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父と母。

わたしに初めて料理の作り方を教えてくれたのは、親友のお母さんだった。

その親友の家によく泊まって、同じ高校へ通う親友が登校してている間、なぜかわたしだけが彼女の家で熟睡し続け、彼女が帰宅するのを彼女のお母さんと一緒に待ったりしていた。
その彼女のお母さんはいよいよわたしが一人暮らしをする時、いつまでも寝続けられるわたしのために、爆音のする薄桃色(わたしには少しラブリーすぎる)の目覚ましどけをプレゼントしてくれた。涙が出るほど嬉しかったけど、涙は必死に我慢した。あの頃は、まるで友達同士のように仲の良い親子エピソードを聞くと羨ましくて胸が痛かった。

親と対等にコミュニケーションがとれていない子には共通点がある。

わたしはずっと、 ー例えば短期でどこかに暮らした時の近所の人や、仕事がらみの人、旅先で出会う人などー 両親ほどのまたはそれ以上の年齢の人との関係が、なぜかすこぶる良い。お父さん、お母さんと呼んで親しみ、彼らも娘のように可愛がってくれる。自然と色々な場所にお父さんとお母さんのような存在ができた。
わたしが出会った彼らと同じように、自分の両親に振る舞えたらよかったのだろうか?
父と母は、なぜ彼らのようにわたしには接してはくれなかったのだろうか?
父と母との関係に不具合がなければ、こういった関係を外で経験することはなかったかもしれない。

あの頃の気持ちを思い出す。事実を取りこぼさないようにそっとぜんぶ受け止め直す。その経験を感情を、すべて心ゆくまで味わい尽くすのだから。

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