
刺身の厚みについて試してみた
刺身は美味しい。
たとえば居酒屋に行けば刺身盛合わせを食べるのは必然。ああ、日本酒がはかどるなあ。なんてことは酒飲みならば誰しも経験しているだろう。
行きつけの海鮮定食屋では刺身盛合わせ定食で、ああ、白飯が美味しいなあ。といつも破顔してたりもする。
そんなある日、ふと思ったのだ。
こんなに美味しい刺身、もっと口いっぱいになるように食べれば、美味しさも倍増するのでは?
そんな安直なことはないだろう。と普通なら思うかも知れない。だが、自分は実際に美味倍増体験を経験していた。
大ぶりな刺身用のホタテを購入したときのこと、飾り包丁程度しか手を加えず分厚いホタテをほぼそのまま食した。
猛烈に美味しいかった。
薄く切ったホタテでは味わえない衝撃だった。
というわけでこの現象、ほかの刺身にも当てはまるのではないか? 刺身の厚みと美味しさは正比例してるのではないか? という仮説を実証すべく、カツオやマグロの柵を買ってきて、厚さたっぷりな刺身をつくってみた。
結論。うーん、イマイチ… 思ったよりも魚の生臭さが表に出てしまっている感じ。なるほど、なかなか一筋縄では一筋縄ではいかないということか。
さて、自分は刺身の厚み仮説に類似するもうひとつの課題感を持っていた。
かまぼこ、である。
かまぼこは美味しい。特に板わさなどシンプルな細工で日本酒をキュッとやるのがよろしい。
だが、かまぼこってけっこう高価な食材でしょ。そんなに勢いに任せてほおばる食べかたには向かない。できることならじっくり味わいたい。
だったら、薄く切り分けることで口に運ぶ回数を増やすというのはどうだろう。で、試してみた。
結論。うーん、これまたイマイチ… 薄いかまぼこは、噛んだときのクッという弾力感もなく存在感がなくなってしまっている。これはダメだ。
ようするに刺身やかまぼこには適正な厚さがある。
これまで料理人たちが積み重ねてきた理に、素人の思いつきごときがかなうわけはない。そんな当然のことを実感した。
食感を楽しむための刺身の切り分けかたを調べてみると、種類などで違いはあれど、だいたい5~8ミリ程度がよいとあった。
確かに店で出てくる刺身もおおむねそのくらいだもの。そういうことかあ。
刺身はその適切な厚みが直接味わいに直結する。厚さダイレクトである。
最近は刺身を柵ではなく、つい刺身に切り分けられたものを買っているけれど、自分の料理スキルのアップのためにも、たまには柵買いも必要だなあ。
初出24年11月29日