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「俺のペンからはアドレナリンが出てるんだ。」 Griselda Recordsの新人アーティスト、Rome Streetzに期待されること
Rome Streetz「俺のペンからはアドレナリンが出てるんだ。」
Griselda Recordsとの契約やDJ Muggsとのアルバム『Death & The Magician』、ANKHLEJOHNとのアルバム『Genesis 1:27』、Futurewaveとのアルバム『Razor's Edge』、そしてRansomとのアルバム『Coup De Grace』のリリースなど、今年2021年を確実に飛躍の年としているRome Streetz。ラップスタイルはヒップホップ誕生初期から脈々と受け継がれるブルックリンスタイルで、多彩な韻を操りながら組み立てられる彼のラップは、本人の言葉を借りるのであれば、正にマスターレベルです。そんな彼が、先日Complexのインタビューにて、楽曲制作の背景やニューヨークのラップシーンに対する考え、Westside Gunnとの関係性などについて語ってくれていました。今回はそちらを紹介しつつ、Rome Streetzのアーティスト像と将来性について少し考えていこうと思います。
Rome Streetzのラップの巧さがわかる動画
インタビュー by Complex
※このインタビューは『Coup De Grace』のリリースよりも前に公開されたものになります。
ー今年のあなたの活躍は目覚ましいものがあります。これまでに3つのプロジェクトをリリースし、さらにもう1つのプロジェクトをリリースしようとしています。2021年はあなたにとってどのような年でしたか?
Rome Streetz(以下R):実際すごく良い感じだよ。たくさんの素晴らしいことが自分に起こっている、本当にね。以前は、2019年が私のブレイクの年だと思っていた。『Noise Kandy 3』をリリースした年だしね、でも今年はそれ以上にブレイクするかもしれないと思ってる。正にブレイクに継ぐブレイクって感じかな。なんと言ってもDJ Muggsとのアルバムが多くの扉を開いてくれたからね。あのアルバムをきっかけに、それまではなかった多くの人々の目に触れることになったし、また違った考え方をするようになったよ。その後、Ankhlejohnとのコラボレーションアルバムをリリースしたんだけど、あれは実際にはMuggsとのアルバムの前にできていて、リリースせずに温めておいたんだ。
Futurewaveとのニューアルバムもヤバかった。自分の作品の中でも特に評価の高いものの一つが『Headcrack(Rome StreetzとFuturewaveが2019年にリリースしたアルバム)』だから、みんなまたFuturewaveと作品を作って欲しかったみたいだね。それから、Westside Gunnとの共演も注目されたよ。これもいい感じだった。こんな感じで作品の連続リリースと、色んな客演参加があって、今年は本当に良い年になってる。恐らくこれまでのラップキャリアの中で最高の年だと思うよ。でも、年々どんどん良くなっていってる。
ーMuggsとのコラボレーションの評判が、これまでのプロジェクトとは違うと感じたのはなぜですか?
R:世間の反応があったり、フォロワーがノンストップで増えていったり、人々からメッセージをもらったり、そして前は返事すらくれなかった色んなブログが今や自分の記事を載せてたりするからね。ComplexにもMuggsの件の前には掲載されたことがなかったと思うし、これは個人的に大きなことだった。コンプレックスに載ることには大きな意味があるしね。アーティストなら誰もが参加したいと思うものだ。Muggs(のプロジェクト)は、以前は得られなかったメディアの注目を集め、ファンも増やしてくれた。
ーこの2、3年の間にたくさんのプロジェクトを発表していますね。何が制作のモチベーションを維持しているのでしょうか?
R:俺はいつも、この仕事で一番簡単なのはラップだと言っているんだ。子供の頃からずっとラップをしてきて、これがずっとやりたかったことで、人々が自分の作品を受け入れてくれるレベルになるまで長い時間がかかったけど、ずっとラッパーになりたかったんだ。ラップがずっとやりたかったことで、そしてそれを今実際に取り組めている、それ自体がインスピレーションなんだ。自分がこれまでにラッパー達の成功する姿を見ていたのと同じように、自分のことを見てくれる人たちが今いるので、遂に期待されているような気がしてワクワクしているよ。
ラップは競争の激しいものだ。誰かがすごいことをやっているのを聞くと、自分も同じようなことをやりたくなるんだよね。「他の奴らがやっているから、俺もやってやろうじゃないか」みたいな、ね。それだけだよ、本当に。それに、自分の家にはマイクがあるから、録音するのは難しくないし、自分自身がインスピレーションの源だね。自分のラップには将来性があると思ってるから、今となっては俺がこの街全体を代表するくらいのつもりでいるよ。皆、実際に俺を見て、「お前こそ俺たちの代表だ」と言ってくれてるからそれも刺激になってるよ。
ーWestside Gunnと話したとき、彼はあなたの音楽が90年代の雰囲気を醸し出しているから魅力的に感じた言っていました。自分の音楽に対するそのような認識についてはどう感じていますか?
R:正直に言うと、それは良いことだね。90年代が自分の原点だから。俺が好きなヒップホップの時代は、90年代の黄金期、98年、97年、それ以前の時代も含めてだな。あの時代のラップが大好きなんだ。ラップを始めたばかりの頃、ああいう風にラップしていたしね。あの時代のラップはマスターレベルのラップだと思っているよ。しかも、ニューヨーク出身の俺にとっては、あれは自分達のものなんだ。昔、42ndストリートに行くと、どこを見てもラップをしていたグループがいたのを覚えているよ。彼らは、歌のようなメロディーものとかそんなものは一切やっていなかった。彼らはスピットしまくってたんだ。結局のところ、俺はいつもそういうスタイルのラップに憧れていたから、ラップを始めてからもそれがラップだと思ってやっていたね。他のスタイルもクールだけど、自分の地元を背負ってるから。これが自分のやり方なんだ。
ーニューヨークに戻ってきたとき、ロンドンにいたときのようなキャリア面での協力者がいないように感じたと言っていましたね。ニューヨークで自分の名前を売るのはどれほど大変でしたか?その間、何があなたを目標に向けて集中させてくれましたか?
R:ニューヨークではみんながラップをしてるから、多くの人の中から適した誰かを知らないといけないし、物凄く大変だったよ。当時、自分はほとんど誰のことも知らなかった。ラッパーに会ったり、イカしてる奴に出会ったりして、彼らに対してラップをする、もしくは『SMACK DVD』に出演したり、何人かとバトルしたりすると、自分の名前が通り初めて、徐々に有名になっていくんだ。そんな感じで俺はやっていたよ。同じような奴らと競ってたんだ。
でも結局そんなに難しくはなかったよ。ラップがどこで行われているかを知っていれば、あとは簡単なことだ。最初は何も知らなかったんだけど、年を重ねるごとにパーティーやオープン・マイクの存在を知って、参加するようになったんだ。だけど自分を集中させてくれたのは、自分が優れているという事実だったりもする。どこにラップをしに行っても、自分が一番上手かったから、「よし、やめる理由はないな、続けよう」と思ったよ。
だけどね、自分もこれまで常に集中出来ていたというわけでもないんだ。いろんなことがあって、自分のペースを崩してしまうこともあった。刑務所に行って、収監されたりもした。本当に色々なことを経験していて、山あり谷ありの人生なんだ。でも、だからこそ、自分が優れているという確信が、ここまで導いてくれたんだ。刑務所にいたときも、いつもライムを書いていたし、刑務所の奴らとバトルしていたよ。自分の宣伝のためにね。「家に帰ってきたら、俺はこれで生きていくんだ」っていつも刑務所の奴らに言っていたよ。
未だにストリートに身を置いていたとは言え、いつも音楽をやってたよ。集中力を完全に失ったことはないね。ただ、音楽でお金を稼げることに気づくまでは、音楽は常に最優先事項ではなかったかな。自分がラップでお金を稼ぐようになってから、音楽をより優先するようになって、それがここ2年しかって感じかな。ずっとラップがしたかったし、いつもラップをしていたけど、常に最優先には出来ていなかったし、本気でやってなかった時期もあったな。
ーSpinの記事では、街中のサイファーやバトルで友達ができると書いてありました。その時のことを話してもらえますか?
R:あの記事は、まさに俺の一生についての記事だね。子供の頃(4~5歳くらい)、いとこがレフラック出身(ニューヨークのクイーンズにある団地)だったから、いつもそこにいたんだ。母はいつも仕事で、代わりに叔母が子守をしてくれていた。いとこは5歳年上だったから、俺にラップを教えてくれたんだ。その後、俺達がもう少し大きくなった時、CNNが出て来たんだ。Capone-N-Noreagaだよ。いとこがNoreagaの家によく行ってて、それがきっかけになった。Noreagaに会ったわけじゃないんだけど、でも、子供ながらにあそこでラップを聴き始めたんだ。大きくなるにつれて、マンハッタンのダウンタウンに行くようになったり、ハーレムを動き回ったりしているうちに、自分がラップをしていることを知っている奴らと友達になったんだ。でも、あの時はまだ業界人との出会いはなかったけどね。
ハーレムにいる奴らと一緒にラップを始めて、良い関係性になっていった。彼らは決して有名だったわけではないんだけど、俺の音楽面に理解のある知り合いだった。俺は色んな地域に住んでいたので、街中の色んな奴らと知り合いになったよ。だから「Romeはここ出身だ」とか「Romeはあそこ出身だ」とかいう記事をたくさん出ているんだよ。昔、インタビューで「どこに住んでいますか」と聞かれた時、「クイーンズに住んでるよ。もう何年も住んでる。」と答えたんだけど、だから、その記事を読むと、「クイーンズ出身のRome」と書かれていると思う。だけど、この10年間はブルックリンに住んでるんだ。俺の音楽が本格的に始まった場所だからね。「どこ出身なんだ?」 って聞かれたら、ブルックリンと答えるよ。でも実際は、あちこちから来た人達を知っているし、それが『Rome Streetz』という名前に繋がっているんだ。それが全てだよ。自分の人生だ。
ー業界の中で適した人間を知らないことの難しさをおっしゃっていましたね。ニューヨークのラップメディアは、あなたのヒップホップを正しく評価していると思いますか?最近、Wayno(アメリカ合衆国の音楽評論家/ラジオホスト/etc...)が 「NYの新人アーティストは、ドリルソングやBoogie(A Boogie wit da Hoodie)のモノマネではないものを作るべきだ。」とツイートしているのを見ました。でも、実際はそのどちらもやっていないラッパーは何百人もいると思います。
R:そのツイートを見て、イラッとしたよ。彼もニューヨーク出身で、そしてニューヨーク出身のラッパー全員がドリルを作ってるわけではないことを知ってるはずなのにね。でもそれはどういうことかって言うと、自分が理解しておかなければならないのは、Westside Gunnのような人が取り上げるまで、こういう人達は俺みたいなアーティストのことを認めないということだ。Westside Gunnが近くにいると、みんな「おお、あのRome Streetz君か」となって、俺のやっていることを全部チェックしてくれるだろう。だけど、これまでもツイッターでは俺の名前がリツイートされたり、タグ付けされたりしていたわけで、一日中彼らの目に留まってたとしてもおかしくなかったはずなんだ。でも結局興味を持とうとしてくれないんだよね。不思議だよね。
この前、あるインタビューを見ていたら、ちょうど同じようなことを話していたよ。結局のところ、ニューヨークのメンタリティはラップが始まったばかりの頃と変わっていないんだ。DJがブレイクビーツをかけていると、DJブースの中で人が「おい、なんて曲だこれは」って聞くんだけど、DJがレコードを隠すから見えないんだ。「おい、お前に俺の曲を教えるつもりはないよ。曲名なんて教えるわけないだろ。」みたいな感じでね。自分の力で見つけなければいけないんだ。
だから、例えばWaynoのように大きなプラットフォームを持っている奴は、俺のことを知ってただろうし、曲を聴いたこともあったと思う、でもな、彼はRome Streetz存在を公に認めないんだ。なぜなら、そうなると彼は特に何の繋がりもない自分に大きなプラットフォームを与えることになるんだからね。だから彼的には「そうだな、Rome Streetzが大きなプラットフォームに値すべきアーティストになったら、自分のプラットフォームに招待しよう」みたいな感じなんだろうね。メインストリームのラップは取り上げやすいよ。それは彼もみんながMigosみたいなラップをしてると言うだろうね。それがメインストリームだから。誰もがそのメインストリームのシーンに入りたがってる。みんな俺のようにはラップできないしな。だから、彼が注目してるアーティストの大半は、俺のようにではなく、Migosのようにラップしているんだ。だからみんなフラストレーションが溜まるんだよ。自分はあまり気にしてないけどね。
俺もニューヨーク出身だけど、個人的には気にしてない。自分の考え方としては、「わかるか、俺はコイツらが否定もできない程、音楽に注力して来たんだ」という感じだ。そして、彼らがやっと俺を認めてくれた時には、「よお、前ら遅すぎるよ。今までどこにいたんだ?何も出来てないじゃないか。お前らがこの文化のためにやるとか言っていたこと、全然出来てないぞ」みたいになる。なぜなら、よその地域の人間教えてもらうまで俺のことを知らなかったわけだからな... Westside Gunnはニューヨーク州出身だが、彼はニューヨークシティ出身ではない。
だから、ニューヨークの影響力を持った人たちが「ニューヨークシティみたいなラップをする人はいない」みたいな馬鹿げたツイートをしている一方で、バッファロー出身の人間が、ニューヨークの人間なら本来知っておくべきニューヨークスタイルの人間を世間に広めないといけなかったんだ。自分はそういうのは気にしていないけどな。だって人生なんてそういうものだし、みんな忙しいからね。特に何も思わない。流石に全てを把握することはできないかもしれないけど、でも一度そういう才能の存在に気づいてしまうと、「くそ、見逃した」と思うことになるよ。でも俺は別に構わないけどね。
ー(メディアの)ビジネスに関わる人を選ぶというダイナミックな動きは、あなたの制作活動に影響を与えたりしましたか?
R:特に制作活動には影響は受けなかったよ。むしろ、それについてラップしたいと思うようになったくらいで、特に気にすることはなかったかな。まず、そもそも俺は俺がやりたいようにラップしているんだけど、そんな時に「いいか、Rome。自分が本当にやりたい曲を聴いてもらうために、1曲くらいは多くの人に好かれるような曲を作ったほうがいい」って言ってくる人もいるんだ。俺もそういうことをやっていた時期があるよ。アーティストとしては、1つのことだけをやっていれば良いってわけでもないしね。俺はこういうラップができるけど、こういう曲もできるかもしれない、そしてそうすればみんなが俺の本当に言いたいことに耳を傾けてくれるかもしれない、と思っていたから、特に落胆はしなかったかな。
自分でファンベースを開拓して、彼らが求めている音楽を提供し、自分の曲を本当に好きな人たちを見つけて、そしてそれによってお金を稼ぐことができるとわかってからは、メディアが言うことを気にしなくなったよ。メディアはストリーミングを気にかけている。俺には自分のレコードに100ドル払ってくれる人達がいるんだ。メディアの奴らはそういうファンの存在すら知らないんだ。彼らは未だにそんなことが起こっていることすら知らない。俺はCDを30ドル、50ドルで売っている。人々は車の中でCDを再生することもないのにな。みんな買ったCDを壁に飾ってコレクター気分を味わっているんだ。そういうことができると気づいてからは、メディアのことなど気にしなくなったね。
ーGriseldaとの関係はどのように発展し、実際に契約するまでに至ったのでしょうか?
R:自分が出て来たばかりの頃、『Street Farmacy』をドロップした時くらいかな、Benny(the Butcher)がアミティヴィル(ニューヨークの地区の1つ)でショーをやっていたのを覚えているよ。実はその前に、Bennyと一緒にバッファローでショーをやりに行ったことがあった気がするから、Bennyとは既に面識があったと思う。Bennyとは昔からお互いに顔見知りで、彼が自分を見かけることもあったらしい。Westside Gunnとは一度だけ会ったことがあったんだけど、確か自分のマネージャーがローワーイーストサイド(マンハッタンの地区)でパーティーを開いたことがきっかけだったと思う。そのパーティーで適当に遊んでいて、外で吸っていたら、Westside Gunnが突然近づいてきて、「どう、楽しんでる?」と言ってきたんだ。どこから来たのか分からなかった。「Rome Streetzだ」と自己紹介すると、彼は「いや、もちろん知ってるよ。あの曲ヤバいね、『96 Nauti Windbreaker Shit』。 」と言って来たんだ。
その後、一緒に吸って、その時に写真を撮ったんだ、俺とWestの最初の写真をね。2年くらい前のことかな。その夜、一緒に遊んで電話番号を交換したんだけど、ある日、突然彼がツイッターで 「良いものがある。」と連絡してきたんだ。それが『Fly God Is an Awesome God』で彼との最初の曲を作った時のことだな。
自分のツアーを始めてからは、彼が連絡してきたことがあったな。自分はアトランタにいて、これからショーをするところだと伝えたんだけど、そうしたら、彼が自分のところに来て、一緒に仕事の話を始めたよ。車にドライブしながら、彼は俺のことを気に入っていたらしく、今後のプランを教えてくれた。彼はGriseldaのメンバーをもっと増やしたいと言っていたよ。Conway(the Machine)は自分のレーベルやアーティストとの関係で忙しく、Bennyも自分のレーベルとアーティストとの関係で忙しいからね。しかもBennyはもうラップをしたくないと言っていたらしく、彼の中で俺が今まで聴いた中で一番ヤバいラッパーの1人だったってのもあって、一緒にやりたかったらしい。
そして、「フェニックスに来い。」と言われて、フェニックスに行くと、彼は「お前のためにアルバムをプロデュースしたい。」と言ってきた。実際これは本当の話なんだ。誰かがネットで「Westside GunnはRome Streetzとアルバムを作るべきだ」というツイートをしていたんだけど、自分はそれに対して「もし彼が乗ってくれたら、これまでで一番ヤバい作品になるだろうな」と返したんだ。そして彼もそのツイートを見たらしい。彼は『Pray for Paris』とか 『Pray for Haiti』、 Fly系の作品(『Flygod Is An Awesome God』シリーズ?)を既にやっていて、自分にこう聞いたんだ、 「お前は今までの俺の作品よりもヤバいものが作れると思うか?」って。彼は俺の(Twitterでの)発言を気に入っていたらしい。「俺でも同じことを言っていたと思うよ。俺はお前とやりたいんだ。フェニックスに来て、一緒に料理しよう」と言ってくれたよ。
それでフェニックスに行って、Hitlerのアルバム(『Hitler Wears Hermes 8』)の客演参加用のレコーディングをして、あとはアルバムを作った。彼は「君と契約したい」と言ってきて、それがきっかけで契約したんだ。彼は最初のうちは自分を手助けしようとする感じだったんだけど、最近では 「お前はもう1人でもカマせてるな」と言われるようになったよ。彼は自分が大きなプラットフォームを持っていることを自覚しているから、「いいか、お前がやっていることのペースを加速させた方がいいかもしれない。だから今すぐプラットフォームに乗せてやるよ。もう待つのはごめんだぜ。」言ってきたよ。
彼が今いる場所にたどり着くには、1年か2年かかるかもしれない。Westside Gunnのようにメディアに注目されるようになるには、3、4年かかるかもしれない。だから彼は、「Griseldaに来い、そうすれば一晩で実現できる。」と言って来たよ。俺も「いやあ、本当にその通りだ」と思い、今に至るんだ。俺達は明日はRadio City Music Hallでの公演を控えてる。ニューヨークには、何年も前から高いレベルのラップをしているラッパーがたくさんいるんだけど、彼らはRadio City Music Hallのステージでラップしたことを言う機会すらもらえないんだ。契約して1ヶ月も経たないうちにこういうことが出来るなんて、彼が言ったことはすべて実現していってるんだと実感するよ。何も言うことはないね。本当にすごいことだよ。
ーWestside Gunnのラップシーンにおけるビジョンや、多くのアーティストの発展と自立を促している彼のキュレーターとしての動きに関して、もっと話を聞かせてもらえますか?
R:俺はWestside Gunnのファンで、自分が彼のことを個人的に知っているだけの時からGriseldaのファンだった。だから俺としては、彼はただソロアルバムを出すだけの1人のラッパーから…そうだな、例えばDr. Dreのアルバム、『Chronic』を聴いてる時みたいな感じで、色々なものをまとめて構成して…みたいな、正にDr. Dreみたいな存在に成長したように感じるよ。彼はただビートを作らないだけだ。Dr. Dreがアルバムを作ると、まるでオーケストラのようになる。バカデカいイベントだ。彼はただ全ての曲でラップするだけでなく、これまでおそらく一緒にラップしたことがなかったであろうアーティスト達をまとめて、美しい作品を仕上げるんだ。だからWestside Gunnはもうただアルバムをリリースするだけのラッパーではないよ。
今となっては彼は、「作品」を作るアーティストだ。彼はヤバいものを作り上げるために色んなものをうまくまとめられる。彼は文化にとって素晴らしいことをやっているよ。もし5年前に、将来自分がLil Wayneや2 Chainz、Jay Electronica達と同じアルバムに参加できるようになると知っていたら、「俺は一体どんなやつに魂を売ってしまったんだ?」と思っていたと思うよ。だって、5年前の自分の状態だと、そんなことは奇跡でも起きるか、とんでもなく自分がレベルアップしないと起こり得ないことだったからね。Westside Gunnはこういうことをやってる奴なんだ。彼がやっていることに何も不満はないよ。なんたって彼は色んな奴に光を当ててるんだからな。
中にはそんなことやらないラッパーもいるよ。絶対に他のラッパーに自分のアルバムに参加させずに光を当てようとしないラッパーもいる。彼は前、俺にこう言った、「もし俺がお前に16小節送ったら、お前は60小節ラップするんだ。アリウープみたいなもんだ。もし俺らがバスケをやっているとしたら、俺がボールを投げる側でお前がダンクする側だ。やっぱり最終的にはダンクするやつにみんな注目するんだからな。」ってな。彼は本来みんながダンクするところを見たい奴のはずなんだけど、ずっとアリウープパスを出し続けている。素晴らしいことだよ。彼は本当に文化そのものだよ、周りの奴らがそれに気づいていないとしてもな。
ー今Ransomとのコラボプロジェクトを控えていると思いますが、なぜこのプロジェクトをやろうと思ったのですか?
R:俺はDJ Clueのテープを聴いてからずっとRansomのファンだったんだ。彼にはCinematic Records(ニューヨークのレコードレーベル)で出会って、会ったときに自己紹介したんだけど、彼は「知ってるよ、ヤバいラップしてる奴だろ。俺らは一緒にスパーリングするべきだ。」って言ってきたよ。その時俺の中では、Ransomは今まで聴いた中で一番やばいリリシストなのに、ましてや一緒に曲を作りたいではなく、スパーリングをしたいって言っているということは本当にカマしたいんだなと思ったよ。
数ヶ月後に、彼は『American Hustle』を送ってきた。既にあの曲がヤバいことはわかっていたからすぐに取り掛かり始めたよ。彼にラップを送って、また彼が送り返してきた。その時に、ファンが「2人が一緒になるとまじでヤバいな。」って言い出したから、Ransomが「おいみんな、俺とRome Streetzでアルバム作るぞ」ってツイートしたんだ。俺は「おい、それまじ?」みたいな。でもすぐに「わかった、やろう」って言ったよ。だってどちらにせよRansomは俺のお気に入りのラッパーなんだ、Noって言うわけないだろ?これ(2人の共同アルバム『Coup De Grace』)をやることで何も悪いことは起こらないと思うよ。あるとしたら自分の執筆がより加速されて、全く違う次元に飛ばされることくらいかな。だってRansomのことをラップ界隈の中で最も優れたリリシストだと思っている人達がいるんだからな。
だから、彼とアルバムをやるということは、人々に「誰だこのRansomに食らい付いてラップしているRome Streetzとかいう奴は?こいつヤバいな」って思われるってことだよね。俺としてはウィンウィンだと思うし、アルバムは本当にえげつないよ。アーティスト2人のコラボレーションアルバムでこの作品に並ぶものは無いんじゃないかと思う。もしあったとしても、この作品に勝ることはないね。
ーレコーディングはどのように行われましたか?みんなで一緒にスタジオに入ったのですか?
R:パンデミックの時にやったから、スタジオに入るのは少し難しかったかな。1回くらいは一緒にスタジオに入ったかもしれないけど、俺も彼も家で録ったよ。このプロジェクトが決まった時、「おい、実は良いアイディアがあるんだ 」って感じだった。自分は家にいてレコーディングする。そして、それを彼に送るか、彼が自分に送ってくる、で、その日のうちに送り返す。自分はこういう感じでやるんだ。Westside Gunnが客演のオファーをくれた時も、彼と一緒にスタジオにいない時は、その日のうちに送って来いと言ってくるタイプの人間だった。
もし自分が家にいれば、その場ですぐに曲を作っているから、俺とRansomの曲の多くは、スタジオにいるときと同じように、1日で出来上がったよ。自分が曲を作って彼に送ると、すぐに曲を送り返してくる。電話で話していて、物理的にその場にいなくても、お互いに通じ合っていて、アイデアを出し合ったりしていたから、ただの機械的な作業ではなかったよ。
ーWestside Gunnは、アーティストと仕事をするときに、48時間以内に返してくれと言って何かを送ると言っていました。あなたは彼との仕事でそのような経験をしましたか?プレッシャーになりましたか?
R:自分もそういう経験をしたけど、プレッシャーというほどではなかったな。他の人が「早く欲しい」と急かして来たこともあったけど、彼との場合は、俺もそういう雰囲気を出していたからね。あの彼と作った『Steve Behr』は、自分は1時間後に送ったんだ。最初に彼が自分に送ってくれて、店に飲み物を買いに行った後、戻ってきて録音して送り返したんだ。つまり、そういう前例を作っていたわけだ。
別にプレッシャーではなかったよ。生活のためにラップしてるんだから、こういう状況でも食らい付いていくよ。わかる?全然大したことじゃないぜ。俺のペンからはアドレナリンが出てるんだ。尊敬するラッパーから曲が送られてきたら、今日中に送り返すよ。待ってられないし、自分がカマせることを早く知って欲しいからね。俺はこんなことでつまづいたりしないからな、プレッシャーではないよ。ただやり遂げる。アリゾナに行ったときも、4日間で14曲やったと思うけど、それも別に強制されたわけではなかった。ただそういうモードに入っていたんだ。エネルギーに満ちていた。自分自身のために、作品に興奮してるんだ。これがずっとやりたいと思っていたことだから、すごくテンションが上がってるよ。自分がそういう状況にいる時は、なんとでも無いよ。ラップをするのは簡単なんだ。ただ現役で活動していく中で出てくる、ラップに付随する様々な部分が難しいんだ。いや、実際には難しいことではないのかもしれないけど、俺は本当にラップに慣れているからね。自分の才能だと思う。
ーあなたはJトレイン(ニューヨークの地下鉄の路線の1つ)でラップを書くのが好きだというのを読んだことがあります。公の場で歌詞を書くプロセスについて話していただけますか?また、電車の中で書いた最初のラップを覚えていますか?
R:Jトレインで最初に書いたものはあまり覚えていないけど、"The Train Ride From Manhattan "という曲を作ったのは覚えているよ。大したプロセスではないんだけど、ヘッドフォンをかけて、ただ書くだけ。自分が作る曲の99%は、スマホで書いたものなんだ。電車に乗っているときに書くのは大したことないんだけど、今は車乗ってるから、そういうことはあまりしなくなったよ。だけど電車に乗っていると、全てが見えるんだ。色んな人が目に入るし、何よりニューヨークの特徴は、すべてのものの間に細い線があることだ。例えば、大富豪とホームレスが同じ場所にいたり、プロジェクト(低所得者団地)の向かい側に月5,000ドルのコンドミニアムがあったりする。ニューヨークにいると、人生の両極端を一度に目にすることができるんだ。
電車に乗っていると、様々な場所を旅しているようなもので、どこも違った雰囲気を持っている。だから、長い電車の旅をしていると、色々な人や色々な要素が見えてくる。窓の外を見れば、ニューヨークの歴史的建造物とか、様々なタイプの建築物を目にすることができるし、部屋で一人でただ書いているのとは違って、創造力が掻き立てられるよ。例えば、電車に乗っているときには、今起こったばかりのことを取り入れることができる。本当にその場ですぐにね。部屋に座っていると、頭の中が全てだ。だから電車の中は自分にとってクールなクリエイティブ空間だったんだ。以前はペンとノートで書いていたんだけど、もしペンとノートでずっと書いていたとすると、もし自分が家にいなくてペンが近くになかったらどうする?どうするべきだと思う?ペンが使える状況になるまでずっと覚えてられたらいいんだけどね。スマホのメモがあれば、今思いついたことをすぐに書き残せるからね。
ー今後の展開は何かありますか?また、他に取り組んでいることはありますか?
R:Ransomとのアルバムの他に、Griseldaと一緒に作ったアルバムがあるよ。これはリリース予定ではあるけど、いつになるかわからない。Griseldaとの作品はもっとあるしね。彼らと契約したから。Westsideが言っていたのは、彼がベニーとやっていたことと同じことを、彼は俺ともやることになるだろう、ということだった。何が起こるのかは自分もよくわからないよ。だって彼の頭の中に何でもクリエイトできるから、どんなことでも起こり得るからね。彼がキュレーションできるものなら何でもいい。実は別のツアーをやろうとしているんだけど、どこでツアーをするのか、誰とやるのか、まだ確実に決まっているわけではないから、まだあまり色々と言いたくないかな。ただ、もっとすごいことが起こるとだけは言えるかな。曲やビデオを楽しみにしておいてよ。本当にね。
アドレナリンの出どころ
私がこのインタビューを読んで感じたのは、Rome Streetzは本当に自分のラップスタイルに誇りを持っていて、本当に自分のスキルに自信があって、本当にラップすることが好きなんだなということでした。少しEminem的なラップオタクの雰囲気を感じるというか、四六時中ラップしている彼の姿を容易に想像できるような凄い熱量を感じました。ラップに対してこれほどの執着心を抱く背景にあるものは、彼がこれまでに世界の様々な場所を点々とする中で、都度ラップバトル等に参加し「俺が一番上手い」と思えるような経験を重ねてきたことに他なりません。世界中どこででも通用するスキルとして圧倒的な自信を持っているのだと思います。さらに、インタビューでも言っていたように、彼の音楽活動におけるモチベーション、もっと言うと彼の人生におけるモチベーションはラップをすることから来ています。つまり、「ラップをする→成果が出る→もっとラップをする→もっと成果が出る→…」というサイクルに対して常にテンションが上がっていくオプションが付いているわけです。これはもう完全に永久機関ですよね笑。これだけ自分が継続的に高揚していく状況を作れていれば、ペンからアドレナリンが出るのも納得です。本当にペンが止まらないのではないでしょうか。
Rome Streetzが期待されていること
私個人の意見として、Rome Streetzにはより売れていくという点ではまだ足りないなと思うポイントもあります。それは何かと言うと、ショーマンシップです。それこそインタビューでも触れられていたRansomとの共同アルバム『Coup De Grace』を聴いて感じたことなんですが、Griseda Recordsの他のメンツの作品と聴き比べた時、Rome Streetzの楽曲は(Ransomも)、派手さというか、リスナーに対して自分達のコンテンツをより華やかに魅せる演出が不足しているなという印象でした。もちろんラップ自体は尋常じゃないくらい上手いと思うのですが、やはりインタビューでも言われていたように、ラップのスキルだけでは大きなステージに上がることが難しい世の中です。ラップスキルともう1つ、人々の目を引くような何かが必要なんだと思います。そしてそれこそが正にWest、Conway、Bennyが得意とする部分なのではないでしょうか。特にWestside Gunnは、やはり根底にあるプロレスファンとしての素顔、そしてファッション通としての一面から、ラッパーである前に、生粋のショーマンだと私は思っています。彼の振る舞いや佇まい、発言(歌詞)、コンテンツのパッケージング、どこを取っても男の子心をくすぐるような華やかさが常にあるような気がしています。ですので、逆にいうと、Rome StreetzがGriselda Recordsにサインしたというのは、答え合わせのようなもので、歯車ががっちりと噛み合ったような印象です。是非West節のショービズ精神を受け継ぎ、次期Griseldaを引っ張っていくような化学反応を起こして欲しいですね。先日行われたRolling LoudのGriseldaのステージでもWest、Conway、Benny、 Armani Caesarがパフォーマンスする中、Romeは後ろからどこか真剣な眼差しで彼らを見つめていたような気がしました。恐らく、Griseldaの看板を背負うとはどういうことなのか、をしっかりと目に焼き付けていたのではないでしょうか。
P.S. Rome StreetzがInstagramライブで「喋ってれば歌詞は書ける。パンチラインを生み出すコツは喋り続けることだ。」って言ってたのですが、本当に次々と言葉が出てくるのなんのって...笑。彼の人生哲学みたいなものを淡々と語っていたのですがコメント欄でみんな「それはパンチラインだ」って盛り上がっていましたね。
written by じょん
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