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黄金に輝くフレームの中の上野


母が美術館が好きなのを知っている。
でも、どんな展示が好きなのかは知らない。

弟が生まれる前に、母はよく中央線に乗って兄とわたしを上野の美術館へ連れていってくれた。見ず知らずの同世代の子たちと列を成して、今にも動き出しそうな動物たちと視線を合わせて心を躍らせた。この頃わたしは一体、母とどんな会話をしていたのだろうか?

その日は父もいた。父と母と兄とわたしの4人で、冬のたぶん土曜日。
上野の公園口改札を出ると、さらにたくさんの人で溢れていた。はぐれないように人の波にぶつからないように、父か母か、わたしは引かれる右手に進行を任せて、厚い曇に覆われた空を見上げながら歩いていた。信号を渡って右方向に方向転換したところで、アラブ系の男の人と目があった。その人は微笑んでわたしの頭を優しく撫でて通り過ぎていった。一瞬の出来事だった。人混みの中でわたしの手を弾く人はそれに気づくはずはなかった。すぐにそのことを報告したように思うけど、うまく説明できなかった。

帰りの電車は暖かかった。たくさんの人が乗っていたけど、どこかの駅で座ることができた。隣にはお父さんだったか、お母さんだったか。見えないけどそう遠くないところに兄たちもいる。わたしは安心に包まれて駅に着くまで眠りに落ちた。駅からは、赤い自転車のボックスカゴにて入れられ自宅まで帰った。兄はボックスカゴのついていないグレーの自転車の後ろだった。

季節も天気もわたしの幸せをコントロールできない。

葉っぱの緑
エメラルドグリーン
植物
自然
上野公園と上野の森科学博物館
お弁当の肉巻きと甘い卵焼き
オムライス
消毒の匂い
世界不思議発見で世界を旅するお母さん
この木なんの木気になる木
わたしの好きなものは、お母さん。

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