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私、NOTEやっています【第2話】


第2話「みるく×遅刻未遂×くっきー」


「とはいったけどさあ……」

帰宅後、手持ちのスマホでNOTEのサイトを立ち上げてはみたものの、私は途方にくれていた。

だって、急に何か書けって言われたって、何も思い付かないって……。

むしろそこまでもまだ辿り着けていないっぽい。「サイトのトップページのどこをクリックしたらどうなるか」さえ把握できていないのだ。

そもそも始まりからして、かなめがつきっきりで「そこクリックして。そう、そのフォローって書いてるボタンをクリック。これで私のアカウントフォローできたから」などと教えてくれて、何とかかなめの書き込みだけをギリギリ読めている状況だった。

「どうなってんの、これ……」

恐る恐るスクロールしていたけれどよく分からなくて、結局Google先生に「NOTE 書き方」と聞いて検索して、しばらく表示されたサイトに目を通すことになった。

ーーそして、寝落ちした。

いつの間にか朝になっていた。何の気なくスマホの表示部分をボケた視界にとらえて。そういえば、まだNOTEのこと調べる途中だったな……と思い出しながら画面の、時刻表示の部分をふと眺めて。私は飛び起きる。

やばい!!
仕事、遅刻する……!!

もはやNOTEどころではなくなった。慌てて身支度を整え、クッキーっぽい形状の栄養補助食品を頬張り牛乳で流し込んで、私は電車に飛び乗ることになったのだった。

ゼイゼイと息を切らしながらも何とかいつもの電車に乗ることができて、私はようやくひと安心の息を吐く。

そういえば、漫画のキャラがよくパンをくわえながら「遅刻遅刻~!!」って走る展開、昔たまに見てたけど、最近はパンじゃなくて、私みたいに棒状のクッキーやチョコバーっぽいやつか、ゼリー飲料系あたりを食べながら好きな子とぶつかって恋するのかなあ……。

一気に気が緩んだのか、結構どうでもいいことを自然と考えてしまう。車内がギチギチに混んでいたのでろくに身動きできずスマホをいじることもできないから、とりわけ下らない妄想で会社最寄りの駅までの時間を潰すしかない。

……私は、今日はぶつからなかったなあ、特に誰とも。恋も始まらなかったなあ。

いや、逆に悪いこともなかったから、これでよかったんだよね。ぶつかって怒られたり怪我したりさせたり、っていうキツい展開だって考えられるんだから。

何とか遅刻もせずに済みそうだし、他人に迷惑をかけない、ぶつかり女にもならないという栄誉を私は得たんだ。うん、そういうことにしとこう。

最良ではなさそうだけど、「悪くない1日」の始まりだよ、きっと。

……などと、25歳恋人なし趣味なし独身女は自分で自分をあやして機嫌を取り、さして生き甲斐を感じるわけでもない仕事のために何となくメンタルを保つのでした、っと。





[つづく]


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鰯野つみれ
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