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繋がることで救われる


先日、「社会的処方」という言葉を知りました。どうやら2021年6月18日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2021」の中で、孤独や孤立の対策として「社会的処方の活用」が明記されていたりと、日本でも注目されつつある考え方のようです。

社会的処方とは何なのか。『社会的処方 孤立という病を地域のつながりで治す方法』(西智弘編著、2020年、学芸出版社)を読んでみると、『薬を処方することで患者さんの問題を解決するのではなく、「地域とのつながり」を処方することで問題を解決するというもの』と示されていました。長期に及ぶ慢性的な症状を抱えている人やメンタルヘルスの面で支援が必要な人、社会的に孤立している人などが対象に、医療的な介入だけでなく、精神的、社会的に介入しケアする仕組みをいうようです。そして、地域とのつながりを処方する(社会的処方の中心となる)のがリンクワーカー。医療機関において支援が必要だという人を地域活動へ橋渡しする、そんな役割を担っているのかなと感じました。

確かに、日常生活の中で自分が興味があることで、自分がそこに居てもいいと思える場所があることでどれだけ救われることがあるだろうと。
そう考えると社会的処方は納得の仕組みです。

社会的処方について詳しく調べていくうちに、リンクワーカーは答えや解決策を直接提示するのではなく、豊かに生きることができる居場所や環境の選択肢を提示する役割があるように感じてきます。ケアの主人公はその人個人であって、リンクワーカーは橋渡しをする「案内人」なのだと思えてくるのです。いろんな選択肢がある中でリンクワーカーがその人に合いそうなものを繋ぎ、孤独から解放していくようです。

医療の枠組みでの解決が難しい課題に対してアプローチする社会的処方。イギリスではうつ病や認知症に対して行われていることが多いとのこと。医療と地域活動を繋ぐ社会的処方、病気ではない、日常で感じる違和感や医療に関わることではない、「生きづらさ」というフワッとした曖昧な気持ちに対しても、通じることがあるのではないかと思ったりします。

新しく入った集まりで打ち解けられず居づらさを感じてしまうとき、繋いでくれる人がいるだけでどれだけ救われるでしょう。趣味もなく休みの日は家に篭りがちでモヤモヤしていたとき、誰かに誘われたり、他の集まりに参加できたときのどれだけ満足感を感じるでしょう。
病気じゃなくても、「生きづらさ」という曖昧な気持ちに対しても、社会的処方、リンクワーカーはそれを和らげるような動きができると思うのです。

生きづらさに寄り添い、のびのび生きる社会をつくる。社会的処方・リンクワーカーの活躍は、予防医学の視点でも、Well-being(ウェルビーイング)な状態を作っていけるのだと思うのです。

そんなリンクワーカーの働きを、本や本好きが担うことができるのではないか。そんな可能性も感じています。なんでそんな可能性を感じるのかは、もう少し、本の可能性を書き出してからにしようかな、と思います。

今回はこのへんで。

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