『公共哲学』(M.サンデル)読んだ
てっきりサンデル教授の理論的な主著かと思って身構えていた。
買って、読み始めて、現代アメリカの(※といっても、夫の方のクリントンの話題など。20年以上前のはなし)政治的・社会的な事件について、時事評論的なエッセイが並んでいるのに面食らった。
そういう本はそういう本で興味深いけど、そういう本にこういうタイトルは付けないものじゃない?
読み進め、終盤になって、他の政治哲学者の論説への言及が増え、当初思っていたような「理論的な主著」という風情が出てくる。ロールズの『正義論』、および『政治的リベラリズム』の主張を整理しながら、その限界を批判する論文は読み応えがあった。
読み終えた今、考えてみるに、この本のこの構成は、おそらく、サンデル教授の政治哲学上の立場による、必然的なものなんだろう。
だから、「時々に書いたエッセイを集めたもの」と言ってはいけない。
サンデル教授の立場は、抽象的な概念や図式を積み重ねて哲学理論を提示するようなものじゃないんだ、多分。
本の中では、「善」「共通善」という抽象的な言葉も使われているけれど、それは具体的な事件や状況、様々な意見に関連付けて考えるものと位置付けられている。
だから、時事的な問題を取り上げて、他の様々な立場の主張を吟味・検討し、それぞれの主張の長所・短所を見極めながら、何が「善」なのかを考える、という流れになる。
その意味では、この本はやはりサンデル教授の主著なんだろう、と思った。大変面白かったです。
(余談)
ロールズはやっぱり現代の政治哲学の一つの極地なんですねえ。いつかちゃんと読みたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?