見出し画像

あなたの心に残る。〜2020年CM5選〜

今年も残すところあと僅かとなりましたね。

2020年、様々な日常の変化が、
私たちの生活を劇変させました。

例年のCM作品よりも豊作とは言い難い年になった
というクリエイティブディレクターの方々の声も
チラホラ聞こえてきますが、
個人的に広告の勉強をしている大学生が
2020年で好きだなぁと思えた広告とその理由を、
ツラツラと述べさせていただきます。

それでは、何卒っっっっっ!!

1.ジェームス「愛の停止線」season2

season1からさらに面白さがパワーアップ!?
10秒CMだから成せる没入感・スピード感で一気見しちゃう!

以前、ADBOXというオンライン広告イベントにて、
ジェームスの連続10秒ドラマを手がけた博報堂の神田祐介さんのお話を聞くことができたので、そちらの内容を少しだけ共有させていただきます。

画像1

なぜ6秒でも15秒でも長尺でもなく、
10秒という選択をしたのかについて。

神田さん曰く、
やめられない止まらない中毒性は
セリフの組み方・間・人物の感情までを描けないと生み出せない物であり、
ここまで描ける最低秒数が「10秒」だったそうです。

ありとあらゆる情報が錯綜している現代に、
なが〜い広告を見てもらうのはハードルが高くなりすぎました。
そんな中で、「10秒だけ時間もらえませんか?」という口説き文句は、
スマホでの視聴環境に丁度いい許容を生んだのでしょう。

また、各話が10秒で終わるという認識を植え付けることによって、
視聴者にタイムカウントをさせる効果も狙っていたそうです。
タイムカウントをさせることで、
「10秒なのにここまで描けるのか!?」という
プロの技術力への驚きが価値になっているのでしょう。

個人的にハマった理由は2点あります。

1点目は、「いい意味でのくだらねぇ感」です。
カー用品というニッチな商材が、
漫才でいうところのツッコミ的な役割を発揮しており、
どことなく郊外の物悲しいシチュエーションとノンタレキャスティングが
繰り広げるボケとの親和性が絶妙だったのではないかと思います。
(道子、いい味出てますよねww)

2点目は、「丁度いいスピード感」です。
先ほども述べましたが、
10秒という時間は大学生の私にとっても心地いい秒数でした。
おそらく、普段からYouTubeやTikTokなどの動画メディアに触れている中で
目にしている動画の編集の手法と似ていたからだと思います。
めまぐるしく展開が変わっていくスピード感に既視感があり、
次が見たくなる効果が無意識に生まれていたんだと考えました。

2.NIKE「You can't stop us」

2分割だけど1シーンのように描く技術が圧巻!

このCMは最後まで画面が右と左で2分割になっており、
左右の画面はそれぞれ別々のスポーツを取り扱っている映像ですが、
まるで1シーンかのように動きがシンクロしているように見えるように編集されております。

画像2

調べてみると、
本映像は、高度な編集技術によって70以上のスポーツの名場面を1つに組み合わせて作られているそうで、
ミーガン・ラピノー選手、レブロン・ジェームズ選手、大坂なおみ選手など36組のアスリートが出演しています。
知っている選手を見つけるのも一興かもしれませんね!

またNIKEは、このCMに参加したミーガン・ラピノー選手のコメントを以下のように紹介している。

「プレイヤーはピッチに戻るでしょうが、私たちがかつての日常に戻ることはありません。私たちに求められているのは、この世界がどうなるのか、改めて構想を描き、より良くしていくことです。街中には自分たちの意見を挙げる人たちがおり、そうした意見は人々の耳に届いています。私から皆さんへのお願いは、このような時期を大いに活用し、決してあきらめないで欲しいということです。私は誰もが変化を訴える責任を負っていると信じています。」

withコロナ時代と言われるようになり、
現状を受け入れざるを得ない状況が続いています。
そんな中NIKEは、スポーツ界において、
ジムの閉鎖であったり、球場から観客がいなくなったとしても、
アスリートが前進することであったり、
自ら声をあげて変革を起こそうとする歩みは止めないとしています。
スポーツは公平な環境であったり、
より良い未来が実現可能であることを証明してくれるものであると
気づかせてくれるような希望溢れる作品であったと思います。

You can't stop us.
私たちがひとつになれば、誰も止めることはできない。

スポーツ選手たちだからこそ言える、
意志の強い言葉であると感じました。

3.日清旅するエスニック「匂わせたい」

匂わせたかったのは男の存在、だけじゃない!?
細かな演出と意外な展開に、ついつい笑ってしまう!!

若者の間では、
「幸せなわたし」を直接自慢すると他人から冷たい目で見られることから、
写真や動画等で間接的に「幸せなわたし」をアピールする
「匂わせ投稿」が多発している。

スクリーンショット-2020-01-14-20.18.20

芸能界だと木下優樹菜さんと乾貴士さんの匂わせ投稿が話題を生んでいたのも、生活者の興味関心事として出てきていたので、「匂わせエスニック」のプロモーションタイミングも良かったのではないだろうか。

映像の内容は、思わず頷いてしまうような
あるある匂わせ投稿ネタが10個も登場するが、
後半から視聴者をいい意味で裏切っていく展開を見せていく。

以下の引用が映像内前半で出てくる「匂わせ」である。

① カメラの角度を調整し、あえて男性が見切れるように撮る匂わせ。
② 後ろ姿を複数枚投稿するが、決して顔は写さない匂わせ。
③ おそろいの靴を履いた男女の足元、寄り添う二人の影を写す匂わせ。
④ ドライブ中の海辺の景色と見せかけて、運転中の男性の手を写り込ませる匂わせ。
⑤ 手料理の写真と見せかけて、鍋のフタに男性を反射させて映す匂わせ。
⑥ ニューヘアをお披露目と見せかけて、サングラスに男性を映り込ませる匂わせ。
⑦ ボクシングで着ているパーカーがダボダボすぎて、男性に借りているだろうと思わせる匂わせ。
⑧ 犬の散歩中に 「#なんでもない日#ありがとう」 と謎の感謝を伝え、男性の足を写す匂わせ。
⑨ 聴いている音楽を意味深にシェアする匂わせ。
⑩ 長文ポエムの頭文字を縦読みすると、「わたしは勝ちぐみ」 というメッセージが浮かび上がる匂わせ。
                    (PRTIMES 2020/04/13より)

そして、「匂わせ」の真実が以下の引用である。

① グラスを持つ女性の腕のブレスレットに 「ETHNIC」 「LOVE」 「エスニック」 の文字。
② フードをかぶった男性の周りの看板に 「旅」 「する」 「エス」 「ニック」 の文字。
③ 2人の靴下が、「旅するエスニック グリーンカレー」 「旅するエスニック トムヤムクン」 柄。
④ クルマのカーナビに「エスニック」の文字。運転する男性の腕に「旅するエスニック トムヤムクン」 模様の時計。
⑤ 鍋の奥に 「旅するエスニック グリーンカレー」。
⑥ 美容院帰りの女性が着ているのは、「旅するエスニック」 のロゴTシャツ。
⑦ ボクシングをする女性の後ろに写り込むポスターに 「旅するエスニック」 を持つ男性。
⑧ 奥の男性がスパーリングミットのように持っているのは 「旅するエスニック」。
⑨ 男性が持つビニール袋の中に 「旅するエスニック」。
⑩ 長文ポエムの行末を縦読みすると 「旅するえすにっく」。
                    (PRTIMES 2020/04/13より)

実際に、商品の消費がどれほど伸びたのかは定かではないが、
1度だけでなく、2度、3度と見たくなるような
仕掛けが内包されている映像は、
緻密な企画力と生活者インサイトをがっちりと掴むことで、
変に身構えず、カジュアルに、
そして鮮やかに生活者の記憶に残る作品となったのではないかと思います。

4.カロリーメイト「見えないもの」

受験期の風物詩でもあるカロリーメイトの受験生応援CM
見えないものと闘う中で心を通わせ合う受験生と教師を描き上げた!

新型コロナウイルス感染拡大の影響に乗っかっているCMが今年はたくさんあったけれども、
どの企業も発するメッセージが似通ってきていて、
最初は「いいこと言ってるなぁ!」と思っていたとしても、
言い方を悪くしてしまうと「はいはい....。」で済まされてしまう作品も少なくなかった気がしている。
(偉そうなことを言っているのは重々承知していますが、個人的な見解なのでご容赦ください。)

そんな中カロリーメイトの新CMは、
「はいはい」じゃ済まされないリアリティを映した良さがある。

⽣徒役は昨年まで⾼校⽣だった加藤清史郎さんが、
先⽣役は東京03の飯塚悟志さんが演じている。
新型コロナウイルスの影響で今まで通りの学校⽣活を送ることが出来ず、
授業はリモート授業になり、部活の⼤会は中⽌になりました。
CMではそのような逆境の中で、
時に⼼が折れそうになりながらも、
ひたむきに頑張る受験⽣と、
不安を抱える受験⽣を思い、受験⽣と向き合い続ける先⽣との「絆」が描かれています。

私ごとではありますが、
数年前は自分も高校球児だったので、
CMで出てくる高校球児の心境といいますか。
大きな夢を目標にしてこれまで必死に頑張ってきたのに、
勝負もできずにその夢が散ってしまうことの辛さたるや、
想像を絶するものであるとニュース等を見て思っていたので、
描く人物像もみんなが理解しやすいような
時代を象徴する影響をもろに受けた存在であったなと感じました。

画像4

「見えないもの」篇のキャッチコピーとしては、
見えないものと闘った一年は、見えないものに支えられた一年だと思う。
が採用されている。
見えないものと闘ったからこそ、
これまで見えてこなかった存在のありがたみや尊さが
浮き彫りになってくるのは、
誰しもが共感できる部分なのではないでしょうか?

このように誰かにとってセンシティブなテーマを扱う際は、
中途半端にやったらスルーされたり、
時には炎上してしまうリスクがある。
そのギリギリのラインを見事にやりきることで、
「はいはい」の壁を乗り越えられることができた作品でした。

5.ゼスプリ「好きなことを楽しみながら」

優しいメッセージに視聴者から涙の大反響!!

こちらのCMは2020年の5月4日、緊急事態宣言下でオンエアされた作品になっております。

画像5

前年以降の例ですと、それまでは著名な女優等を起用していたCMから一新して、2016年からキウイブラザーズのCMが放映されるようになり、2018年までキウイの栄養面を強く訴求するようなCMを流していました。
2019年からは視聴者を巻き込んでいくような施策をSNSを中心に打ったりしており、人気に拍車をかけていました。
そして今年は、軸として「ヘルシーを、やみつきに。」といったブランドメッセージを展開し、「好きなことを楽しみながら」というキャッチコピーを使用していました。
「ストイックに何かを我慢しないと健康になれないと思っているけれども、前向きに楽しみながら健康を模索することもできるのではないか?」
と言った生活者を想うブランドの意図をうまく伝えられているCMだなと感じました。

今までは、テンションが上がるような陽気なトンマナ(アゲリシャス)でしたが、
コロナ禍の影響もあってか、
CMソングの曲調や歌詞などが心温まる内容になっており、
小学生などの若年層から50代の女性を筆頭に幅広い世代から支持を集める結果となりました。

画像6

CMに出てくる歌詞

個人的な見解としては、
3つの理由があって優れているのではないかと思いました。

1つ目が、コロナ禍で出来ないことをキウイブラザーズが想起させてくれたことです。

画像7

CMの中で、キウイたちは大きな口を開けて、走ったり、筋トレをしたり、サウナに入ったりしています。
そのどれも、緊急事態宣言下ではできないことでした。
自粛生活で思い通りの生活ができない人々に、
思いっきり口を開いて暮らしているキウイブラザーズは、
懐かしいような、うらやましいような姿に映り、
切ない気持ちにもさせることから、
ついつい気になってしまう急所を突いているのではないかと思います。

2つ目が、作中に出てくる歌詞やキャッチコピーなどの
メッセージの自分ごと化がしやすい点です。

画像8

コロナ禍で健康意識への関心が高まっていることもあり、
「体にいいことは疲れる」などの歌詞に共感したり、
「好きだから続けられる」という言葉に納得感があったのではないかと考えました。

基本的に人はダラけたくなる生き物であり、なるべく頑張りたくないと思うものです。そのような本音の部分を、ゼスプリは肯定した上で、頑張らない選択肢を与えてくれているように聞こえてくるのが新鮮でした。

3つ目が、時代の空気感にぴったりだった点です。

画像9

緊急事態宣言が発令されて、
コロナの脅威に気づき始めた4月や5月ごろにテレビで流れるのは、
毎日のように増え続ける「〜人の感染者が出ました」というニュースだったり、
CMもどこか生活者を「応援したい」「共に頑張ろう」というメッセージを暗めなトンマナで伝えており、
社会が重苦しい空気感を漂わせていました。

そんな中で、ゼスプリの広告だけではないですが、
重苦しい空気感の中で明るくあたたかいトンマナを、
可愛らしいキャラクターが表現していることが、
どこか新鮮で懐かしく心を和ませてくれる表現になっていたのではないかと考えました。

画像10

『あつまれ どうぶつの森』が流行ったのも、
殺伐とした現実とは対照的な、ほのぼのした世界観が
癒しとしてウケた例として似たニュアンスを感じます。


以上の5つのCMが、
2020年にオンエアされたCMの中で
私が気になったり、好きだなと思えた広告でした。

いわきりはこんな視点でいつも見逃しがちなCMを見ているんだ
って思ってくれれば嬉しいです。

さいごに。
CMは、社会を映す鏡だと思っています。
2020年をいい年だったと思うのか、悪い年だったと思うのかは、
人それぞれですが、
自分が心に残ったCMから、
「今年ってどうだったんだろう?」
と振り返ってみるのも面白いのではないでしょうか?

まぁ、CMに限らず、
今年自分が触れてきた沢山のコンテンツを深掘りしてみて、
「なぜ自分がこんなにまでハマってしまったんだろう?」
と分析することは、
自分を知るいい機会にもなると思います。
ぜひ試してみてくださいね。

もしここまで読んでくれた方で、
好きなCMを紹介してくれる人がいたら、
ぜひ連絡お待ちしております!!
みなさんの興味関心のあるCM、とても知りたいです!!


こんな感じで、今年投稿するnoteを終了したいと思います。
それでは、良いお年をお迎え下さい。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?