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【映画レビュー】グラディエーターII 英雄を呼ぶ声(2024):ネタバレあり

視聴前に情報を仕入れておかなくて、大正解。

なるほど、どうしてあの有名なラッセル・クロウの次に、あまり有名じゃないポール・メスカルを起用するんだろう、話題性や、主人公としてのインパクトがない気が、と思ってました。事前情報でももう名前からしてネタバレしてる映画だったんですね。映画の公式ページでも、主人公の名前はハンノじゃなく、ルシウスになってました。知らなかったおかげで、序盤は「……?あ、なるほど、そういうことか!」っていう助走を楽しめました。笑 たしかに顔が似てます。納得。

で、今作でむしろ美点だったのは、あの映像作家リドリー・スコットが、たしかに一大スペクタクル映画ではあるけど、耽美的な映像に懲り過ぎなかったところな気もします。キングダム・オブ・ヘブンなんかは、ストーリーは結構ぼやけてるくせに、映像の美しさには全力みたいな映画だったので、ただ絵がいいだけでは、リドリー・スコットといえどダメだと、ずいぶん前に学んでいた次第です。その点で今作は、美しさよりも迫力重視な絵作りにとどめたことが奏功して、むしろストーリーが強調されたように思います。良い点です。

あと、ストーリーとしては第二作目というよりも、これは英語でいうsequel、つまり連続ものですね。すでに第一作目は24年前らしいですが、その流れや登場人物、出来事を、なるべく持ち出して、そして引き取って、その顛末、結末を見せてくれてます。事前に情報を仕入れてなかったので、こんなに続編続編してるとは思わず、むしろ、感謝でした。

登場人物のキャラも立ってますね。兄弟皇帝のゲントとカラカラ、特に後者はローマ皇帝の中でも有名な一人です。白塗りの超絶お坊ちゃま、サイコパス、悪趣味、道化の立ち位置がとてもうまく表現されてました。ペドロ・パスカル演じる将軍アカシウス。いい役ですね。つまり前作のラッセル・クロウが演じたマキシマスの継承者です。主人公ルシウスとは違う形での継承者なわけですね。

そして外せないのはデンゼル・ワシントン演じるマクリヌス。憎めるような憎めないような策士でもあり、私怨に突き動かされてるんですが、個人への復讐を大きく超えて、ローマ帝国を中から崩壊させるという、とても大きな野望の実現に向けて、着々と近づいていきます。最後は、あんたも戦うんかい、と思いましたけど、なかなか印象に残る最後でした。ルシウスが途中で結構、必ず殺してやる、とか、わかりやすーいフラグを立てるんですが、その辺も難解な歴史スペクタクルをわかりやすくアクションスペクタクルに仕上げたリドリー・スコットの腕だと思います。

ヒヒやらサイやら船やら、闘技場の悪趣味さが引き立っていて、第二作目ならではの遊びが感じられましたね。

あと大手オンライン雑誌でも書いてありましたが、たしかにサクサク、驚くほど軽やかに話が進んでいきます。とうとう、みたいなタメもなく、はい次とばかりにいろんな登場人物が退場していきます。感傷的でないところも、計算ずくのエンターテインメントなんでしょう。

ひとつだけ、すこし残念だった点を上げれば、それは前作で実力だしまくりだったハンス・ジマ―の音楽がないことです。前作は音楽自体の良さが引き立っていて、映画の内容はわすれても音楽は耳に残るような作品だったんですが、今作の音楽は覚えてないです。。。ハンス・ジマーの弟子が担当したらしいですが、やはり、ハンス・ジマーが偉大だったんですね。時々、第一作目でつかった音楽のアレンジが入ると、そこでやっぱり、第一作目の音楽がよかったなーと、思い出してしまう悲しさ。決して今回が悪いわけではないですが、前作が偉大でした。

と、いろいろ思い出して書いてみましたが、私は見て大正解な映画でした!2時間半は長く感じず、とてもよい映画体験ができました。

ふと、もしリドリー・スコットがブレード・ランナーの続編を作っていたら、こんな映画体験になったのかなとも思いました。本人としては、ブレード・ランナーの続編をドゥニ・ヴィルヌーヴに任せたことは失敗だった、って言ってるそうですね。それを思うと、グラディエーターは自分が続編を作ったうえで、どうだ!って、世界に知らしめたかったんじゃないでしょうか?もう御歳、86歳ですが!

以上、グラディエーターII、リドリー・スコット、ありがとうございました!

(了)


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岩澤康一
よりよい社会をみなさんと、よりよい「コミュニケーション」を通じてつくることを目指しています。これからも頑張ります。よろしければサポートのほど、お願いいたします!

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