ノンルーティンへのシフト 【 #社長に出社してほしいですか 】
中小企業の社長と話をしていると、社長業のスタンスはそれぞれ。
「私の仕事は、人と会う事」
「現場の最前線で、エースとして活躍したい」
「私がいなくても正常に、そして永続的に回る組織を作りたい」
経営学、企業組織論などに照らせば、これらの回答は正解・不正解が分かれるかもしれません。実務では、それぞれの社長の理念や方向性を尊重しつつ、やはり継続できる組織作りを提案する日々です。
これは単純な「テレワークの是非」ではなく、経営者の「社長業への考え方」にも通じるものではないか。大きなテーマに感じました。
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社員目線ではなく、経営者目線で、こちらの企画に回答します。
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■ 回答
・理想は、社長が定期的にテレワーク勤務することは可能という状態
・理念や方向性を確認、組織としての一体感をキープするには定期的な出勤もほしい
・常に会社にいなければいけない=社長が優秀なプレイヤーであるため
ざっと箇条書きで回答しました。
テレワーク勤務の是非は、業種や規模にもよると思いますが、社長の「立ち位置」「タスク内容」がキーポイントになるのではないかと思います。
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■ 立ち位置
定番のカッツ理論を用います(職位によって必要になる能力が変わるという理論)。
例えば、もともと社長業が「概念化(創造性・決断力など)」と「対人」でかなりのウエイトを占めている社長は、コロナ禍以前でも対外的な活動が多く、本社にずっといたわけではありません。それでも組織が正常に動いてきたという事は、別にコロナ禍問わず、定期的なテレワーク勤務が可能な状態だった可能性が高いです。
都内と違い、自家用車通勤が主の地方の場合、テレワークよりも「対策しながら出社」というスタイルが圧倒的に多いです。そのため、コロナ禍で会合が中止になったり、対人業務もZOOM等になり「以前よりも社長がやたら会社にいるなぁ……」という逆転現象が結構起きています。
一方、少数精鋭で経営者が経営者兼プレイヤーとして、現場の最前線で指揮を執るような会社であれば、テレワーク勤務のハードルが非常に高くなるでしょう。理想は「経営者は経営者の仕事を」なのですが、やはり専門性が高い分野や中小零細は、社長の現場能力が突出しているケースも多いです。
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■ タスク
三菱総合研究所で以下のようなレビューがあります。これから必要となる人材戦略のレビューで、私も学生向けの講義やお客様への説明の際、日々参考にしています。
この中の図解が非常に分かりやすいので、引用します。
① 仕事を「ルーティン⇔ノンルーティン」「マニュアル⇔コグニティブ」で分けた図
② 現状(2015年)の業種とマッピング図
このレビュー自体は、これからの人材戦略を考察するものですが、今回COMEMOのテーマである社長業は、以下の特徴でマッピングされています。
社長業(会社役員)= ノンルーティン × コグニティブ
社長業のタスク =(独創性・意思決定) 経営・企画・開発・設計
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レビューでは、今後AIなどの影響で「ノンルーティン」の領域が唯一のブルーオーシャンだと示しています。会社役員もこのゾーンに属します。
もちろんブルーオーシャンが全てではありません。AIにはできない専門性の高い手仕事などもあります。ブルーオーシャンを目指すのではなく、敢えて例外的な部分、ニッチな部分に商機があることもあります。
ただ一般論としては、社長の仕事が現場だけにとどまらず、ノンルーティン(経営など)の領域を強化できるかどうか。従来から言われている学問的な理想に加え、今後の変化に対応する点でも課題になってきそうです。
現場も見ながら、先も見る。「仕事場はどこか」がテーマの企画でしたが働く場よりも「視点をどこに置くか」という、より大きなテーマに感じました。
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■ 終わりに
今回のCOMEMO企画「社長のテレワーク勤務の是非」は、もしコロナ禍が収束した場合でも、これから待ち受けるAIとの共存が可能か否か?というリトマス紙のようなテーマなのかもしれません。
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先日、みずほ銀行の配置転換の記事が話題になりました。
みずほ銀行は2023年度末までに、事務員のうち約3割の3千人程度を資産運用の相談を受け持つ営業に再配置する計画だ。口座開設や振り込みなど定型的な業務をデジタル化し、店舗の事務量を大幅に減らして捻出する。業務の効率化で経費削減と営業力の底上げを図る。(2020.9.24日経)
先ほどの三菱総合研究所の図解で言えば、リーティン⇒ノンルーティンの転換です。賛否や様々な意見があると思いますが、みずほ銀行に問わず、大手のこのような動きは活発化しています。
私もセミナーや税制の解説などの資料作成は、従来、普段の業務と同じく事務所でやっていましたが、今は創作的な仕事を全て自宅でやっています。(定期的なテレワークというよりも、残業時間が自宅にうつったような状態なので、試行錯誤中ですが……。)
経営者として何をすべきか、何をしたいか。久々のCOMEMO企画への回答は、自分自身への課題として返ってきました。
お読みいただき、ありがとうございました。 FB:https://www.facebook.com/takayoshi.iwashita ㏋:https://ibc-tax.com/