HOTEL 機能不全家族。
秘密にしていたわけではないけれど、
家の中で、わたしは母の足音や声にいつも緊張していた。
彼女の感情は、わざとわたしに聞こえるように乱暴なバタバタというスリッパの足音に変換される。「今から行くわよ」2階の部屋にいるわたしを監視しにくる時の合図だ。
「ただいま」「おかえり」「おはよう」
家の中での挨拶は、当てつけのような乱暴な言葉にしか聞こえなかった。会話がないんだからせめて挨拶くらいしっかりしなさいよ。という母が決めたこの家の最低ルールだったのだと思う。無駄な見せかけだと