剣道。5つの攻撃。
小学生〜中学生(初心者)向け、剣道をやったことがない保護者の方に向けて、少しまとめてみよう。
剣道には、たくさんの攻め方・技があるけれども、小学生〜中学生(初心者)が、考え方を整理するだけで、上達する内容を整理してみたいと思う。
キーワードは5つ。
・出鼻
・払い
・返し
・抜き
・引き
この5つのジャンルの攻め方に、小手、面、胴の攻撃対象があるので、
5技×3ヶ所=15パターン
となります。
お子さんの剣道の試合を見ていて、背の高い相手に一方的に打ち込まれたりして、竹刀を盾にして防御一辺倒。
そんな試合のあとに「なんで攻めないんだ!振らないと当たらないだろう!」なんて言ってしまいたくなる親御さんも多いかもしれない。
でも、ダサい親になっていますので、今日でやめましょう。
今日以降は、「相手の得意技は???だったね。相手が上手だったね!相性のいい攻め方はどんな攻め方だと思う?じゃあ、一緒に練習してみよっか!」
と、言える親になりましょう。
剣道は、じゃんけんです。
3種類の小手・面・胴のじゃんけんではなくて、「15種類のじゃんけん」です。
(中学2年生、高校・社会人となっていくと、さらに技の組み合わせが複雑になっていきます。)
技のジャンルと代表的な技は下記の通り。
1.出鼻は、「出鼻をくじく」という言葉もあるように、相手の打ち始めの隙を狙う打ち方。
1-1.出鼻小手
面を打ち込もうとする相手の手首が上に動く瞬間を狙う。
背の高い相手に対して、背の低い子の得意な動きになりやすい。
これ、一方的に小手を打ち始めるわけではないところが特徴。相手の動きの初動の隙に打ち込む練習をすることで、飛び込みながら一本を取る技になります。
1-2.出鼻面
相手が面を打とうと振りかぶった動きに対して、突くように面を繰り出す。
右斜め前にステップを踏み込み、残像を残すようにして「そこに私は居ないのだよ」とニヒルに微笑みながら、向かって右側の頭(左面)を狙うのがコツ。
面布団を相手が叩いてしまうような動きができれば、動きは完璧。
ただし、相打ちのようになりやすいので、試合では、一本になりにくい(審判の気持ち的に取り消しになりやすい)ため、引き技などの連続攻撃を意識した練習をすると、相手の隙をつきやすい。
1-3.出鼻胴
面を打ってくる相手の動きに対して、潜り込むように飛び込んで胴を狙う。
相手の竹刀と触れないパターン。
距離が詰めにくいので、払い胴や返し胴の下位互換というイメージ。
2.払いは、相手の竹刀を一度軽く弾いて、相手が竹刀を戻そうとする動きを活用して、隙をつくる技。払う方向と、力加減、技を出すタイミングが重要。自分から仕掛けるパターンの攻撃。
竹刀の切先の攻防に、意味を持たせることが最も重要。低年齢・低学年であればあるほど、意味を持たずに切先を動かす傾向にあるため、切先の動きを囮(おとり)に使う概念を知ることで、自分のペースで試合をつくることができるようになります。
おじいちゃんのようなベテランが、じっと動かずにいる理由は、切先の動きが、一瞬で命取りになることを知っているからです。そのくらい、竹刀の切先の攻防は重要なエッセンスです。
2-1.払い小手
向かって左(←)の方向に一度竹刀を払う。
相手は逆の方向(→)に竹刀を戻そうとするので、小手があきます。
払い面を打つフリをして、小手に飛び込むような技の流れ(組み合わせ)が、エッセンスになります。
2-2.払い胴
斜め下に払い、面を打つフリをして、相手に面を防御させるのが、胴に隙をつくるコツ。
ダミーとして、相手に防御させることを目的に払い面を打つ余裕も必要。
3.返し。醤油に砂糖・みりん・酒などを加えて煮返した調味料。
相手の出汁(出す技)を、一度斜めに受けて、自分の味付けを繰り出してみましょう。
3-1.面返し胴
相手が面の打突に来た竹刀を、自分の竹刀で斜めに受け流して、あいた胴に打ち込む。
竹刀の先端から中ほどまでのところで流しながら、その場で回転するように胴を抜き去っていく動きになりやすい。
打った後、回転して相手に切先を向け、残心の姿勢をとるのが一本になりやすいコツ。
胴を当てて回っただけでは一本にならないという審判も多い。
この「残心」が、素人目線と剣道有段者のもっとも違う見え方。保護者の方は、出来るだけ早く「残心」の感覚・価値観を身につけましょう。
練習では、残心から追いかけていって面を打つような切れない攻めをするのも良いアイデアです。
3-2.小手返し面
相手の小手の打突を、竹刀の中ほどからツバで受け流して、前のめりになった相手の面を打つ。
前足の踏み込みを浅めにすることで、相手の迫る勢いを、巧く使う。
竹刀の根元で打つ距離感になってしまうので注意。
手首を内側に絞って、竹刀の影に小手を隠すと、小学生では当たりにくいので、有利。
3-3.面返し面
相手の面の打突を、竹刀の先端から中ほどの遠い距離で斜めに受け流して、相手の隙ができたところから面を打つ。斜め後ろに「引き面」のような動きになることもある。
前に出る、横に逃がす、斜め後ろを使って詰めすぎた距離をうまく離す。
バリエーションは豊かだが、竹刀で滑らすように、遠い間合いで受け流すのがポイント。
防御姿勢にならないように、前で処理する意識が重要。
4.抜き技
抜き技は、相手の打突(竹刀)に触れずに避けて、相手の姿勢を崩して隙をつくる技。
場合によってはおびき出す姿勢をつくるところから、しかけていく。
小学生では、次のような動きと技が試合で使えるだろう。
4-1.小手抜き面
相手の小手の打突を誘い出し、後ろにステップを踏みながら、入れ違いになるように振りかぶり小手を避けつつ、前のめりになった相手のガラ空きになった面を仕留める。
4-1-1.誘い出す
竹刀の切先を左右に揺らすようにして、相手に自分の小手を見せる。隙があるように見せることで相手の小手の打突を誘い出す。
小学生のうちは、見えたものを素直に打ちにくる相手が多いため、とても有効。
4-1-2.振りかぶる
相手の小手の打突を、振りかぶりながら避ける。
相手の打突の距離感を見誤ると、ガラ空きな小手にクリティカルヒットを喰らう危険があるが、後ろに下がりながら、振りかぶるタイミングを掴めば、得意技になる子も多いだろう。
4-1-3.打突の距離感
相手が踏み込んで打ち込む攻撃を避けることになる。
引き面のような後ろへ打ちながら下がる動きを取り入れることができれば、切先から中結までの物打ちの範囲に捉えることができる。
小学生の頃。筆者の得意技でした。
4-1-4.残心
引き面のような後ろへ打ちながら下がる場合にも、しっかりと残心の姿勢をつくる。
物打ちで捉えても、残心がないと一本にならない。残心がうまい選手は、審判が一本の旗をあげやすくなるので、序盤で「残心が上手い選手の印象をつくる」ことがとても重要。
5.引き技。
つば迫り合い。を自分の勝ちパターンにする攻撃。小学生はどうしても、つば迫り合いになりやすい。
高校、社会人は、逆に、つば迫り合いを互いに消し合う、「自然と離れるムーブ」が身についているので、技としての賞味期限は短め。
けれど、ボクシング的なクリンチをしてくる試合は、退屈なもの。
自ら技を出しながら離れる動きを持つことで、試合機会の多いつば迫り合いを制することができる。
5-1.引き面
つば迫り合いから、面をうつ。
向かって右側の面を打ったり、左側の面を打ったり、変化をつけることで、引き胴のチャンスを作りやすくなる。
5-2.引き小手
つば迫り合いから、小手をうつ。
引き面を意識させ、面を守る姿勢を取らせることで、小手が入りやすくなる。
的が小さい分、離れる距離を掴むことが大切。
5-3.引き胴
つば迫り合いから、胴をうつ。
つば迫り合いの時に、向かって右側の面金(めんがね)を意識させるように竹刀でノックし、一瞬引き面を出すフェイクを入れてから、胴を狙う。
腕を中途半端に上げさせる工夫をすることが重要。
5-4.引き技からの返し技
引き技で離れる。追いかけてくる相手の攻撃を予測して、残心のあと、返し技を仕掛ける。
引き技で一本を取るのではなく、素早い引き技で攻めながら距離を取り直しつつ、返すパターンをつくる。
相手が追撃として、急いで追いかけて、面を打ってくるパターン。
相手が追撃として、小手を打ってくるパターンの返し技を決めておいて、練習に取り入れると良い。
試合形式の広さを体に覚えさせることで、場外ペナルティを避けられるように工夫しよう。
返し技が得意な子に、さらに勝ちパターンを増やす工夫と言える。
小学生の場合はおびき出すことができれば、多くの場合、同じように攻めてくる勝ちパターン作ることができる。
まとめ
剣道は、心身の鍛錬なので、勝ち負けではない。
が、試合形式でやる以上、勝つことも目標になってくる。
剣道には勝てる試合の作り方がある。
自分のペースに相手をはめることだ。
これは、気迫で圧倒することや、竹刀の持ち方を工夫することで、相手の間合いを外す(距離感を惑わせる)ことなど、さまざまな攻め方ができる。
闇雲に竹刀を振ることは、容易く相手のペースにすることになる。防御一辺倒なども、もはや相手ペースに落ちた例だろう。
困って安易に面を打ち出せば、相手の得意な、小手や胴を打ち抜かれることになる。
基礎に加えて、得意な勝ちパターンを作る・仕掛ける・さそう、ができるようになれば、相手の体格・得意技に対して、対抗できる技を用意できるだろう。
日々の鍛錬の結果、どのような相手でも怖けずに立ち向かえるようになる。
剣道は、切先で間をつくる。
間ができるスポーツは、その間で頭を使うのだ。
野球。サインプレー。球種。
アメフト。攻め方、守り方。パターンの選択。
バレーボール。サインプレーの連携の選択。
剣道は、切先でつくる間合いで、相手を知り、己を知る鍛錬だ。
頭の使い方の方向性として、上記、技と間合いを整理した考え方を知って、頭を使えるように鍛錬して欲しい。
当事者であるこどもたち(選手)はもちろん、指導者や相談者としての、大人も保護者も、頭の使い方を知って取り組み方を鍛錬して欲しい。
竹刀を振るだけが剣道ではないのだ。
考えることも剣道。
考え導くことも、剣道なのだ。
さぁ、あなたの得意な攻撃はどれ?
保護者のあなたにとって、見てて心地よい技はどれ?
ね?教えたくなったでしょ?