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うさぎの小径(こみち)

宇治は、別名莵道(菟道)とも呼ばれます。
莵道(菟道)と書いて「うじ」と読ませることもありますが、一般的な読みは「とどう」で、莵道高校や菟道小学校、菟道第二小学校など、学校の名前に今でも使われています。
古い伝承によると、応神天皇の皇子である菟道稚郎子(うぢのわきいらつこ)が、山中で迷ったときにうさぎ(兎=莵、菟)が現れて、時おり振り返りながら道案内してくれたそうで、その土地を莵道と呼ぶようになったとのこと。
宇治上神社や宇治神社の祭神は菟道稚郎子で、皇子を導いたうさぎも縁起ものとして様々な授与品のモチーフとして使われています。

見返りうさぎ(すみがき たけし) 2024年

菟道稚郎子は、父から後継者に指名されながら、皇位を兄(後の仁徳天皇)に譲り、自らは姿を消しました。自ら命を絶ったという話もあれば、次の政権から暗殺されたのでは、という説もあるようで、その最期は謎に包まれています。
その陵墓も、宇治上神社の背後の大吉山(仏徳山)または、その隣の朝日山のてっぺんにあるという説が正しいのでは、と私は思っていますが、宮内庁は宇治川と京阪宇治線の間にある丸山古墳と指定しています。

私も宇治に住み始めて早くも二十数年が経ちました。
山中の道を歩いたり、ランニングをしたりしていると、時折野生の獣たちに出くわすことがあります。
一番多いのが鹿。冬の朝などは山奥に帰りながら群れの仲間たちと鳴き交わす鹿の声が聞こえたこともあります。
薄明かりの中で目の前を横切るのはイタチやタヌキ、そして、時折アライグマやハクビシンなど外来の動物らしき姿を見かけることもあります。
しかし、まだうさぎを目にしたことはありません。
一度でいいので、うさぎが現れ、言い伝えのように振り返りながら、ぴょんぴょん飛び跳ねてくれないかなと夢見ています。

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