あなたが知らないJIDの5つのこと
今年、2022年に『The Forever Story』のリリースが期待されるDreamville所属のラッパー、JID。彼は近年少しずつ評価を伸ばしており、シーンの中での存在感も大きくなってきました。今回はそんな彼の次作をより楽しむための予習復習として、私が意外と皆さんに知られていないと感じているJIDの豆知識を5つ紹介したいと思います。
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1, 実はDreamvilleの中で一番人気
JIDが所属しているDreamville Recordsと言えば、当レーベルの設立者のJ. ColeやBas、Cozz、Ari Lennox、Omen、Lute、Earthgangなど、現在のヒップホップシーンに欠かせない名だたるラッパーが集ったレーベルなのですが、なんとJIDはその中でもSpotifyの月間リスナー数において一番の数字を持っているんですね。実に、あのJ. Coleさえ上回っています。個人的な肌感では、JIDはチームのナンバーワンオプションというよりも、2番手3番手プレイヤーなイメージだったので、この数字には少し驚きました。皆さんの中では彼は何番手だと思っていましたか。流石にJ. Coleは超えていないだろうと思っていた人は多いのではないでしょうか。
Spotify 月間リスナー数(2022年2月7日段階)
JID 31,770,869(1)
J. Cole 27,564,469(2)
Bas 5,685,520(3)
Cozz 1,069,218(7)
Ari Lennox 4,873796(4)
Omen 551,869(8)
Lute 2,355,093(6)
Earthgang 4,387,807(5)
2, 観客が0人だったライブがある
2016年にアトランタのイーストアトランタビレッジにて、JIDがヘッドライナーとしてブッキングされたライブコンサートが開催されました。その時、彼は同じアトランタのアーティスト、6lackや現レーベルメイトであるEarthgangと共に会場入りしたのですが、なんと会場着いてみるとそこには誰もいなかったそう。誰もチケットを買っていなかったとされています。JIDは今となっては、アメリカ合衆国最大の音楽フェスティバルの1つであるCoachellaに出演したり、来日公演が開催されたりするなど、ワールドワイドな動きや大規模な集客を見込めるようなアーティストになっていますが、その背景にはいろんな苦労があったことが想像できます。
3, 小さな部屋の『The Never Story』と大きなアリーナの『DiCaprio 2』
『The Never Story』は、もしかすると当時のライブオファーの少なさもあってなのかもしれませんが、基本的にアトランタの自宅で制作されました。反対に『DiCaprio 2』の制作の際には、JIDの活動もある程度軌道に乗っており、ツアーで世界中を回っているタイミングだったので、その道中で作られたそうです。そのため、『DiCaprio 2』では音作りの点において、より広い空間での音の響き方や、ステージでのパフォーマンス映えなどが意識されたライブアルバムのような仕上がりに。そして『The Never Story』はいろんな意味で内省的な、正にスタジオアルバムのような仕上がりになっているそうです。この点を意識して、同2作を聴き直してみるのも面白そうですね。アーティストの楽曲制作中の手つきやライブパフォーマンスを想像しながら行うリスニングは、また普段とは違った聴き応えがあって楽しいはずです。
4, 映画『ギルバート・グレイプ』との深い繋がり
ここまででも何度か言及していますが、JIDは自身のアルバムに「DiCaprio(ディカプリオ) 」の名をつけています。そして、何を隠そう彼は俳優、Leonardo DiCaprio(レオナルド・ディカプリオ)の熱狂的なファンであり、このアルバムタイトルにはそんな彼に対する強い愛が含まれています。JIDとLeonardo DiCaprioの出会いは、JIDが7、8歳の時です。彼は映画『ギルバートグレイプ』を観て、Leonardo DiCaprioの素晴らしい演技を目の当たりにし、一瞬にして彼に惚れてしまったそうです。上記でも少し触れたようにJIDには、自分のラップスキルや楽曲のクオリティに反して、世間からの評価があまり追いついていないと感じ、悔し涙を流した経験があります。そして、同じくLeonardoにも、その実力に反してオスカー(アカデミー賞)が獲れないなどの不運に見舞われた時期がありました。つまり、その彼の境遇やそこにある苦労に対して深く共感出来たことが、JIDのLeonardoに対する想いを強くした要因です。Leonardoは最終的には十分な評価を受けることとなります。ですのでもしかすると、JIDがこの憧れの大スターの名前をアルバムタイトルにしているのは、「世間の評価をひっくり返してやる」という意思表示かもしれません。もしくは、世間の評価がどうであれ、どういう内容の作品であれ、プレイヤーがJID/Leonardoである限り、そのクオリティは保証されているという証なのではないでしょうか。『DiCaprio 2』のアルバムカバーにも、オスカー像を模したトロフィーが描かれており、Leonardo DiCaprioへの徹底したリスペクトが見受けられます。
5, Mac Millerの助力
2018年9月7日、惜しくも薬物の過剰摂取によって亡くなってしまったアーティスト、Mac Millerですが、実はJIDにとって彼はかなり親しい友達であり、彼の音楽製作において重要な存在でもありました。実際に、『DiCaprio 2』では、収録されているほとんどの曲のミックスや、アレンジなどのポストプロダクションをMacが手掛けていたり、同年に彼が行う予定であった『Swimming Tour』では、JIDはオープニングアクトを任されていたりします。残念ながら、ツアーは彼の他界によってキャンセルとなってしまいましたが、『DiCaprio 2』の中には、彼の音楽性が血となり骨となり存在しています。実現出来なかった彼ら2人のツアーでの姿を想像しながらこのアルバムを聴くことで、またより違った音の景色が見えてくるのではないでしょうか。ちなみにJ. Coleも『DiCaprio 2』の制作にあたってストーリーテリングに関する助言をJIDにしていたそうです。
以上が意外と知られていないJIDに関する豆知識5つです。皆さんはどれくらい彼のことを知っていましたか。彼の過去や、楽曲制作に対する取り組み方を知ることで、より高い解像度で彼の作品を体感することができると思います。『The Forever Story』のリリースを楽しみに待ちましょう。きっと今年の彼は一味違うはずです。
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written by じょん
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