今週の「ヤバいVR」10選【Vol.2】~'20/5/17
今週もヤバいVRを10個まとめます。期間は気力次第です。
お急ぎの方は、ぜひ目次までスクロールしてご覧ください。
ちなみにVol.1はこちらから。追記もしていきます。
緊急事態宣言も一部で解除され、これからの「新しい生活様式」が模索されています。他方で「これまでと変わらない」とする見方もあります。
私自身も短期的には従来と変わらないと考えています。しかしながら、私達を取り巻く環境そのものは大きく変わりました。これまでの生活を続けようとする中で環境との齟齬が生じて、あるいは知らぬ間に適応して私たちの生活は変わっていくことでしょう。
中長期的な変化を促進したかどうかは後に歴史が語ることを期待して、私たちも自らが貢献できるところを模索していきます。
1.臨場感倍増!? ハムスターボール型VRマシンが登場
ニュージーランドの企業・Eight360が搭乗型のモーションシミュレーター『NOVA』を発表しました。目を見張るのはその形状です。ユーザーは回転する人間サイズのハムスターボールに乗り込んで、VR映像だけに留まらない、衝撃や平衡感覚を体験することができます。
VRゲームに限らず、軍事や研修での利用用途も模索中とのこと。
デモの乗り方を見るに、ハムスターボールというよりは、フォートナイトの乗り物「ザ・ボーラー」に近い印象です。『機動戦士ガンダム 戦場の絆』やロデオマシーンのように、ゲームセンターや体験型アミューズメント施設で体験できる日も近いかもしれません。
関連するプロダクトとしてVirtusphereなどがあります。こちらの方が様式としてはハムスターボールに近い形。また他にも全方向に歩けるトレッドミルなどを開発している企業もあります。
映画『レディ・プレイヤー1(原題: Ready Player One)』に代表されるような全身没入型のVR体験は多くの人が夢見るところですが、初めは軍事や宇宙開発など、非日常的なシチュエーションから活用されていくことでしょう。アプローチの仕方はどれもユニークなので、この機会にぜひご覧ください。
2.静岡大とヤマハ発、音と振動でVR酔いを軽減と発表
シミュレーターに関連してもうひとつ。
音と振動を動機させたバイクシミュレーターによってVRの「映像酔い」を軽減した実証実験に関する論文です。静岡大学情報学部の板口典弘助教と宮崎真教授の研究室、ヤマハ発動機の共同研究によって明らかにされました。
なお、実際の論文にはこちらからアクセスできます。
これからVRの利活用は広がっていくと考えられますが、まだまだ実際の感覚とは乖離が大きいことも事実です。
HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を被るような大げさなシチュエーションではなくとも、レーシングゲームを遊んでいるときに、思わずハンドルに合わせて体を反らせた経験があるかもしれません。
個人的にも「VR酔い」には非常に悩まされているので、今回の実験結果は非常に嬉しいニュースでした。
他方、このような研究や模倣の技術がいくら進んでも、それらは究極的に本物の感覚とは別物です。
そのとき私たちは改めて「バーチャルリアリティとはリアル(現実)なのか」、「現実とはなにか」考える必要があるかもしれません。
その問題に際して、オーストラリアの哲学者・チャーマーズが論じた『The Virtual and the Real』が公開されています。およそ350ページにわたる内容で、読者にも相応の熱量が求められますが、非常に参考になる主張がまとめられています。『DeepL翻訳』なども活用してぜひご覧ください。
※この『The Virtual and the Real』についても別でnoteでまとめます。
フォローして気長にお待ちいただければ幸いです。
3.nreal、日本法人を設立
スマートMRグラス「NrealLight」を開発する中国企業・Nreal Ltd.が、日本法人「日本Nreal 株式会社」を設立しました。
「NrealLight」はその軽さやデザインでも評価が高いスマートグラス。日本でも既にKDDIと連携しており、渋谷などで実際に「NrealLight」を体験することもできます。
また、Nreal Ltd.は「NrealLight Developer Kit」をオンラインで国内発売することを発表。開発者向けサイトには現在(2020年5月17日(Sun))、「Back soon with a better and more augmeted experience on May 18th!」との記載が表示され、近日中に大きな動きがあることが期待されます。
4.Apple、VR配信サービス「NextVR」を買収
Appleは、HMDを装着してスポーツリーグなどを観戦できるVR配信サービスを展開する「NextVR」の買収を明らかにしました。先月この買収について9to5macが報じ、AppleはBloombergの取材に際してそれを認めた形です。
買収の目的はストリーミング配信の技術やスポーツリーグと長年築いた信頼関係とも噂されています。
5.Matterport、iPhoneでの3Dスキャンに対応
米国の企業・MatterportはiPhone用の3Dスキャンアプリ「Matterport for iPhone」を発表しました。専用カメラなしにスキャンが可能です。
Matterportはこれまで3D専用カメラなどを手掛けてきた企業で、その信頼性は群を抜いています。
今週の「ヤバいVR」10選【Vol.1】でお伝えした「かはくVR」でもMatterportが使われていました。
これまでにもDisplay.landなどの3Dスキャンアプリが登場していますが、今後のさらなる品質向上や利用用途が期待されます。
6.VR空間プラットフォーム「comony」β版をリリース
ラストマイルワークス株式会社はVR空間共有プラットフォーム「comony」のβ版をリリースしました。
法人向けに従来より開発期間やコストを抑えたVR開発も行うようです。
これまでも国内外の企業向けにCGやVR制作サービスを展開してきたようなので、高い品質や海外展開に期待が寄せられます。
7.VR SNS"仮想世界ambr"、5月25日にβ開始
ソーシャルVRサービスを開発する株式会社ambrも2020年5月25日(Mon.)からオープンアクセス(β)を開始すると発表しました。
開始に先立って、事前登録も開始されています。
続々と発表されるVRプラットフォームですが、それぞれがどのような特色を出していくかが楽しみです。
8.VRプラットフォーム「Spatial」が無償化
米国の企業・Spatialは、これまで有償で提供していたエンタープライズ版のVRプラットフォームを無償化しました。
あらゆるデバイスからのアクセスやリンク1つでの共有など、Mozillaの「Hubs Cloud」にも共通する便利な機能が見受けられます。
ちなみにSpatial.chatとは別物なので、ご注意を。
9.渋谷区公認、「バーチャル渋谷」が5月19日オープン
KDDIなどからなる「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」は、渋谷区公認の「バーチャル渋谷」を2020年5月19日(Tue.)からオープンすると発表しました。
今週の「ヤバいVR」10選【Vol.1】にも掲載した「#渋谷攻殻」の一環として、オープニングイベント「#渋谷攻殻NIGHT by au 5G」がclusterにて2020年5月19日(Tue.)午後7時から開催されます。
また、「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」に参画するSTYLYも「バーチャル渋谷」の配信プラットフォームに決まっています。STYLYでの企画第1弾は後日公開予定とのこと。
10.SONY、VR向けに表情トラッキングの特許を取得
VR空間でアバターの表情を操作するためには、ほとんどの場合、コントローラーから予め割り振った表情を入力するか、あとから編集で表情を差し替えます。それを解消するために、リアルタイムでユーザーの表情を取り込む技術はいくつか開発されてきました。
今回SONYが取得した特許も同様の目的と考えられます。
ところで、ソニーコンピュータサイエンス研究所副所長を務める暦本純一教授(東京大学大学院情報学環)が「Behind-the-Mask」と題した論文を発表しています。HMDをつけている最中、赤外線カメラを用いて顔の三次元モデルに口元と目の表情を反映するシステムです。
あくまで憶測ですが、この研究内容が今回の特許取得に繋がっているとすれば、その研究成果だけではなく、そのスピード感にも驚かされます。
他にも、SONYは先日プロトタイプのVRコントローラーを公開して話題になりました。いずれもPSVR2との関連が噂されています。
番外編:Epic Games、Unreal Engine 5を正式発表
SONYといえば注目されるのは、新型ゲーム機「PlayStation 5」です。
Epic Gamesは、同社の開発するゲームエンジン「Unreal Engine 5」を正式発表し、PS5で動作させたリアルタイムデモ映像を公開しました。
UE5はもちろん、PS5の可能性も感じさせてくれる壮大な映像美です。
これまでも多くのゲーム作品で利用されてきたUEですが、商用利用の場合も粗収入が100ドルまでの場合は無料とのこと。さらに多くの開発者が恩恵を受けることになるでしょう。当然ながらVRでの活用も期待されます。
現在VR開発に多く用いられているゲームエンジンを提供するUnityも、先日Finger Food Advanced Technology Groupを買収。同社は企業向けのVR/AR制作などを手がけてきました。これによってゲーム開発の枠を越えて企業のソリューション実績や新しい利用用途を見出すことが期待されます。
おわりに
まだまだ敷居が高く、アングラな印象も強いバーチャルの世界。
しかしながら、スマートフォンからでも楽しめるコンテンツが増えたり、開発コストが下がったりすることで、より多くの人が手にとれるものに変わっていけば何よりです。SNSや体験の新しい形が次々に立ち上がり、その先に新しい日常が待っていると信じています。
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