電波戦隊スイハンジャー#23
第三章・電波さんがゆく、グリーン正嗣の踏絵
分水嶺1
白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ 若山牧水
夏が来るたびに、何か素敵なことが起こるかもしれないと子供の頃から期待していた。
開けた窓の向こうから聞こえる蝉の声がかまびすしい。
近藤光彦は自室の窓を閉めようとし、庭の百日紅の薄紅にはっと見とれて数十秒手を止める、そんな少年だった。何年前からだろうか?夏休み前が暗く、心重くなる。
学習机の宿題と、受験対策テキストと、学習用タブレット。今日やるべき課題は全部済ませてしまったし。
7月も半ばになって、陽が落ちるのが遅くなってきたように思う。母と小5の妹、愛恵は夕食の買い物からもうすぐ帰って来る頃だろう。
開業医である父はゴルフに行くと言って出て行った。帰りは夜遅くになるだろう。中学に上がる頃から、父と夕食を共にすることは無くなったのだから。
おもむろに光彦は雑誌ほどの大きさの、まっさらなカンバスを取り出し、イーゼルに掛けた。
木製の折り畳みパレットを広げ、セルリアンブルーのチューブをぶちまける。ペンキの刷毛ほどの太さの絵筆に塗りたくり、カンバスを横に切り裂くように、太い、青い1本線を引いた。
幅10センチほどの、青い青い1本線。光彦はそれきり、カンバスに手を加える事はしなかった。
車の音がする。母と妹が帰ってきたようだ。母が夕食に呼ぶまでまだ時間がある。少年は青いまどろみの中に落ちていった…
「え?空海さんが京都に強制送還?」
畑の水撒きを終えて一息ついた正嗣は、手ぬぐいで顔の汗を拭いながら、縁側で麦茶を飲んでいた。
台所では新しい居候、泰範が夕食を作ってくれている。今夜は畑で採れた夏野菜のカレーだそうだ。
そんな折の、隆文からの電話である。
「なんか、空海さんの弟子ってゆー坊さんが2人来てよー、最初は2人ともアロハシャツにチノパン履いて、
グラサンにスキンヘッドだから、どっかの極道の人と思って、おらもメンチ切ってたけどよー。
空海さんが下りてきて、一方の背の小さい坊さんを『じちえ』、もう一方の背が高い方を『しんにょ』と呼んで、座敷席で話し合いになっただよー」
空海の甥の実恵と、弟子の真如であろう。
どちらも「空海十大弟子」と呼ばれる高弟たちである。
異常事態を伝える隆文の話し方は、相変わらずのんびりしている。畑のトマトのハエがたかるのを、和んだ目で正嗣は見ていた。
「祇園御霊会に弘法大師が京にいなくてどうするか?
って空海さんが突っ込まれて、空海さん、他にも高僧がいるじゃないか、
安倍の晴明くんみたいな陰陽師とかさーって切り返したけど、
真如さんが私は祖父に泣きつかれてこのようにお迎えに来たのです!って引かなくてよー。ぎおんごりょうえって何だべ?」
「祇園祭りのことですよ。昔は御霊会と言ったのです。
京都にはびこる怨霊や疫病を鎮めるための魂(たま)鎮めのためのお祭りなんですよ。ほぼ7月中かけて行われます」
「げ、ひとつき中!?京都って、ものすごいとこなんだべなー…」
「まあ天皇が千年近くいたため、権力闘争や戦乱でいろいろありすぎた場所ですからねー。まるっとひとつき毎日じゃないんですけどね。で、どうなったのです?」
「結局、真如さんがキレて『いい加減にしろ!この駄々っ子』
と空海さんのミゾオチに一発パンチ喰らわせて気絶させて担いで、
しばらく師匠をお借りしますって丁重にお帰り下さったけどよー、
弘法大師にパンチって、真如さん、優しい公家ヅラして相当怖いヒトだなあ。何者だべ?」
「真如さんのお祖父さんが泣きついたのなら、至上命令でしょうね…
彼の祖父は桓武天皇。平安京を遷都した天皇ですよ。
京都の歴史はそこから始まったのですから」
「えーーっ!?」
「真如さんの出家前の名前は、高岳親王、平城天皇の第3皇子です」
「こ、皇族っ!?なんか、師匠がアレだと、弟子たちもキャラ濃いなぁー…」
「確かにそうですね。隆文さん、教えてくださってありがとうございます」
「いやいや、先生もゆっくり休んでけろ」
通話が切れ、正嗣はスマホをポケットに入れた。
桓武天皇が泣きつくほどの人物…日本の歴史上、空海以上の法力を持つ僧や術者、陰陽師は現れなかった、ということか。
やれやれ、とんでもない人物に見込まれたものだな、私は力を捨てたい臆病者なのに…と正嗣は半ば自嘲ぎみに笑った。
「あはははは、真如はんは相変わらず遠慮ありまへんな」
背後の泰範の笑い声に、正嗣はぎょっとした。スイカを切って皿に持って来てくれている。
「き、聞いていたんですか?」
泰範は空いた手で自分のこめかみをとんとん、叩いて言った。
「お大師はんと近しい弟子たちは、神通力(テレパシー)で会話できるのです。
皇子という出自からか、真如はんは生前からお大師はんに一番意見できるお人でしてな。
なんというか、お互い言いたい事言い合えるお二人でしたなぁ…」
スイカの皿を正嗣の隣に置いて薦めた泰範は、なんだか羨ましそうな、遠い目をして言った。
三角に切ったスイカの隣には、1センチ角に刻まれた赤い実。
「(有)七城農園の皆さんもどうぞ」
井戸で水浴びしていた有限会社七城農園の小人たちは、うひょー!と叫んで縁側に飛び乗ると、泰範の刻んだスイカにかぶりついた。
農耕と豊穣の精霊である木霊と呼ばれる13.5センチの小人たちは、二人にしか見えない。
「うひゃー、熊本のスイカは甘いなぁー」
「んだんだ、甘すぎて、熊本に移り住んでからは、スイカに塩かける事忘れてたべー」
正嗣が小人たちの会話に割って入った。
「私も熊本生まれ熊本育ちですから。
大学は他県だったんで友人の家に遊びに行った時、スイカと一緒に塩が出た時はびっくりしました。
え?なんでかけるの?って思いましたもん。友人からはこの贅沢もの!と怒られましたが…」
「で、その友人は女性かな?」
泰範の、聖とは思えぬ艶っぽい冗談に、正嗣はスイカを喉に詰まらせて咳き込んだ。
わははは、ないない!と小人たちが一斉に手をひらひらさせる。
「まーくんの下宿生活を時々チェックしてたが、こいつ、とんと色事には不得手でよ。ちゃんと嫁もらえるか心配だべよ~」
七城農園を束ねる蔵乃介が、残念そうに肩をすくめ、キセルの煙をくゆらせた。
「お前さん、同じ中学の室街子先生はどうだべ?まーくんに好意持ってるようだべよ」
蔵乃介の妻、喜乃が世話焼きおばさんの如く亭主に耳打ちした。
「ううむ、マチ子先生は古風な美人で年齢もピッチピチの24…悪くねえ」
「じゃあそのように」
サンリオキャラ顔のくせに老獪な笑みを喜乃は浮かべた。
「待って待って!なんで人の縁組勝手に決めようとしとるとですか!?って、室先生が私を?」
いつもヘアバンドをはめた黒髪の富士額に、三日月のような眉。
一重瞼の室先生の化粧っ気のない横顔を、正嗣は思い浮かべた。
放課後の美術室で、いつも真剣そうに石膏デッサンをしている…四月だった。窓の外は、桜の花びらが舞っていた。
「正嗣はん、いま胸が『きゅんきゅん』しておるな」
どきっ!
「泰範さん、心を読まないでください!『きゅんきゅん』って何?」
「いや、わたくし、ケータイ小説にハマっておりましてな、恋い焦がれるのを『きゅんきゅん』と表現するんや」
ケータイ小説?空海さんといい、この人といい、素行がゆるゆるすぎるぞ!
これでいいのか?真言宗。
(七城先生、聞こえますか?)
軽いこめかみの頭痛と共に、思念波が正嗣の脳内に流れ込んできた。
(その声は、勝沼さん?どうやってテレパスを送っているんです?)
(僕にはテレパシー能力が無いので、仕方なく薬師如来の神通力を通して語りかけています。空海さんの事は隆文くんから聞いたと思いますが…)
(ちょっとー、人をルーターがわりにしないでよー。ぶー)
(うるさい!じっとしてろ)
(…ええ、先ほど承りました。携帯やメールではいけない内容なのですか?)
(さすが七城先生、僕たちスイハンジャーの情報漏洩に関わる一大事です。テレパシーなら敵に傍受されないと思って)
(傍受とは、穏やかじゃないですね…)
(言いたかないけどね、始まりは先生と空海さんのポカミスですよ!仔細を告げます…)
悟から内容を告げられた正嗣は、作務衣ごしに自分の太ももに、ぎゅっと爪を立てた。
(という訳で、僕たちは空海さん抜きで事態を収拾しなきゃならない。出来るだけの事をお願いします)
(分かりました)
(ああっ、もうっなんでルリオとおでこくっつけ合わなきゃならないんだ?距離が近すぎる!)
(このままだと、恋が始まっちゃうかもねー)
(断じて無い。おんころころ、せんだん…)
(サ、サトル…キレたの?首輪締めるのはやめてー!!)
薬師如来ルリオの悲鳴で、テレパシー通信は途切れた。
「正嗣はん」一緒に通信を聞いていた泰範が律するように言った。
「子供はんの心は、繊細で、こわれ易いものや。機を見て、丁重に」
「承知」
畑を見る正嗣の顔はきりりと唇を結んでいる。そこに気の弱い青年の面影はなく、ヒーロー戦隊の一員、「七城米グリーン」のものだった。
昨夜夜中に週末バー「グラン・クリュ」を出て、自宅アパートでシャワー浴びてすぐにバタンキューと眠りこけていた都城琢磨は、きっかり1分おきに律儀に鳴るインターホンの音で目覚めたのはもう昼の二時半だった。
のぞき窓の向こうに、ポール・スミスの青縦縞のシャツをまくり上げた勝沼悟の、汗ばんだ仏頂面がある。外はめちゃくちゃ暑いらしい。
え、なに?この光景。
寝ぼけていた琢磨は休日に一番見たくない顔を確認して、完全に覚醒した。
「東京メトロ日比谷線、八丁堀駅から徒歩5分…霞が関から1駅しかない所に6畳1Kユニットバスで家賃5万1千円か…よくこんな物件見つけたよね」
合板のテーブルの前に正座した悟は、感情の無さそうな目で銀縁眼鏡ごしに琢磨の部屋をじろじろ眺めた。
「前住んでいた先輩が結婚して官舎に引っ越したんで紹介してもらったんですよ。あ、ちゃんと不動産屋通しましたよ。まあ公務員だからスムーズに契約できましたけどね」
大急ぎで部屋を片付けて悟を通した琢磨は扇風機を止めて、28度設定でクーラーのリモコンを入れた。
「不動産屋通した方が後々トラブル無くて済むからね。うん、20代半ばの一般青年の部屋だ。適度にとっ散らかっている。本棚には、
司馬遼太郎、山田風太郎、子母澤完…時代劇小説が好きだね。忍者の子孫だからか?へぇー、古事記関係の本も結構ある」
「勝沼さん、初訪問の部屋で人の本棚まさぐらないで下さい」
台所でペットボトルのお茶「右衛門之介(勝沼酒造)」をグラスに注ぎながら、琢磨が悟を叱った。
まったく、育ちがいいんだかどーだか!
「あ、失敬。興味ある本を見たらつい…見境が無くなる(しれっ)」
悟はすでに文庫本を右手に3冊持っている。悟の邪気の無い顔に琢磨は毒気を抜かれた。
「それに本棚の『謎のサルタヒコ』『鹿男おをによし』の裏には、お色気系のDVDが6本隠してあった。君は胸の大きい女性が好みのようだ。おそらく、ホワイトのきららさんには初対面で一目ぼれ…」
「勝沼さん、本ならいくらでも貸しますから!もう見ないで!」
なに?この失礼プロファイラーは!
琢磨は恥ずかしくて無性に泣きたくなった。
わざと乱暴にどん!と琢磨は冷茶の入ったグラスをテーブルに置いた。
「いいよ、本棚にある本はぜんぶ、自宅の離れの図書館にある」
「勝沼家は私設の図書館持ってんだ…蔵書何冊ですか?」
「ざっと3万冊」
市立の図書館並みの蔵書数っ!こいつ、興味本位で人の本棚チェックしたな。
昼日中から、琢磨は無性に腹が立ってきた。
「あ、うちの右衛門之介。買ってくれてありがとう」
一口飲んで、悟は緑茶の商品名を当てた。
「す、すげえ!」
「伊達に飲料メーカーの息子はやってない。今度日本茶ソムリエの資格でも取ろうかなー」
必要もなく眼鏡をずり上げるのは悟の照れ隠しかもしれない、と琢磨は思った。
「…で、うちに何の用事ですか?エロDVDのチェックではないでしょう」
「まさかロンハーではあるまいし。昨夜のうちのバーでの事だ。琢磨君、何か、言いたそうな顔してたからね。でも七城先生がらみだから、言えなかった。そうでしょう?」
「まったくその通りです。なんだ、気づいてたんですか…」
悟は子供っぽくうん、とうなづいてから、急に寛いで正座の足をあぐらに変えた。持参したコンビニ袋をテーブルに置くと、冷えたビール缶と、ポテトチップスを中心とした酒のツマミを取り出し始めた。
「ここから話が長くなりそうだ。休日だから一杯やらないかい?」
「うわぁお、エビス!」
ぷしゅっ。ごくごくごくごく…ぷはぁーっ。
「かーっ、うまいっ!」
「この一杯の為に生きてるーっ!!」
二人の若者、イエローとブルーは、エビスの缶ビールを一気に半分ほど飲んでから、大きく息を付いた。
「嗚呼、やっぱりビールだけは他社の方がうまいんだよねー」
「勝沼酒造ビール部門は業界3位ですもんね~。CMにハリウッドスター使うだけじゃなくて企業努力してくださいよ~」
「してるさ、味の研究ならなんぼでも」
悟がむっとした顔をしてるのが琢磨にはなんだかおかしかった。
「宿屋の仕事、隆文さんとオッチーさんに押しつけてきたんでしょ?社長はいい身分ですよね」
「社長も休暇が無いと、壊れてしまうよ。あの2人には労働基準法に則した休暇はあげています。勝沼家の家訓『法律は律儀なくらい守れ』」
「出た!『勝沼家家訓』っ!わははは、一体何条あるんですか?」
「まあ、作中で十幾つかは言うつもりだが…会社が法律破ったら、来るのは国税局か検察庁だ。『勝沼』がそれやらかしたら、この国の株価に大きく影響する」
「なんか、笑えない話になってきた…新興のベンチャー企業とか、インサイダーとか粉飾決済やらかして、きれいな段ボール箱抱えたお役人さんの手入れ受けてますもんね」
「『きれいな段ボール』は、経営者にとって恐怖のアイテムだよ。琢磨くん」
残りの半分のビールを一気に飲み干した悟は、缶に印刷された恵比寿様のイラストを、ぬっと琢磨に突き付けて見せた。
琢磨のすぐ目の前に、金色に輝く、笑う恵比寿さま。片方の手には、鯛を持っている。
「僕は先月の墨田区の事件で、水神、カヤナルミこと投網子(とあこ)さんと契約してしまった。調べてみたが、カヤナルミは日本神話の神の1柱で、なんと、皇室の守護神でもある」
切れ長の目をした小人と、水の塊で出来た巨大な龍神。どちらも、カヤナルミの変身形態である。信じられないけど、信じるしかない。
だって彼らは、「神」の御業を見てしまったのだから。
「昨夜の七城先生と屋久杉の会話といい、僕たちは、どうやら『どえらい事』に巻き込まれてしまったらしい。それだけは確かだ」
「…七城先生が、大ポカをやらかしたようです」琢磨はようやく本題に入った。
「大ポカって?」
「僕たちが最近世間を騒がせているヒーロー戦隊…ネットの掲示板とかでえらい騒ぎになってるでしょ?霞が関に5色のヒーローキター( ;∀;)とかってさ」
「まあ、いろいろ東京各地で『やらかした』からねー」
空のビール缶をテーブルに置いて、悟がくすくす笑った。
「でも戦う時は、スーツ着てる訳だから、顔バレはしてないし、誰にも口外してない。カメラの画像にも映らないから、透明人間が戦ってるようなもんです。従って証拠が無いから目撃証言だけ。『ホットな都市伝説』と化してはいますがね」
琢磨はAppleのノートパソコンを開き、ブラウザを開いて都市伝説、ヒーロー、の単語で検索していくつかの都市伝説サイトを悟に見せた。
「きみが店のカウンターでノーパソいじっているのはネットサーフィンして遊んでいるわけじゃなくて…」
「そう、僕たちの正体の個人情報が、他人に漏れてないかどうかチェックしているんです。心霊サイトやスピリチュアルな人のブログ、都市伝説のサイト逐一監視してね。全く、『電波さん』関係のサイト覗くの疲れますよー」
「『電波さん』ってネットスラングだよね。『どっかから電波受けてる人』って意味だ。まあ七城先生は本物の超能力者(テレパス)だけど…はっきり言って、僕はネットは嫌いだ。掲示板系の書き込み見るだけで気分が悪くなる。
まるで悪意のがらくたを見ているようだ。ネットは必要な情報だけで十分」
きっぱりと、悟は言い切った。
勝沼さんって、屈折しているように見えて、実はまっすぐな人だなーと琢磨は思った。やっぱり育ちがいいからだろうか…
「まあそうですね、感情剥き出しにした、顔の見えない、言葉の切れ端が無造作に積まれた、悪意のがらくた…
でもたまには、下調べに裏打ちされた、はっとする意見もたまにあったりする。それもネットの側面でもあります。このみっちー@くんのサイトのように、ね」
管理人みっちー@くんのブログ「日本の端っこの、不思議な話」の「カッパじゃないよ、グリーンだよ」の記事を読んで、悟は驚愕した。
「こ、これは、まさに名前こそは出さないけれど『七城米グリーン』の特徴じゃないかっ!七城先生、まさか、変身するとこ見られたのかっ!?」
「多分、じゃなくて、100パーそうでしょうよ。問題は、この管理人、みっちー@くんが、中学生の少年だって事です。やりたかないけど、ハッキングして正体突き止めましたよ」
酔いが回った琢磨は床に寝転がって天井を見つめ、初めて苦い顔をした。
「これは空海さんに彼の記憶消してもらって、記事も削除してもらわなきゃ、だよな…。あちゃー、空海さんと七城先生離して僕、余計なことしちゃったよ…」
「ほんとうに面倒なことですよ。子供に手をかけるなんて…でも、他の記事は民俗学的な事よく調べて書いてんですよね。まるで小さな学者さんだ」
面倒なことになったなー、とつぶやきながら、悟も床に寝っ転がった。
「今更だけど、空海さんにお願いしなきゃな~…参考までに聞くけど、みっちー@くんの素性は何だい?」
怒る寸前の真剣な顔で琢磨は言った。
「近藤光彦。七城先生のクラスの教え子です」