【新作落語】菊の鉢植え
町内の気の合う若い衆が四人、茶店に集まってなにやら話をしております。
八「おい、こないだの相撲見たかい?」
清「八っつぁん、急になんですか?」
八「清さん、相撲だよ。見なかったのかい?始まって早々、寄石《よりいし》と逆風《さかかぜ》ががっぷり四つに組んでジリッ…ジリッ…と土俵際まで逆風を追い込んだ!このまま寄り切って決着か!?ってところで体をかわして逆風の逆転勝ちよ。どうでい!」
清「ああ、あれは確かに良かったですねえ。見ていて実に気持ちが良かった」
熊「あっしはあいつが好きなんだ。避川《よけがわ》」
八「お、熊さんはあの変なことばかりする力士がお気に入りかい?」
熊「そんな言い方しねぇでくれよ。こないだなんか出鼻で相手がガッと来たところをヒョイっと避けて、相手の勢いを利用して背中をポンっと押して行ってらっしゃい〜ってんで送り出しちゃうところなんかはもう…痺れやしたっ」
八「熊さんはやっぱり変わってんねえ。まあでもいろんな力士がいてこそ全体が盛り上がるってもんだ。で、さっきからだんまり決めてる留さんはどうだい?誰か贔屓の力士いるだろ?」
留「お、俺はね、あの人が好きだよ。威勢良く塩をまいてわーっと歓声が上がる…」
とここで隣で話を聞いていた、職人風だがこざっぱりとしてちょいと粋な身なりの男が割って入ってきて、
若「あんたたち相撲なんか好きなのかい?でもねえ、あれは全部八百長だからねえ!」
町人一同「……」
若「なんだ、知らないのかい?私は相撲のことなら何でも知っているという相撲を日夜研究していらっしゃる偉ぁい先生の本を読んだんですよ。そこには今までどういった名試合はたまた八百長試合があったのか全て事細かに書いてあります。あなた達のような、本を嗜まない方々は知らないでしょうけどねえ。あんな茶番に一喜一憂するのは時間の無駄ですよ!」
八「(小声で)……おいなんだいこいつは急に。なんか俺も薄々なんか怪しいな?そうかもしれねえな?と思う時もあるよ?でもよ…それはそれとして、純粋に楽しんでんじゃねえか。なあ?」
清「(小声で)八つぁんは越してきてまだそこまで長くないので知らないかもしれませんが、この人は隣町の植木屋の若旦那で、仕事には真面目なんですが、学があるところを振りかざして何かと話に割って入っては天狗になりたがるんですよ……。そうだ、この若旦那はその癖実はあまり遊びの経験がないって聞きますから、話題を変えて博打なんかの話なら入ってこられないんじゃないですかね……?」
八「(小声で)真面目でこんな性格が悪くなれるのかよ……。まあいいや、その話にしてみるか」
若「なにひそひそ話してるんだい?話を聞いてるのかい?」
八「いやっ、相撲に関しちゃまったく若旦那の言う通りで…、へへ。ところであっしは最近博打に凝りたいなーなんて思ってるんだけど、みんなの方はどうだい?最近なんかやってるのかい?」
熊「俺ぁやってるよっ。俺ぁみんなが賭けねえ方賭けねえ方に賭けるんだ」
八「さすが、熊さんは天邪鬼だねえ。それでどうだい?結果の方は」
熊「それがよ……」
と、ここでまた若旦那が…
若「勝てませんよ!」
八「今度は早えな」
若「なんか仰いました?」
八「いやっ、こ、混沌とした蝿がふらふらっとしてたんで、混沌蝿だな?ってんで…、へへっ…」
若「…ふんっ。博打なんてものはどうやっても負けるようにできてるんですよ。それもちゃんとまとめられた本があります。その本によれば…」
八「いやさすが!全く若旦那のおっしゃる通りで。へへ、博打なんかにゃ凝らねえよう気をつけるようにいたしやす。あ、もうこんな時分だ。おい、茶店の娘さん!お勘定ここに置いとくよ!それじゃ皆出るよ!ごちそうさま!」
と言って、他の三人も巻き込んで逃げるようにして茶店を後にします。
八「皆付き合わせちゃって悪かったね。しかしあのどんな話題にも首突っ込んでケチつける能力はすごいね。皆もあいつには困ってんだろ?俺もこの先ずっと邪魔されるのは御免だからね。何とかやめさせる手はねえかな…」
清「私に考えがあります」
八「お、清さん早いね。どんな手だい?」
清「あの植木屋の若旦那、なぜ隣町からわざわざ通ってくるか分かりますか?」
八「そりゃあ…得意先が近いか、あそこの団子が大好きだ!とかってんじゃないの?」
清「得意先は近くにもあるでしょうけど、大好きなのはあの茶店の娘のお花なんですよ」
八「なんだそれで格好つけてやがんな?」
清「それから、茶店の店先に菊の鉢植えが三つばかり置いてあったのは覚えてますか?」
八「あ〜、いくつかあったね」
清「あれは若旦那から茶店への贈り物だそうです。しかもその鉢植えの剪定やら水やりやらの手入れを自ら買って出ていて、それを理由にちょうど三日おきの昼過ぎ時分に顔を出します」
八「やけに細かいところまで把握してるね」
清「いえ、私の家は茶店の斜向かいで、若旦那の植木屋から茶店に行くには私んちの前を通らなきゃ行かれませんからね。家の中でも足音が聞こえてくるだけですぐに分かります」
八「足音だけで聞き分けられるかい?そいつはすごいね。それで、具体的な方法は?」
清「まあ焦らず聞いて下さい。私の家の隣、茶店の真向かいの家に、野角明只《のずみあきただ》って浪人の男が一人で住んでいます。少し前までは娘さんと二人で住んでいたんですが、この旦那の道楽で作った借金の担保に、娘さんを知り合いのお店《たな》に奉公に出したらしいんです」
八「質奉公ってやつかい?それは可哀想だねえ」
清「その旦那の道楽ってのがちょっと変わってまして、女や賭け事じゃないんですよ」
八「へえ?そしたら酒かなんかかい?」
清「園芸です」
八「園芸?いい年の男が一人娘を質に入れて、代わりに花でも愛でようっての?」
清「いや、私もその野角の旦那に聞いた話なんですが、旦那は万年青《おもと》を育てているんですが、うまくやってたまたま形が良かったり葉にいい斑《ふ》が出たりすると、えらく高額で取引されたりするので、一攫千金を狙って一部では大変な流行りようらしいんですよ」
八「へ〜、あのまだらな葉っぱにそんな価値があったとはね」
清「そして、野角の旦那の家にはいくつも万年青の鉢植えがありますが、その中の一つに、小ぶりで葉がパァ〜っと横に広がっていて、葉の表は真っ白、裏は深緑という、葉一面に雪が冠ったような斑模様《ふもよう》の、華奢できれいな鉢植えがあります。それが唯一娘さんが育てていた鉢植えなんだそうで…。こんな男ですが、その鉢植えだけは特に大事にしているんですよ。そいつを一目見たいと懇願している友達がいる、と言って茶店に借りて行って若旦那を待ち伏せします」
八「どうするんだい? 」
清「植木は若旦那の本職でもありますから、こちらで騒がしくしていれば必ず話に割って入ってくるでしょう。それをあくまで自然に野角の旦那の耳へ入れます。一人娘が育てた大事な鉢植えを馬鹿にされたんじゃあ黙っちゃいられないでしょうから、その勢いで懲らしめて貰おうって算段です」
八「へー、こちらの手を汚さず制裁を下そうなんざなかなか策士だねえ。恐れ入った。でもそんな大事な物を借してくれるかね?」
清「任せといて下さい。茶店は目と鼻の先ですし、私は普段から誠実に慎ましやかに生きていますから…。むしろこういう時の為に常日頃信用を積み重ねてきたと言っても過言ではありません…!」
八「おおどうした急に。そいつは頼もしいけど、この作戦だって考える間もなくサッと出してくるし、真面目そうに見えて清さんが一番危険なんじゃないかってゾクっときたよ。お前とは生涯仲良くいさせてもらいたいね。そしたら、万年青の事は清さんに任したけど、決行はいつにしようか。確か若旦那が来るのは三日おきだってさっき言ってたね」
清「はい、三日おきの昼過ぎに、若干引きずったような足取りで、鼻歌とともに現れます」
八「お、おう…。じゃあ、三日後昼過ぎにまたあの茶店で集まろう。熊さんと留さんもいいね?」
と言って四人はその日は別れ、三日後の昼。八つぁんが他の三人より少し遅れて茶店へ着きました。
八「よう、みんな揃ってるね。若旦那は、まだだね?よし。清さん、例のブツは借りてこれたかい?」
清「ここに」
と言って自分の股座を指差します。
八「お?そこに隠してんのか。立派な啖呵切っただけはあるね。それで、野角の旦那の方はどうしたんだい?」
清「旦那は昼まで用があるってんで、少し遅れて茶店に来る手筈になっています」
八「分かった、さすが清さん抜かりないね。…しかし、ちょっと気になったんだけどね、野角の旦那はカッとなったらすぐに切りかかったりしないかい?いくら若旦那でもズバッと切られたりしちまうのはちょっと可哀想だよ」
清「園芸に興じる男ですよ?旦那は至って温厚な性格ですから安心して下さい」
八「そうかい、それならいいんだよ。…あ!噂をすれば若旦那が来たよ」
若「テテンテン〜(ズッ ズッ…)」
八「本当に鼻歌歌ってるよ。足も確かにちょっと引きずってらァ」
花「若旦那、いらっしゃいませっ」
若「やあ、お花さん、ご機嫌様。ここへ来る途中、忙しく働くお花さんを遠目から眺めていたら、まるで百合の花が風に揺れているのかと思ったよ。お茶を一杯おくれ」
花「若旦那ったらまたそんなことを言って…。すぐ用意しますからちょっと待ってて下さいね」
八「…なるほどね。こないだは気づかなかったけど、確かにベタ惚れだねこれは。じゃ、ぼちぼち始めるかい」
すると、清兵衛が股座から万年青の鉢植えを取り出し皆の前に出します。
八「おお、こいつは小ぶりでいてどことなく品があって、お世辞抜きで可愛らしいじゃねえか。熊さんはどうだい?」
熊「あっしは変わったものが好きですがね。変わったものが好きなあっしから見てもこんな不思議な葉は見たことがねえ。良いもんだ」
留「本当だね。可愛いね。清さんは?」
清「こ、これは…!」
八「何か始める気だぞ」
清「これこそ私が長年探し求めていた珠玉の逸品!雪化粧をしたかのような純白の葉面《はおもて》は、葉裏《はうら》の深い緑との対比でより一層引き立ち、魅力を底上げしています!!これは万年青鉢植え界に舞い降りた一筋の安らぎの光!白き妖精!我らの希望であります!!」
八「自分で股座から出しといてよくそんなこと言えるね」
四人の騒ぎように若旦那もこちらに気付き、横目でチラッと万年青の鉢植えを見ると、
若「この出来損ないがかい?」
八「そうこなくっちゃ!」
清「八つぁん静かに!」
そこへちょうどこの万年青の持ち主、浪人野角明只《のずみあきただ》が道の向こうの方から近づいてきます。
八「…おい清さん!あれが例の旦那かい!?」
清「(小声で)そうですけど、ちょっと黙ってて下さい!若旦那に気取られてしまいます!……ちょうど良いので若旦那にはこのまま続けてもらいましょう」
若「…最近やたら変わった万年青やらを見るけどね、侍なんかの間で育てるのが馬鹿みたいに流行ってんだってね。家も継げず、腕も立たない侍崩れの暇つぶしにはちょうどいいのかもねえ。その万年青もなんだい?小さくて見すぼらしくて。その白い葉は病気なんじゃないだろうね?まるでカビが一面に生えたようだよ!それにあんた達、万一そこにある菊に感染ったら責任取れるのかい!?死にかけの患った万年青なんざ疫病神と一緒だよ!その汚い鉢植えを持って早くどこかへ行っとくれ!!」
と、散々罵倒をするとここで野角が、
野「御免!!儂はその鉢植えの持ち主、野角明只と申す!その鉢植えに対するいわれ無き罵詈雑言、しかとこの耳で聞かせてもらった!儂の事を悪く言うのは構わんが、それは儂の一人娘が精魂込めて育て上げた特別な万年青!その万年青をけなす事は娘をけなす事と同義!!娘をけなす事は儂を貶めるより罪深い!かような無礼を許すわけにはいかん!かくなる上は…!」
そう言いながら腰の太刀に手をかけるとスッと抜き八相に構えます。
野「さあ、首をここへ出せ!」
若「ちょちょちょいとお待ちよ。なんだい!?あんたが持ち主かい?わ、私が悪かったよ…。そんなに大事な物だとは知らなかったんだよ。さっきはつい分かったような口をきいちまったが、実は私はまだ手代で見る目は肥えちゃいないんだよ…。…そんな半人前が見誤ったことなんだから堪忍しておくれよ!」
野「見誤ったなどとまだ言い訳をするか!勘弁ならん!己の不甲斐なさに娘を質奉公させたる下衆なる親とて鞘を収める訳にはいかぬ侮辱!さあ、おとなしく首を出せ!」
若「質奉公…?そ、そうだ!ほら、ここここに十両ある。金に困ってんだろ?これを娘さんを迎える借金の返済に当てるといいよ。これじゃ足りないってんなら店に帰ればまだいくらでもあるから!きょ、今日のところはこれで刀を収めて…な?勘弁しておくれよ…」
野「なにぃ?金で許しを乞うなど浅ましい男め。いいから早くこちらへ来い!!」
八「おいおい話が違うよおい!清さんわざと嘘を言ったね?温厚さのかけらもないじゃないか!あいつぁいきなり首を落とすつもりだよ!あのね、確かに若旦那のことはなんとかしてギャフンと言わせたいけどね。さすがに首切っちゃうのは可哀想じゃないかい!?」
清「……伝わり方に多少の誤差があったようですね…。しかし私もここまで激昂するとは思っていなかったのですが、冷静に考えると目の前で首が飛ぶのはこちらも夢見が悪いですね…」
八「あれだけはっきり言って誤差だって言いやがる。今まで何されたか知らねえがずいぶん恨みが溜まってんねこりゃ。こいつを怒らせるのが一番怖ぇや。じゃあ俺ぁ止めるよ?いいね?…はいはいはい、旦那ちょっとお待ちよ。確かにこの若旦那はどうしようもない!全面的に悪い!悪いよ?まあそうなんだけど!そこまでやるこたぁないんじゃないかい?」
野「誰だね君は!?」
清「野角の旦那、清兵衛です。そいつは私の連れの八って男です。元はと言えば私が無理言って鉢植えを借りてこなければこのようなことも起こりませんでした…。ここは私に免じて刀を収めてはもらえないでしょうか?」
野「ム、清兵衛殿か。いや、これは貴殿には関わりのないこと故。…そこをどいて下され!」
茶店の店先でわあわあと何人もの男が揉み合った弾みで、縁台の上に置いてあった万年青の鉢植えに野角の腰がこつんと当たってしまいます。
野「うわっと!危ない!」
野角は慌てて鉢植えをつかんで抱え込むと、
若「…しめた!」
と若旦那はその一瞬の隙にふところから掴んだだけの小銭を縁台に叩きつけると、
若「すみませんでした!ごちそうさま〜!」
とわけも分からず駆け出して逃げて行きます。
花「…ああ!若旦那!今日の菊のお手入れは!?」
若「お花さんすみません!!もう水を差すのは止すことにしました」
(終)
◇◇◇◇◇◇◇◇
あとがき
2020年の新作落語台本募集に応募して落選した作品を、一部読みやすいように改変したものです。全体的に説明が長いかな…。もっとくすぐりを入れたかったですね。
もし、万が一、やってみたいという方がおられましたらこちらへご連絡ください。お待ちしています。(@RakugoTiwt)
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あとがき追記(2020.10.6)
読者の方から一部指摘を頂きましたので、読んでいてひっかかりそうな部分に解説を入れることにしました。擬古典として成立するよう色々と調べたものとなっています。もし興味がありましたら読んでみて頂けたら幸いです。
舞台設定:
江戸時代後期、園芸文化の栄えた文化・文政の辺りをイメージしています。
場所は、造園業が盛んだった巣鴨・駒込もしくは谷中・根津・千駄木辺り。
言葉使い:
この作品ではすべて江戸時代の言葉を使っている訳ではありません。その理由は、言葉の伝わりやすさを優先したのと、コンテストの締め切りまで推敲する時間が不足していたのと…。古典落語でも現代の言葉を混ぜて使う落語家さんを免罪符として、許される範囲と思っていただけたら幸いです…。
※例えば「園芸」「妖精」「八百長」などはまだなかった言葉でしょう。「混沌」「時間」「能力」「具体的」なども怪しいところです。
清兵衛の口調:
清兵衛ほど現代の標準語に近い言葉だけを喋る人間はいなかったことでしょう。しかし、「口調は丁寧で、危険な考えは度を越している」という、彼のサイコパスな性格を表す表現として、また単純に私の力量不足もあって、このような口調で通すことにしました。
相撲と八百長:
「八百長」という言葉自体は明治時代にできた言葉だそうですが、取組みでわざと負けるようなことは江戸時代に実際あったのでしょうか?
残念ながら私が調べた範囲ではその真相は分かりませんでしたが、古典落語で八百長相撲が行われる「佐野山」、替え玉で取組みをする「花筏」などの噺があるところを見ると、実際に八百長が行われた可能性は高いと思われます。
(当然、相撲の八百長や博打の裏話に関する本は無かったと思われますが)
野角明只(のずみあきただ)のモデル:
江戸後期の旗本であり園芸家の、水野忠暁(みずのただあき 又は ただとし)の名前を借りた上でアナグラムにしています。
水野忠暁は、園芸植物の中でも特に「奇品」と呼ばれる葉変わりものに特化した書籍を書き上げており、特に好んでいたのが万年青と言われています。
・主な著作:「草木綿葉集」「小おもと名寄」「実生小不老草奇品寄」
「園芸」という趣味:
江戸時代の三大道楽は、釣り道楽、文芸道楽、園芸道楽で、園芸は庶民にとってもメジャーな趣味であったと言われています。
では、八つぁんはなぜ驚いたのか?それは、園芸は野角のように身を滅ぼすような危険な道楽とは考えられていなかったからです。
特に園芸の中でも「奇品」と呼ばれる、変化した葉のみに注目しそれを味わいとする、江戸時代の日本のみにみられる非常に特異な愛好文化の上にある園芸植物のジャンルで、実際に一部の武士や愛好家に好まれていました。本作の野角はその愛好家であり、一攫千金も狙っていて、奥さんが不在なのはそこが理由でもあります。このように園芸によって身を滅ぼすような人物はごく少数であったと思われ、特に八つぁんのような一般の町人が知る世界ではなかったであろうと考え、「驚く」に至っています。
また、否定的な意味の道楽としては、酒道楽、女道楽、博打道楽などがあり、本作中では「道楽」は文脈的にそちらの意味なので、続けて酒道楽と女道楽という言葉を出しています。
家々の配置:
本作では、茶店の向かいが野角明只の家、その隣が清兵衛の家という配置となっています。
娘を質奉公させるほど貧乏な野角は当然裏長屋に住んでいたことでしょう。すると、店というのは普通表通りに面していますから、茶店の裏に野角も清兵衛も住んでいることになります。表の店とその裏長屋との距離はごくごく近いので、本作の雰囲気のような大通りを挟んだような距離はなかったはずです。
これは脱稿した後に調べていて知ったことなので直せなかったのですが、嘘とは言わないまでも、あまり無さそうな配置にしてしまったのは反省点です。
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あとがき追記(2021.11.18)
note創作大賞2022に合わせてハッシュタグを追加しました。
それに伴ってざっと読み直して読みづらそうな部分を修正しましたが、改めて読み直してみると説明的なセリフが多いですね…。
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