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【ゲームレビュー・黒神話:悟空:クリア後ネタバレ】中国発大型タイトル、雰囲気満点なソウルライク、大成功と成功とのあいだ、続編にも期待!

黒神話:悟空」(遊戯科学、2024年8月20日発売)のプレイレビューです。

大国中国発の大型AAAタイトルとして話題になりました。発売から2週間で1,800万本を売り上げた、2024年ゲーム業界の目玉の一つでした(ゲーム・オブ・ザ・イヤー<GOTY>は逃しました)。

トロコン(トロフィーをコンプリート)済みで、二周しました(二周しないとトロコンできない仕様です)。

総評:中国を思う存分感じた100時間超、有意義なり

やってよかったです。大国中国の今を知る意味でも、大いに意味はありました。中国語ばかりを聞きながら100時間以上プレイしたゲームは、私にとっては今のところ、本作だけです。

プレイするゲームを選ぶときに、そのプレイすることで得られるものなどを期待して選ぶわけですが、本作に期待した「中国の今を感じる」「中国ゲームのクオリティを知る」「中国語や文化に親しむ」「西遊記にすこし詳しくなる」などの目標は達成できたと思います。ちなみに以前レビューを書いた「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」をプレイする前は「北欧神話にすこし詳しくなる」という目標を達成しています。

その他のゲームとの相対比較では、私がいままでにプレイした「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズには及ばず、ファイナル・ファンタジーXVIよりすこし下ぐらいの評価です。FFシリーズはファミコンの頃から知っているので思い出補正が入ってますから、「黒神話:悟空」は私にとって、それなりに高い評価、印象だったという位置づけになります。古いところでは、個人的には「ベイグランドストーリー」の評価に近い気がしてます。今後、本作の続編が出れば、また評価が変わるかもしれません。

また、本作は、本作ならではという点よりも、類似作品のよいところをいろいろとかいつまんであるような印象です。その意味で、先行作品の良さをふまえた上で、アクションRPGでソウルライク系統というジャンルを意識した、実験よりも成功をしっかりと目指した作品大国中国の威信をかけて失敗できなかった作品だったと思います。GOTYは逃したものの、しっかりと合格点だったのではないでしょうか。

映像も音楽も、中国中国な雰囲気が満点

映像は美麗かつ雰囲気満点。音楽は効果音とBGM双方に、これも雰囲気満点。雰囲気というのはつまり、中国っぽさ、って意味です。これを感じられただけでも高評価でした。中国語でプレイしたので、さらに中国文化を浴びられた100時間超でした。

ところどころに漢詩みたいなセリフが混じるのですが、字幕が小さすぎたり、意味がわかりにくかったりです。でも、この意味のわからなさっぷりが、むしろ、中国中国していて、お気に入りでした。章末にはいるアニメや人形劇なども、単体で作品として楽しめる内容で、いろいろな工夫が感じられました。

第一章は深い森の中(幽谷っていうんでしょうか)。第二章はシルクロード的な乾燥地帯(土漠、砂漠、岩山など)。第三章は雪山とお寺。第四章は洞窟と村。第五章は火山。第六章は空の上。ステージごとによいキャラ付けがされてました。私は特に、シルクロード好きなので、第二章の景観が好きでした。西遊記もだいたい、こんな感じのロケーションが多かった気がします。ちなみに、ゲーム内の属性要素としては、火、氷、毒、雷の四つがあるのですが、それぞれがバランスよく、ステージの違いにも表れていたと思います。雷はステージというより、四匹の龍などが代表してますが、この四匹の龍と戦うためには、攻略情報などを調べないと見つけられない仕様な点は、ご愛嬌です(だいたい最近のプレイヤーはすぐに調べて知ってますが)。

セーブポイントとボスとの間をマラソン、これぞ「死にゲー」

ちなみに私はこれまで、いわゆるソウルライク(日本が誇るゲーム制作会社フロム・ソフトウェア社の「DARK SOULS」シリーズのようなゲームという意味の業界用語)なタイトルを、プレイしたことがありませんでした。同社の「DARK SOULS」「Bloodborne」「SEKIRO」「ELDEN RINGS」などは、ほとんどYouTubeのゲーム実況でカバーしてます。でもソウルライクなタイトルをプレイしたのは、この「黒神話:悟空」がはじめてでした。

ソウルライクなゲームにはアクションRPGが多いです。その最たる特徴は、いわゆる「死にゲー」です。つまり、初めての対戦ではだいたいやられるけど、何度も繰り返し戦うことによって敵の攻撃パターンがわかって、それに対応した動きやスキルをすることで、最初は勝てなかった相手に勝てるようになる仕組みです。「黒神話:悟空」は完全に死にゲーでした。汗 ボスの近くにはだいたいセーブポイントがあって(ない場合はあえて難易度を上げられてます汗)、何度も死んでは、繰り返しそこから出撃を繰り返しました。 

ゲーム実況を見ただけで実際に手は動かしていないのですが、ソウルライクなフロムゲー(フロム・ソフトウェア社から出ているソウルライクなゲームタイトルの総称)にはけっこう、救済措置があります。レベル上げ、寄り道で手に入る強い武器・装備・スキル・魔法、明らかなボスの弱点などを利用すれば、歯が立たなかったボスを、プレイヤー自身のアクションスキルに頼りすぎることなく、勝てたりします。という意味では、この「黒神話:悟空」は、ソウルライクゲームの中でも難しい部類だと思います。救済措置があまりありません。

周回すると能力や装備などは高止まりするのですが、レベル(闘級)に比して、能力の伸びは頭打ちになります。つまり、長くやったからといって、それに比例してキャラクター自身があまり強くなっていかない仕組みです。言い換えると、プレイヤー自身のアクションスキルが上がらないと、結局、周回したりレベルが上がっても、ボスは強いままです。

毒敵大王が最強?百眼魔君と顕聖二郎真君よりも上?大戦の残躯はさすが

二周目をやると、いかにそのボスが本当にやっかいかどうかがわかりやすかったです(一週目も二周目も苦戦するので汗)。そうやって確かめた結果、私にとって強敵だったのはまず、「毒敵大王」(第四章の隠しエリアに登場する中ボス)です。

接近してても中距離でも、遠距離でもモーションが小さくダメージが大きい攻撃を繰り出してきます。攻撃パターンも豊富です。かつ大ダメージも多い。あと動きが早いし移動も多いので、しょっちゅう自分の視界から消えたり攻撃できない場所に移動されたりで、近くいてもこちらの攻撃がとても当てにくいです。そして弱点も特になく、手っ取り早い救済措置もない。つまり、向こうの攻撃は読みにくくて避けにくく、ダメージが多い。こちらの攻撃は当てにくい。弱点がない。なので、かなり純粋に、プレイヤー側のアクションスキルが求められる相手です。実は二周目は、ほとんどのボスは法術(魔法みたいなもの)を使うことなく、あえてハンデを課した上でも一回で倒して来れました。でもこの「毒敵大王」には、二周目でも何度も倒されました。汗 あっぱれ。

あともちろん、ネタバレ全開ですが、ラスボスの「大戦の残躯」にも何度もやられました。一度体力ゲージをゼロにした後にパワーアップして体力全開の二回戦目がはじまるパターンなのですが、こちらは減ったままですので、大変です。法術はすべて温存して二回戦目に臨んだりするのですが、途中でこちらの回復回数(瓢箪の性能によって回数が変わります。最大は10回分、1回で最大の五割五分を回復)に余裕がなくなりました。さすが本家本元、斉天大聖さまです。汗笑

と、書いてきましたが、実は特に二周目は苦戦よりもあっけなかったボスも多くいました。第五章と第六章(最終章)以外の大ボスは、法術をほぼ使わないハンデつきで、初回撃破できました。はじめてやった時の苦労がウソのようです。これは、装備がいいことに加えて、プレイヤー自身(私です汗笑)のアクションスキルが上がった(特に避けるタイミングに慣れた)ことが最大の要因だと思います。自分で褒めます。笑

一週目では第五章の大ボス(夜叉王)は、その前段階も含めて、初回撃破だったのですが、二周目では逆に数回やられてしまいました。これは、たまたま初回では立棍スタイルがはまっていて、二周目では刺棍スタイルだったからだと思います。逆に二周目は一番苦労した大ボス、第四章の百眼魔君は、二周目は初回撃破できました。隠しラスボスの顕聖二郎真君も、一週目は超苦戦で、二周目は初回撃破できたボスです。二周目の醍醐味です。

読み込まないとわからない、読んでもわからない世界設定

また、ソウルライクの他の特徴として、ゲームを貫くストーリーや世界設定などが、キャラクターやアイテムの説明(図鑑機能がある収集要素です)を読まないと、よくわからないことです。この点でも、「黒神話:悟空」はソウルライクです。膨大なテキスト情報が図鑑には収められています。このレビューを書いた後で、じっくり読み込む予定です。

でも読んでもわからないもの多いんですね。汗 この辺は、ゲームのテンポを落とさせないで、プレイヤーの間口(小学生でも楽しめる)を広げつつも、詳しく知りたい、感じたいのであれば、どうぞ山ほど読んでくださいという設計になってます。私もまだ読み込みが途中です。笑

トロコンの周回要素は個人的には不本意、ソウルライクの宿命か

個人的にはですが、トロコンに周回が必要なゲームは、けっこう迷惑です。汗笑 これが理由で、FFXVIもトロコンしてません(一週目でできることは、DLCも含めてすべてやりました)。やはり私も、いわゆる忙しい社会人の一人なので、勘弁してください。汗 とはいえ、根性で二周目もやりましたが、トロコンは一周目でできるタイトルの方が好きです。でもこれは、ソウルライクゲームのプレイヤーにとっての、「オレ強えー」なプレイ好きには好都合な仕組みですから、ソウルライクの宿命なのかもしれません。

ちなみに(もう少しぶつぶつ言わせてもらえれば)、大力王装備などが一周目で揃わないことに加えて、私は一周目で思わず、「沙二郎」の魂魄を獲得ミスしたので、その時点で二周目の覚悟を決めざる得ませんでした。親の沙国王を先に倒すことを知っていながら、沙二郎の体力をかなり減らしておけばパワーアップ後にすぐに倒せると思ってチクチクしてたのですが、思わず沙二郎を先に葬ってしまったんですね。ムービーを速攻でスキップしてロードしたのですが、時すでに遅しでした。いまとなれば、よい思い出ですが。涙

全体のボリュームに対して章立ての割合がアンバランス?容量不足が原因?

個人的なプレイ感(苦労したりなどの感情や気分の要素も含む)では、第二章をやった時に、第一章と比べると倍ぐらいやった気がして、第三章をやった時に、第二章の倍くらいやった気がして、第四章をやった時に第三章と同じくらいたくさんやった気がしました。つまり、どんどん長くて辛い、またこんなにやるのか感が募った感じです。汗汗

第三章は、谷にある牢獄みたいな場所がとても面倒(大したことない敵の攻撃を食らって、しょっちゅう落下死します)で、長ーく感じました。そのあと、改めて広ーい雪山ステージがあります。そして、終わったかと思うと、その後に広ーいお寺ステージがあって、お腹いっぱいです。第四章も、村から始まって洞窟に入ったかと思うと、その洞窟的なところが長ーく続きます。やっと出たかと思っても、寺やら村やら、隠しエリアの山やらが残っていて、長ーいという印象でした。疲れた。

でも、第五章をやった時には、あっけなく終わった気がしました。これは二周目のプレイ感も同じでした。多分これはまず、第五章って結構、見晴らしがいいし、屋外が長いし、なんだかんだ一本道なことが多いので、ステージの構造がシンプル(というか、容量の関係で失速?)なんですね。だから呆気なかったんだと思います。

第六章は、冒頭以外は筋斗雲で飛んで中ボスを倒しまくるだけなんで、ステージを歩くとすごーーーく広いんですが、プレイ感はあっさりです。確かに最後だけは意表を突いたユニークな構成、という見方もできますが、やはりプレイヤーとしては、最後こそ重厚感ある内容を望むのではないでしょうか?そこを乗り越えるからこそ、やりきった、充実したって気持ちになる気がします。なので、本作は結局、GOTYの獲得は逃しましたが、その一因は、この最終盤での失速感だった気もしてます。というか、中盤のボリュームを厚くしすぎたのではないでしょうか?このアンバランスが、プレイの疲労感(私だけ?)につながった気がしてます。

おわりに

GOTYを逃したので、制作側としては思惑とは異なった流れになったのかもしれませんが、とはいえ冒頭に書いたように、2週間で1,800万本の売上(人口世界一の中国プレイヤーたちが大貢献)を達成した本作です。本作を皮切りに、中国ゲームの台頭や席巻が始まったとの、歴史的評価に落ち着く可能性大なのだと思います。また、多くのプレイヤーが感じたはずですが、西遊記としては、沙悟浄がストーリーに出てきません。章末のアニメーションですこし姿を見せるだけにとどめています。これは本作で猪八戒に加えて沙悟浄まで登場させるだけのボリュームがなかったからかもしれませんが、続編への含みでもあると思います。三蔵法師もほぼ出てきませんね。

GOTYを逃しても、沙悟浄や三蔵法師がもっと出てくる続編を作るのではないでしょうか?

似たゲームとして、「DARK SOULS」シリーズは第三作目まであります。「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズは、ギリシア神話編ではナンバリング三作に加えてその他にも数作、北欧神話編では二作が出てます。「黒神話:悟空」も続編ぐらいまでは出ても、違和感ないですね。

個人的には、本作ではじめてソウルライクをプレイしたので、続編も期待してます。どのような進化を見せてくれるのか、期待してます。

本作みたいなアクションRPGだけでなく、個人的には、LIMBOINSIDEみたいな個性的な作品や、上田文人さんのICOワンダと巨像人喰い大鷲トリコみたいな世界観など、とても雰囲気のある作品が中国から生まれて欲しいと思ってます。

というわけで、結局100時間以上もやった本作「黒神話:悟空」、中国発という意味でも、流行りのソウルライク系列としても、世界中のゲームファンが求めた高いハードルはクリアした作品だったと思います。

遊戯科学さん、次作(続編?)にも期待してます!

(了)







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岩澤康一
よりよい社会をみなさんと、よりよい「コミュニケーション」を通じてつくることを目指しています。これからも頑張ります。よろしければサポートのほど、お願いいたします!

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