
甘い静かな時間 35
レストランに行くと、としふみさんがいた。
「いらっしゃいませ、お待ちしてました」
と、席に案内してくれた。
そして、きらくんにささやくように
「えらくごゆっくりで」
といって、ニヤっと笑った。
その言葉は、私にも聞こえてたから、すごく恥ずかしくなって、顔が赤くなるのが分かった。
それに気づいたきらくんが
「ほんとお前って!」
と言って、軽くとしふみさんのお腹にパンチした。
「ごめんごめん、ついからかいたくなった」
といって、席を離れていった。
「あやさん、気にしなくていいよ、あんなやつ」
と、優しく言ってくれたが、恥ずかしさは消せないものだ。
としふみさんのレストランはいつも美味しい。
隣との席の感覚もかなり空いているから、気にならなくていい。
それに、わたしたちのためにと、海が見える席を用意してくれていた。
お客さんが多いこのレストランからしたら、やはり早く来てほしかっただろうな
とふと思った。
ただ顔を赤くしてあせる自分が大人げなく嫌になった。
遅くなったこと、ちゃんとあやまればよかった
と。
窓からみる海はとっても暗い。
でもこのレストランは、テラス席があり、そこには明かりのついたスタンドが置いてあって、とっても幻想的だ。
わたしはその明かりを見ながら
こうしてこんな素敵な場所できらくんと過ごしているなんて、夢のようだな
とうっとりしていた。
すると、かすかに私を呼ぶ声。
そもそもかすかではなく、私が中々気づかなかっただけのようだった。
「あやさーん」
きらくんの声だった。
「あ、ごめんなさい」
というと、あの小悪魔のような顔になっていたから、嫌な予感がした。
その予感は的中していて
「あやさん、色っぽい顔になってたよ」
やっぱりそうきたか
と私は思いながら
「テラスの明かりと海がきれくてね・・・みとれてたのよ」
と、目をそらしながら答えた。
考えてみればほんとのことなのに、なぜあたふたしたんだろ
「へーその割になんでそんなにあせるの?」
と、ニヤっとした顔でついてくる。
完全に悪魔になってる。
「ほんとよ、こんな素敵な夜に、きらくんと過ごせるなんてって、思ってたのよ」
というと
「そうなんだ・・ふーん・・食事の後のこと・・とか?」
と、完全に悪魔になったきらくんが食事をしながら、勝ち誇ったように言ってきた。
自分でも血が逆流するほど顔が赤くなっているのが分かる
冷静を装いながら、食事をする。
「あやさん、顔赤い、かわいい」
もうギブアップだと思った私は
「きらくんには勝てないわね
そうね、食事の後の時間を考えると、ほんとにどきどきして心臓が口からでそうよ」
というと、びっくりした顔で私の方をガン見してきた。
不思議に思った私は
「どうしたの?」
というと
「いつになく大胆なあやさんにびっくりした、心臓が出そうなくらいのこと考えてたんだって」
と笑いながら言ってきた。
余計に恥ずかしくなった私は
「もう、ほんといじわる」
といいながら、必死に食事をした。
でも、きらくんと、何気ないこのホッとする感覚を過ごすことなんて、できないと思っていた
ずっと続けばいいのに・・・・
時々心のどこかに影が出てきてしまう扉の鍵を、必死に閉めている私だった
to be continued・・・
いいなと思ったら応援しよう!
