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ビジョナリー・カンパニーZERO 【 #読書の秋 】

■ はじめに

 今回、紹介する本はビジョナリー・カンパニーZEROです。

ビジョナリー・カンパニーZERO 
ジム・コリンズ,ビル・ラジアー,土方奈美(翻訳),日経BP(2021年)

世界1000万部超ベストセラーシリーズ『ビジョナリー・カンパニー』の原点で最新刊!
本書『ビジョナリー・カンパニーZERO』は、『ビジョナリー・カンパニー』シリーズが発行される前の1992年にジム・コリンズが記し、日本語訳されずにいた名著『Beyond Entrepreneurship』の改訂版。まさに、ビジョナリー・カンパニーの原点だ。

「本書は誰よりもどの本よりも、私のリーダシップを一変させてくれた。10年以上この本を読み返した。起業家なら、86ページ分を暗記せよ」
――リード・ヘイスティングス NETFLIX共同創業者兼CEO
(内容紹介欄より引用)

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 読み終えてまず思ったことは「お得すぎる!」ということ。これだけ豊富な事例、モデル、そして導き出される思考をこの値段で手にしてしまってよいものなのか。一過性のブームではなく、シリーズ通して長く支持される理由が詰まっています。

 私は「ビジョナリー・カンパニー」シリーズを既に読んでいます。今回のZEROは改訂版であり、シリーズの一部集約版でもあります。それでもより深く理解でき、新たな気付きがありました。特に冒頭のジム・コリンズ氏と恩師ビル氏との出会いの物語では、本書で描かれているビジョンが生まれた背景を知ることができ、それだけでも価値がありました。

 経営という分野に正解はなく、また時代とともに事例やモデルは更新されます。当該シリーズが支持される理由は、豊富な情報やモデルが提示され更新され続ける「実用面」だけでなく、逆に「変わらない部分」があるからでしょう。それこそメインメッセージの「概念(哲学)」です。ジム・コリンズ氏の「企業はこうあってほしい」と願う信念は、ブレることなく情熱とともに伝わってきます。

 シリーズを読んでいる方にも読んでいない方にもお勧めの1冊。いや、経営者・起業家はもちろん、企業経営に携わっていない人にもお勧めできます。その理由を、図解とともに記していこうと思います!

■ 図解

⑴ メインメッセージは「人間関係」 

 本書をピラミッドストラクチャーで図解してみました。

スライド1

【 本書を当てはめてみました ↓ 】

note書評


 ビジョナリー・カンパニーとは永続的に偉大である企業という意味であり、本書の問いテーマは、常に社会に求められる偉大な企業になるにはどうすべきかというものです。

 私は、ジム・コリンズ氏の答えメインメッセージ「人が大切である」と読み取りました。

 人が大切であるということは「=採用・人財育成」ではありません。大切にすべき「人」は、以下の通り。

⑴ 経営者自身
 ・・・ 人生の成功は富ではなく、良き出会いや人間関係を築くこと
⑵ 人材
 ・・・ リーダーの育成、重視する採用ポイントと適材適所な配置
⑶ 企業全体(企業文化)
 ・・・ 企業は個の集合体であり偉大なパーパスやビジョンを共有すること

 戦略の中で、根底にある概念が「人を活かす」というものであれば、経営者・起業家だけでなく、多くの方に共感できる内容だと思います。

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⑵ 情熱的な「思い」と「情報量」

 長年の研究を集約した本書は、豊富な情報量が魅力です。例えば、事例検証でHPの取締役会でのやり取りが紹介されたと思えば、続けてアップルのジョブズが生前述べた思考が紹介され、次の段落では各事例をまとめた経営モデルが展開される。貴重な情報がポンポンと投げ入れられ、必死にキャッチし続けるような読書になります。

スライド2

 それでも、どんどんページをめくりたくなります。それは、提示された情報を活かすための概念(思考・哲学)が、所々に散りばめられているからだと思います。

 例えば、ジム・コリンズ氏が作成した偉大な企業を作るためのモデル「ザ・マップ」が紹介されている第6章。実用的なモデルに心を躍らせ「早速取り入れたい」と意欲が湧いたとき、結びに以下のような文章が登場します。 

マップは偉大な成果を保証するものではない。だがそこに登場する原則を喜び勇んで熱心に実践すれば、そうしない場合と比べて偉大な企業を育てられる確率は大幅に高くなるはずだ。その過程で図らずも、いわば副産物として、心から敬愛する仲間と有意義な仕事をする喜びを日々実感できるようになるかもしれない。それほど幸せな人生もなかなかない。(282頁)

 実践することが目的ではない。実践することは目的達成のためのプロセス。また、大切なのはやりがいのある幸せな人生であることを忘れてはならない。ジム・コリンズ氏のメインメッセージと思われる哲学が登場する事で、実用面と概念のバランスが均衡します。 

スライド3

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■ おわりに

 「人を大切にしない経営」を目指そうという方はほとんどいないと思います。先にも述べたように、ここでいう人は経営者自身も含まれるためです。

 ただ、目指していなくても現実の問題に追われ、概念(思考)の部分まで「利益」や「資金」を最優先にしてしまうケースはあります。厳しい状況下で見失いそうでも、本書は、経営のビジョンは「人」の幸せを追求することであるということを思い出させてくれます。幸せとは生きがいに出会い、意欲的であること。

 今回の感想、本書の「実用面」についてほとんど触れませんでした。理由は、この実用面を紹介しだしたら、キリがないためです。やるなら、通年の経営セミナーを企画したほうが良さそうです。それがこの感想文の第一声「お得すぎる!」に繋がります。

 最後に、本書にはたくさん名言があります。響いた言葉はたくさんありますが、小さな零細企業を経営している自分が、今特に好きな文章を2つ選んでみました。

【 リーダーシップについて 】
 真のリーダーシップとは、従わない自由があるにもかかわらず、人々が付いてくることだ。-略- リーダーシップとは「サイエンス(理屈)」ではなく「アート(技能)」だ。(79頁)

【 人間関係について 】
 「幸運な出会い」はいつ訪れるかわからないが、人生に何度も起きることは確かだ。あらゆることを「幸運な出会い」というレンズでとらえなおすと、つまり幸運な「出来事」を「出会い」という視点で見直すと、幸運の出会いに気づきやすくなる。(50頁)

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■ 蛇足:幸運な出会い

 ここからは私と本書との出会いのお話です。感想ではありませんので、興味のある方だけご覧ください。

 私は「ビジョナリー・カンパニー」シリーズを人生で3回、薦められて読む機会がありました。

 1度目は大学生の頃。経営学の授業の参考教材として。当時、私は就職するか、家業の継ぎ税理士を目指すかの分岐点にいました。簿記の勉強がつまらなくて「これを一生やるなんて嫌だな」と思っていた頃、経営学の先生の授業が楽しくて、本書のシリーズや経営学の名著に出会いました。

 2度目は20代後半、大学院の社会人過程に入り、経営学を学んでいた時。経営組織論の中村教授は元敏腕サラリーマンで、実務に活かすために経営学の研究を進めていたところ、最終的に博士号を取得したという先生でした。研究室に行きお茶をしていると、本棚にズラッと並んだ名著をたくさん薦めていただきました。「これは読んだ?」と問われ「大学の時、読みました」と答えると「どうだった?」と問われます。「企業の目的とか理念が大切だということが分かりました」というような回答をすると「う~ん、ちょっと浅いな~笑」と首を傾げながらニコニコ返されます。「具体的な組織論の内容も大切なんだけどね、やっぱり名著を読んだときは学者が伝えたい概念とか核の部分に気付かないとだね~」と言われ、解説を受け、納得しました。

 そして3度目は、今回「#読書の秋」という企画を通じて。先日、定期的に経営の意見交換をする友人に会い、お互いこの本を読んでいたので語り合いました。友人は非常に勉強家なので、普段は学ばせてもらうことのほうが多いです。ただ今回は「ちょっと浅いな~」と思いました 笑。なんせ敏腕教授のレクチャーを受けるという出会いが数年前にありましたからね!

 世界的企業の組織戦略モデルや背景に興味津々だった大学時代。
 表面だけでなく、著者の思考を読み解くことを知った大学院時代。
 実務を通して、著者に思考により共感している今。

 まだまだ浅いですが、本書だけでも「3回読む機会があった」のではなく「3回教えてくれる、一緒に学べる人」に出会えました。ジム・コリンズ氏と、出会えた方々に感謝です。

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【 参加企画 】

#読書の秋2021 #ビジョナリーZERO
#推薦図書 #ビジネス

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岩下 尚義(税理士)
お読みいただき、ありがとうございました。 FB:https://www.facebook.com/takayoshi.iwashita ㏋:https://ibc-tax.com/

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