⑧移住への決意
僕たちは息を呑んだ。
見えている景色に心が静かに湧き立っていた。
ここの場所が素晴らしいのは言葉にしなくても解った。
そこは僕たちの描いていたこれから始まる生活への憧れの原風景のような場所だった。
しばらくして、凄い場所だねと妻が言った。
僕は無言でいた。
頭の中では〝こんな素晴らしい場所は誰かの場所で僕たちが住むことは無理かもしれない〟と思っていた。
僕たちは友人との待ち合わせ場所に早く着いてしまった。
その時は、直感を大切している妻があっちの方向へ行きたいと言ったので僕は待ち合わせの時間が気になりつつも妻の言うように車を走らせた。
車を気持ちの良い方向に走らせていた。気持ちの良い方向とは、フィーリングで車を走らせることで、ほとんどは緑が多そうなところや、人工物が無さそうな方角に進むことが常だった。
僕たちの行き先は舗装道路から砂利道へと変わって、ゆっくりと登り道になり、山の景色に変わっていた。景色が開けてきた。
少し経つと道の両側は牧草地になっていて、景色が開けてきて、その中を突っ切るように車が走り、なんとも気持ちが良かった。
秋のよく晴れた日だった。
電気が身体に走るような衝撃的な出逢いというよりも、なにか優しさと光に包まれたような出逢いだった。
僕たちは自分たちの土地に出逢ったのだ。
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