集『夕陽と少年と樹木の挿話』第2章「遁走する春」より)