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浄土ヶ浜

晴れた日
空と海が結婚する
花の香のする少女が
浄土ヶ浜の砂を踏む

海は無頓着な子宮
極楽浄土は遠い松の岬

潮風と波に削り取られて
岩の岬は凍りついた炎のように
それでも時間に抗う想い出のように
沈黙の形態を保っている

海ネコが鳴いている
波が自然の七五調を奏でている
傾いた太陽が海に入ろうとしている

夏が不意に顔を出す

少女は夏の準備をしていない

 (詩集『夕陽と少年と樹木の挿話』第3章「遁走する春」より)


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