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TTP (TetteiTekiniPakuru) が教えてくれた未来を創る力_新規事業で悩んだ時

「あなたの仕事や挑戦には、結果を出すための明確な方法がありますか?」

私が新規事業部門に異動して、人も予算もない中で新規事業を立ち上げることになった時に先輩が教えてくれた一言があります。それが「TTP」でした。

「TTPって何ですか?」と尋ねた私に、先輩は笑顔でこう答えました。
「TetteiTekiniPakuru(徹底的にパクる)だよ。」

15年前の先輩の言葉です。

一見シンプルに聞こえるこの言葉。しかし、その本質は、徹底的に観察し、本質を掴み、自分の形に昇華するという強力なアプローチでした。この言葉は、アスリートとしての経験と、未来のビジネスをつなぐ接点をつくってくれたのです。そして、どんな分野の人にも活用できる普遍的な方法論だと私は信じています。

幼少期:観察力を育んだ日々


「観察力は、すぐに身につけられるものではありません。」

私が幼少期に育った環境は、観察力を育む上で特別なものでした。父がアーティストだったため、私は日常的に何かを「観察し、それを絵に描く」ことを繰り返していました。たとえば、風景や動物、人々の表情を注意深く観察し、それを自分の手で表現するというプロセスです。

この習慣によって、目の前の物事を「ただ見る」のではなく、その背景や細部、全体のつながりを意識して見る癖が自然と身につきました。
この経験が、後のアスリート時代やビジネスにおける「観察、思考、表現」の原点となったのです。

中学時代:テニスで学んだTTPの原点


「どの視点から物事を見ていますか?」

私が「TetteiTekiniPakuru」を初めて具体的に実践したのは、中学時代のテニス経験でした。勝つためにただ練習するだけではなく、テニスコートの模型を自作し、相手の動きをシミュレーションして戦略を立てました。

この模型を使った分析のポイントは、まるで『鳥の目(Bird’s Eye View)』のようにテニスコート全体を俯瞰して見る視点を養ったことです。この「俯瞰的視点」を得ることで、相手の動きや戦略を広く捉え、以下のような洞察が得られました:
• 観察:相手がどの位置からどこにボールを打つのかを見極める。
• 思考(分析):相手の癖や弱点を考え、自分の戦略と組み合わせる。
• 表現:最適なポジション取りや、空間を使った誘導を実践する。

幼少期から育まれた観察力を応用し、「コート全体の状況を広く見渡す」ことで、勝利への道筋が見えてきたのです。

会社員時代:フリースタイルスキーでの挑戦


「失敗を重ねながら、何を学んでいますか?」

広島テレビに入社後、私は広島テレビSCとしてフリースタイルスキー・モーグル競技に挑戦しました。競技経験ゼロの状態から3年で国体入賞を果たせたのは、TetteiTekiniPakuruの力によるものでした。

徹底的な観察と模倣

ワールドカップの映像を擦り切れるほど繰り返し観察し、以下を徹底的に研究しました:
観察:トップ選手の身体の角度や重心移動、ターンやジャンプのリズムを見つめる。
思考(分析と応用):観察した内容を基に、自分の弱点を特定し、取り入れるべき動きを考える。
表現:模倣から最適化を繰り返し、自分のスタイルを確立する。

メンタルトレーニング

もう一つ大きなポイントは「イメージング」です。頭の中で「自分が成功している姿」を具体的に思い描き、そのための準備を徹底しました。これを読んでいるあなたも、自分のゴールを鮮明に思い浮かべてみてください。それは驚くほど強いモチベーションとなり、次の一歩を後押ししてくれるでしょう。

AmazonのハーベストループをTTP

Amazonのハーベストループは、ビジネススクールのゼミで学びました。

Amazonのハーベストループは、創業者のジェフ・ベゾスがナプキンに書いた簡単なスケッチから始まりました。このスケッチは、顧客満足を軸にした循環モデル(フライホイール)がどのようにビジネスの成長を加速させるかを示しており、後にAmazonの戦略の核心となりました。

Amazonのハーベストループの流れ


1. 顧客満足を向上
• 低価格、利便性、豊富な品揃えを提供することで、顧客満足度を高める。
2. 顧客数が増加
• 満足した顧客がリピート利用し、口コミを通じて新しい顧客を引き込む。
3. 売り手が増加
• 顧客数の増加により、売り手にとって魅力的なプラットフォームとなり、出品者が増加。
4. 品揃えが広がる
• 売り手の増加によって商品ラインナップが充実し、さらに多くの選択肢を提供。
5. 低価格を実現
• 規模の経済が働き、運営コストが削減され、さらに低価格を提供可能に。
6. 顧客数がさらに増加
• 低価格と豊富な品揃えの魅力により、さらなる新規顧客を引き込む。

この循環が加速し、持続的な成長を生み出します。

このAmazonのハーベストループを参考にしつつ、TTPの精神を取り入れて、テレビ局アプリに応用したモデルを構築しました。このモデルでは、「ユーザー満足」を軸に以下のような循環を作り出しました。

テレビ局アプリハーベストループの流れ
1. ユーザー満足を向上
• 番組と連動したクイズや投票、「今しか体験できないワクワク」を提供し、視聴者の満足度を高めました。

2. ユーザーが増える
• 満足したユーザーがリピート利用や口コミでアプリ利用者を増やし、視聴者エンゲージメントが向上。

3. 連動コンテンツを増やす
• ユーザーの声を徹底的に反映して新しいコンテンツを企画・提供。たとえば、「クイズで順位を知りたい」「放送時間を調整してほしい」などの要望に対応しました。

4. ユーザー満足がさらに向上
• 新たな連動コンテンツがユーザーの期待を超える体験を提供し、さらなる満足度向上を実現。

5. さらに多くのユーザーを引き込む
• 魅力的なコンテンツが口コミで広がり、新規ユーザーを引き込み、アプリ全体の利用者が増加。

6. 収益を再投資して改善
• 増加した収益を新たな技術やコンテンツ制作に再投資し、さらに質の高い体験を提供する。

チームの力に感謝を込めて


このハーベストループを構築し、テレビ局アプリを成長させることができたのは、一人の力ではなく、多くのチームの協力があったからこそです。
• 番組制作チームが、ユーザーの声を拾い上げて新しいアイデアを形にしてくれました。
• データ分析で視聴者の行動データをもとに的確な仮説を立て、次の戦略を導き出しました。
• 技術チームが、アプリの機能を改良し、ユーザー体験を向上させる仕組みを構築しました。
• 営業チームが広告主との連携を強化し、収益基盤を安定させてくれました。

このように、多様なスキルと役割を持つチームが一丸となって挑戦した結果、ユーザー満足度を高め、アプリを持続的に成長させるハーベストループが実現しました。

「失敗しないので」と言われるまでの道のり


「お前さんはドラマに出てくる『失敗しないので』という大門未知子みたいだな」と経営者に言われたことがあります。しかし実際の私は、そんな完璧な人間ではありません。むしろ、小さな失敗をたくさん×100以上繰り返し、その都度仮説検証を行い、改善を重ねてきました。
そう、失敗を繰り返して積み上げるので、エフェクチュエーションの方式で進めています。

失敗を恐れず(たくさんの失敗しながら)挑戦し続けることが、結果として「失敗しないように見える」という評価につながったのです。そして何より大切なのは、「諦めずにやり切る」こと。この姿勢こそがTTPの実践における最大の価値だと考えています。

TTPとアート思考で未来を創る


TTPを活用し、さらにアート思考の自分起点で「観察」「思考」「表現」を繰り返すことで、幼少期からの経験をビジネスに昇華させることができました。Amazonのハーベストループを参考に構築したテレビ局アプリの成長戦略のように、どんな分野でも応用可能なサイクルを生み出すことができます。

「未来の当たり前をいま創る」。それを可能にするのは、徹底的に考え抜き、行動し続けるあなた自身です。そして、何よりも支えてくれる仲間やチームに感謝しています。

この考え方を教えてくださった先輩に、心から感謝を込めて。

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