見出し画像

恐怖病棟

今夜が一番危ないからすぐに入院しなさい
個室じゃないと嫌です
特別室に入れてくれた
バストイレ付でテレビ見放題
IH調理器まで付いていた
VIP待遇
今から退院の日まで検査と点滴漬けになるという
針を左腕に刺されてチューブに繋がれた
胸に電極を貼られ
赤や黄や緑のコードに繋がれ
心電図ホルダーを首からぶら下げられた
改造人間にされるのか俺は
どうやって寝ればいい
どうやってトイレで用を足せばいい

点滴が切れたら
ちゃんと取り換えておきますから
安心して寝てくださいね
香水が匂う看護師はそう言って
部屋から消えた

夜になった
薄暗い廊下から
唸り声や叫び声やイビキが聞こえてくる
点滴がポタポタ落ち続ける
点滴液が切れても取り換えに来てくれない
ナースコールのボタンを押した
待てど暮らせど
誰も来てくれない
点滴のチューブに血が逆流してきた
真っ赤な俺の血だ
二回目のナースコールを鳴らしても来ない
俺は病室の扉を開け
電極と三色のコードを身に付けたまま
心電図ホルダーを首にぶら下げたまま
点滴スタンドを転がせながら
ナースステーションまで歩いていった
香水の看護師が待っていた
わざわざ来てくださって申し訳ないです

VIP待遇はこれで終わらなかった
三日目の午後
また点滴が切れた
血が逆流し始めた
点滴が切れたので取り換えに来てください
俺はナースコールのマイク越しに懇願した
待てど暮らせど
誰も来ない
点滴のチューブの一番上まで血が昇って行った
上から下まで真っ赤だ
俺の血で汚染される
二回目のナースコール
若い看護師が飛んできた
点滴を針から全部取り換えます
今まで刺さっていた針が左腕から抜かれた
新しい針を出してきて
左の手の甲にいきなり刺そうとしてきた
骨に刺さったら痛いじゃないか
やめてくれ~
看護師は手の甲はあきらめ
俺の左腕をさすって
針を刺す別の血管を探し始めた
さすってもっすっても血管が浮かび上がらない
看護師の目が吊り上がってきた
血管が見つからない
看護師の目が飛び出そうになってきた

これから先は
とても文字で書くことができない

  ※これはフィクションではありません

(突然ですが)
『もうやってらんない!』(2024年11月6日 note 投稿)という、
私の詩が「月刊ココア共和国 3月号」の傑作集に選ばれました。
おまけに初めて表紙に名前が載りました。
嬉しさひとしおです。
いろんな詩人の楽しい詩や不思議な詩が一杯です。
AmazonのKindle版で275円です。
読んでみてください。


いいなと思ったら応援しよう!