高校ラグビー:コロナと格差拡大
はじめに
高校ラグビーに限らず、スポーツの世界に格差があるのは当たり前といえるかもしれません。
高校ラグビーも例外ではなく、コロナ禍前から格差はありました。
練習環境、指導者、チームメート、OBの支援など様々な要因により格差は生まれます。
一部の都道府県では一校が数十年連続で花園に出場するという状況が起きています。
有望な中学生が花園出場が確実視される県外の高校へと進学する事例も多発しています。
一方15人揃えるので精一杯、揃えられても15対15の試合形式で練習をするには至らないという高校が大半なのもまた事実です。
コロナが格差を助長
ある高校の指導者はコロナ禍が原因で中堅校が少なくなったと嘆いていました。
つまり強豪校と弱小校の二極化が進んだということです。
その原因を考えてみました。
活動の制限(対外試合、合宿など)
公立高校の場合、緊急事態宣言やまん延防止等措置の発令中はもちろん、それ以外の時でも教育委員会から部活動に関する指針が示され、それに従うことが求められます。
一方私立高校は教育委員会の管轄外のため、各校に裁量権が与えられています。
たとえば部内でコロナ陽性者が出ると何日間は活動停止と指針で定められます。
部内で陽性者がいなくても、クラスで陽性者が出て学級閉鎖や臨時休校といった措置が取られた場合、本人が健康でも部活には参加できません。
こうしてチームの強化がストップしてしまいます。
たとえ自分のチームに陽性者がいなくても、対戦相手に陽性者がいれば試合はできません。
また対外試合や合宿を自由に行うことができない時期がありました。
公立高校は教育委員会の指針により対外活動を制限され、ここでも強豪校(多くは私立)と中堅校、弱小校の差は開くばかりです。
象徴的だったのは21年の夏合宿です。
私立の強豪校はみな菅平合宿などを行う中、公立高校の多くは教育委員会の指針により合宿を行うことができませんでした。
初心者が多いチームは県外のチームとの試合や合宿を通して経験を積み、秋の花園予選へチームを仕上げていくため、その機会を奪われることは致命的でした。
おわりに
このまま高校ラグビーにおける格差の拡大が続けば、ラグビーが一握りのエリート強豪校のものになってしまいかねません。
コロナ前から強豪校の選手は大半が小中学生の頃からラグビーに親しんできました。
一方で、未経験者が多くても強豪校打倒を目指して努力を続けるチームもありました。
高校からラグビーを始めても花園などレベルの高い舞台で戦うことができる可能性があるというのは魅力的でありました。
しかし今その魅力が失われつつあります。
誰にでも門戸を広く開放し、多様性を確保するということはラグビー界にとって極めて重要ではないでしょうか。