お母さんはわたしの秘密の手紙を読んだ。
何歳の頃だったんだろう。
たぶん小学3、4年生の頃だったと思う。
母への憎しの感情を吐き出すために便箋に気持ちをぶちまけたことがあった。もしかしたらことある度に書いていたかもしれない。
あまりよく思い出せないけど、しね!とかそんな感じだ。
当時の重要な感情処理方法だったのだろう。
女の子同士で文通や交換日記や小さなメモ書きの手紙のやり取りが頻繁に行われていた頃だった。
もちろん読ませるつもりなんて微塵もないから、溢れる憎しみを正直に全部書き綴った。そして何を思ったかわたしはその手紙を、小さな黒いレザーのお気に入りのリュックに隠していた。それとも庭に埋めていたのかもしれない。どちらにしてもバカな選択だ。
母はわたしが隠しておいた手紙を読んだ。
庭先で、腕を掴まれてものすごく怒られているわたしがいる。
この時の記憶が、あまりない。
「あんたがどんな思いでも、親子の関係は一生なくならないんだからね!」
母も逃れられないわたしとの親子関係に、どうにか折り合いをつけるために葛藤していたのかもしれない。この言葉だけを覚えている。
わたしはこの言葉を聞いて、ああ、そうなのか。こうまでしてもこの人はわたしの気持ちがわからないんだ、と思った。わたしが心の底で本当に望んでいるのは、この関係を母が修復してくれることなのに。
母との溝はもう一生埋まらないと思った時だった。
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