塁上の孤独
私は9人家族の一番目だ
一番先に産まれたわけではない
一番目に家を出るのが役目というだけだ
とにかく最初に家を飛び出して
原っぱを駆け回り
無事に家に帰って来なければならない
原っぱには私を殺そうと
敵の9人家族が散らばっている
そのひとりは私たちの家のすぐ前で座り込んでいる
原っぱには途中で休める地点が3カ所ある
休めるからといって油断はできない
いつ敵に刺されるか分からない
一番安全なのは
相手が投げてくる牛の皮で包まれた球を
木の棒でひっぱたいて柵の向こうに放り込むことだ
誰にも邪魔されずに家に帰ることができる
おまけにヒマワリの種で祝福される
私の家族が3人死ぬと1回目の戦いは終わり
次の戦いが始まる
今度は我々9人が原っぱに散らばって
敵の家族を殺すことに専念する
この戦いは双方の家族が27回死ぬまで続けられ
家に生きて帰った人数が多い方が勝ちとなる
原っぱに設けられた3カ所の休憩地点は
いつしか塁と呼ばれるようになった
一番悲しいのは
私だけ塁上に取り残されたまま戦いが終わることだ
私は決意した
絶対に柵を越えるアーチを50回架け
絶対に次の地点にある塁を50回盗もうと