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吃音の「ペントラム・セラピー」

おはようございます。いわたコトバのそうだん室言語聴覚士の岩田です。

いわたコトバのそうだん室では吃音の相談もかなり多いので、吃音の投稿が続いています、
今日は「リッカムプログラム」「流暢性形成法」「吃音緩和法」「環境調整」などに比べてあまり知られていない「ペントラムセラピー」という技法についてです。(かなりニッチです笑)

吃音はこれまでの研究で情緒や情動に弱さを持つ子供が多いことが分かっています。
ペントラムセラピーは発声や発話への直接訓練ではなく、そうした心の問題に目を向ける方法になります。

これは子供が訓練室に入ると不安や緊張を示したり、対人過敏症などの気質や情動の問題がみられる場合で、そういう子供の感じている不安や不自由感、緊張といった生活の中で感じているものの改善を図るというものになります。

ペントラムセラピーとは

ペントラムセラピーは内須川・早坂さんが開発した情緒や情動の問題を伴う吃音がある子供のための指導法で、子供の情動の変化を振り子に例えています(ペントラムは振り子のこと)

ペントラムセラピーは、大人が次の「ペントラムセラピーの基本的な接し方」のような対応をすることで、子供の抑圧されていた主張や行動が一度エスカレートした後に、再び沈静化するという現象が起きます。
その、①自己主張(問題行動も含む)②→主張や問題行動のエスカレート→③沈静という流れを利用して情動や情緒を安定させます。
(一度抑圧されていた感情を爆発させるというところが特徴的)


【ペントラムセラピーの基本的な接し方】

子供に対する要求を下げる

→訓練場面を「特別な場所」としてルールを大幅に緩める。
→目標を低めに設定する

子供の主張や行動を可能な限り受け入れる

→受容的な態度の徹底
→子供の否定的な表現や行動もできる限り受け入れるように努力する

主張や行動を増大させるための仕掛けを作る

→大人も楽しんでいる
→大人も失敗したりするなど「隙」をあるところを見せる
→ごっこ遊びなどでは子供にヒーロー役。大人に怪獣役などをしてもらうなど


ペントラムセラピーの基本経過

このような基本的な対応を続けていくと子供の情動は次のような段階1〜段階4のような流れを経て、沈静化していくと言われています。

段階1・・・子供の主張を受け入れていくと望ましい主張や行動だけではなく、否定的な行動も出てきて(悪態をつく、物を叩くなど)、自分の行動が相手に受け入れてもらえるかどうかを試すようになる

段階2・・否定的な行動を受け入れていくと、徐々にその行動がエスカレートしてくる。(相手を叩く、汚い言葉を使う、物を投げるなど、)

段階3・・エスカレートした行動も受け入れていくと、次第に過激な行動は見られなくなり、言葉で落ち着いて表現できるようになる。「こっちがしたいんだ」「これは嫌だ」など

段階4・・相手が行動を受け入れなくても情動が不安定になったり、消極的な行動、過敏性を示さずに、自分から行動できるようになる。

こうして普段の生活の中で不安なことやストレス、プレッシャーがあったとしても、情緒が安定して落ち着いて対応できるようになっていきます。

注意点

ペントラムセラピーは訓練室だけではなくて家庭でも行うことが勧められていますが、、家庭でも行う際には次のことに注意をする必要があります。
①両親への負担が大きすぎる
②教育方針との矛盾が生じやすい
③兄弟や同居親族への対応の難しさ
などが挙げられます。

そのためご家庭でも行う際には、どれくらいの主張まで受け入れるかなど基準を決めておく必要があるかもしれません。

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