大坂天王寺動物園(2023/1/29・2023/2/4) 後編
7.アイファー
ここは、爬虫類の展示がメインになっており、見どころは、ミシシッピワニ、ホウシャガメ、アメリカドクトカゲ、ローゼンバーグオオトカゲになります。
ミシシッピワニが、ここでは、天王寺動物園で飼育されている中で一番大きいワニになります。北アメリカを生息地とするワニで体長は、約2mくらいになります。口がU字状になっているのが一つの特徴になります。来館した時にめちゃくちゃ動いてくれていたので、面白い所が多く見れました。
まず、潜っている時、目を守るために膜を張る所です。目に直接水が入らないよう保護されています。他にも水面近くを泳ぐとき、鼻と目がほぼほぼ同じ位置にあることです。呼吸をしつつ地上の様子を観察するのにちょうどいい形になっています。
次は、ホウシャガメになります。マダガスカル島南部に生息するカメで、甲羅に放射状の黄色い模様があることが名前の由来になります。この模様が非常にキレイなため、「世界でもっとも美しいカメ」と言われることもあります。また、天王寺動物園のホウシャガメは、今が見どころになります。それは、繫殖しており、繫殖個体を見ることができるからです。特に、子供の方を見たら、ホウシャガメの美しさが感じれると思います。
しかし、このホウシャガメは、問題を抱えたカメになります。それは、「絶滅危惧種(絶滅危惧IA類)である」ということです。原産地での開発が原因で数減らしていますが、同時にペット目的での密輸によって、数を減らしています。ワシントン条約付随書Ⅰに指定され、商業目的での取引が禁止されています。ペット需要、生息域の破壊というダブルパンチで生存が脅かされており、特に、ペット需要が生き物を追い詰めているということを考えさせられると思います。
そして、ローゼンバーグオオトカゲになります。このトカゲは、オーストラリアの乾燥地に生息しており、乾燥した大地や硬いアリ塚(シロアリの巣)に巣を掘って暮らしています。私が見てほしいと感じたのは、トカゲよりも、彼らの生態になります。それは、「ライトを代わりにして日光浴をしている所」になります。トカゲを含めた爬虫類は、変温動物であるため、自身で熱を作ることが難しく、日光で体温上昇を行います。体温の調整だけでなく、骨を作ることもその目的になります。骨を作るために必要なビタミンD3を紫外線を浴びることによって作っています。(*ここだけの話ではありませんし、爬虫類を飼育している方にとっては、何も珍しい話ではないことは、理解しています。)つまり、私は、トカゲの行動の方を観察してほしいと感じています。
最後は、アメリカドクトカゲになります。アメリカからメキシコの砂漠や乾燥地帯に生息するトカゲになります。これは、名前にある通り、毒を持つトカゲになります。実は、毒を持つトカゲそのものは、非常に珍しいです。毒を持つトカゲは、アメリカドクトカゲとメキシコドクトカゲの2種類が代表で、数は非常に少ないです。また、体の色彩も黒と赤にっっており、遠くからでも目立つ色をしています。それは、「俺には毒がある!!」ということを目立たせる警告色としての役割を果たしています。
毒があり、とても怖い生き物に見えますが、実は、非常に意外な生態を持っています。それは、「普段は大人しい」ということです。あまり、活動的ではなく、土の中で潜っていることが多いです。それが、飼育員さんの悩みだそうで、土に潜ってしまったら、展示している意味がなくなってしまいます。よって、土を潜りにくい柔らかいものにするなど、地面の上に出てくるようにしています。つまり、皆に見せたい飼育員と隠れたいアメリカドクトカゲの戦いがここで見ることができます。
本来は、地下1階で、日本の爬虫類を展示しているのですが、来館時は改装工事中ということで、入ることができませんでした。3月下旬にオープンするので、早く行きたいです。
8.猛禽舎
ここでは、珍しい鳥がいたというより、「ナニコレ⁉珍百景」みたいな光景を紹介することが中心となります。つまり、運が良ければ、見られる面白光景の紹介です。
まずは、メガネグフクロウになります。名前の通り、白い模様がメガネのように周囲を囲っていることが名前の所以になっています。彼らの面白かった所は、「ストーブから絶対に動こうとしない」所になります。生息地が南米の熱帯林なので、寒さに弱い所があるため、彼の所には、ストーブが置かれていました。2日に分けていったのですが、2日ともストーブからは、離れた所を見たことがありません。エサが置かれても動こうとしませんでした。つまり、冬の風物詩で、人間と同じく、寒い日は動きたくないということです。
次は、ソウゲンワシになります。これは、ソウゲンワシそのものではなく、彼のための餌に集まるスズメに注目してしまいました…私が見た時は、エサが置かれており、そこにスズメが肉をついばんでいました。ここの小屋が何か見た時にワシと尻、スズメは、不味いことをしたと感じました。しかし、写真のようにソウゲンワシは、堂々としていますが、堂々と自分の餌を横取りされていました…これでいいのかとも…
ここまでは面白く書きましたが、真剣にこの様子は良くないなと思いました。それは、「野生の鳥からの鳥インフルの感染」です。そもそも、動物園の目的は、動物の保全、研究、啓発になります。保全の一環として、動物園の個体には、繁殖させ、野生への復帰も検討されている個体がいます。その時に、鳥インフルにかかったということになれば、殺処分せざるをえません。ましてや、絶滅の心配される生き物に関しては、一匹の損失が、大きな損失になります。つまり、生き物を守るためにも保護施設で生き物を殺処分せざるをえないという最悪の出来事を起こしてはいけないということです。
実際、鳥インフルの感染の確認で、動物園が一時休園ということもある上、園内の鳥から鳥インフルが見つかり、殺処分するということが実際にありました。詳細は、以下のサイトからご覧ください。
鳥インフルになる要因に野生の鳥との接触があり、その原因になるきっかけの一つに「餌付け」があります。動物園の個体は、栄養管理が厳密にされており、変なものを食べさせて健康を損なわせないためにエサをあげてはいけません。その上、エサを与えることで、野生の生き物を引き寄せ、動物園の個体と接触させることで、鳥インフルに感染させてしまうということが想定されます。実際、そのような光景を見たわけでもないですし、ここのスズメが餌付けがきっかけなのかも断言できません。(*私は、学習した個体だと予想しています。)しかし、動物園の個体を病気にする行為そのものは、絶対にしてはいけません。「餌付けをしない」は動物園のルールでは、守って当然のものになります。動物園のためにも守りましょう。
最後は、コンドルになります。こちらは、行動が面白かったです。一番印象に残ったのは、「小屋に帰りたがった」所を見たことです。バックヤードの小屋があるので、何とか扉を開けようと嘴でドアノブを回そうとしていました。ずっとドアノブをまわそうとしていたので、帰りたくて仕方がなかったのでしょう。ただ、ドアノブを回せば、扉が開くことを知っているが故の行動であるため、コンドルに限らず、鳥は賢いなとも感じました。
コンドルで面白かった所は、もう一点あり、それは、ウシの骨が置いてあったことです。骨付き肉の食い粕なのかと思い、何故、ウシの骨があるのかを聞いたところ、「腐食の肉も食べるためその雰囲気を出すために置いている」と答えてもらいました。つまり、コンドルは、アフリカに生息するハゲワシのような生き物であるということです。ただ、施設の中で飼っているだけでなく、現地では、どのような生き方をしているのかが、飼育施設の中に置かれているもので知れる・考えられる所が面白いなと思いました。
9.アフリカサバンナ
今の天王寺動物園最大の見どころと言っても過言ではない所になります。また、今の動物園がどのように変わっているのか、そのモデルとなる展示になります。ここでは、アフリカに生息する動物を展示していますが、一番の特徴は、「生態展示」、つまり、現地の自然を見せつつ感じる展示になります。
皆さんは、動物園の光景のイメージは、どのようなものをお持ちでしょうか?多くの人は、檻の中に動物を入れている印象が強いと思います。しかし、現在は、檻の中に動物を閉じ込めることをやめ、風景などを再現し、本当にその動物たちが生息しているような再現展示へと変わっています。
ただ、動物の展示スペースだけサバンナっぽくなっているわけではありません。次の展示スペースまでの道も森の中のように整備されており、アフリカの森林の中を歩いているような構成になってました。
まずは、カバになります。ここで面白かったのは、カバそのものではなく、同居人である「ティラピア」になります。カバと共存ができる生物として、カバと同じ展示スペースで展示されています。ティラピアは、温暖な気候に生息しており、「温かい」さえ条件があれば、どこでも生息できるくらい環境適応力の高い魚です。
また、ティラピアは、雑食性で、口に入るものは何でも食べます。ここで展示されているティラピアは、カバのおこぼれを利用して過ごしています。ティラピアは、日本でも温暖な地域に定着し、外来種として脅威になり、駆除が行われています。(*下の動画で、ティラピアがどれだけ日本で繁栄しているのかが分かります。)しかし、ここで見られるティラピアは、「外来種」としてのティラピアではなく、「本来の自然」で生きるティラピアが見られます。
ここでは、カバが水中で糞をすることで、水に栄養が送られ、藻の栄養になります。また、カバが水に入ることで、古い皮膚が流されます。藻とカバの古い皮膚がティラピアの餌になります。つまり、カバそのものとカバによって生産されるものを利用してティラピアは、生きているということになります。「生態系とは何か?」に対しての解答は、「生物同士、あるいは生物と非生物(環境、天候等)との関係」となります。また、生物同士の関係は、「食うー食われる」が主な関係になりますが、ここでは、上記のような食物連鎖としての関係ではなく、「間接的ではあるが、利用する関係」であることが面白いです。
ここで、「生物の関係性」を見ることが面白いですし、日本で脅威となる外来種の本来の姿を見ることができる点も非常にいい展示だったと思います。また、ティラピア自身も非常にカラフルなものが多く、ティラピアにも見ごたえがありました。
次は、クロサイになります。私が、来館した時は、オスとメスのペアで一緒に飼育されていました。多分、繁殖を狙って、この時期に同居させていたと考えます。ちょっと面白いなと感じたのが、オスの自慢になるであろう角がすり減っていたことになります。すり減った理由は、「バックヤードのコンクリートの檻の中で角研ぎをしていたら、削れ過ぎてしまった」とのことです。もし、ここでクロサイを見たら、「あぁ、削りすぎてしまった奴がいる」そんな感覚で見るのが面白いと思います。
ここで、一つ注目してほしい所があります。それは、「密猟」です。サイの角が、アジアでの伝統薬として利用されており、その需要は今でなお高いままです。ここでは、クロサイの展示をしていますが、他にもミナミシロサイ、インドサイ、スマトラサイなどがいますが、全て絶滅の危機にあり、特に、キタシロサイは、事実上絶滅したといえるサイになります。動物の絶滅は、その地域で起こされる環境破壊だけではなく、世界の誰かが求めているが故に引き起こされている、つまり、グローバルな問題であることを思い起こしてくれます。
次が、本命のアフリカサバンナエリアとなります。ここでは、グランドシマウマ、エランド、アミメキリンが同じスペースで飼育・展示されています。これら3種の同時展示で面白いのは、「自然でのすみわけにそった展示をしていること」になります。彼らの共通点は、草食動物であるということです。しかし、草なら、何でも食べるというわけではありません。シマウマは、草原の草(主に長い草)を食べ、エランドは、草だけでなく、木の若い芽やその枝を食べるのに対し、キリンは、木の葉を食します。これら3種は、食べるものが違う、つまり、生きるために必要な条件が違うことが分かります。よって、ニッチ(生態的地位)が違うことにより、自身の生存圏が重ならず、お互いの生存圏も侵されません。だから、3種での共同飼育・展示ができるということになります。なんとなく一緒にいるのではなく、「どう違うのか」を考えて見てみると、違う所は何かが見える面白い展示だと思います。
この天王寺動物園と同じ展示を行っている動物園があります。それは、横浜にあるズーラシアです。こちらはとても広々としており、サバンナの展示では、多くの生き物が同時に展示されています。いつかこちらにも行ってみたいと思います。
サバンナエリアでは、草食動物だけでなく、当然、肉食動物も展示されています。それは、ブチハイエナとライオンになります。
ハイエナというと、「汚らしい」や「卑怯者」、「泥棒」などとつまり、死肉屋という非常に悪い印象が多いと思います。しかし、ハイエナは、そればかりでなく、ハンターとしての面もあり、むしろ、自然下では、「狩りをして獲物を獲得することの方が多い」くらいです。自分よりも大きいシマウマやキリンが餌食になることもあるくらいです。また、ここでは、ガラスの目の前に骨が置いてあり、運が良ければ、そこで骨を食べている様子が見れます。基本、寝ていることが多いですが…
サバンナの王様と言えば、ライオンになります。そのライオンも当然、展示されており、ここでは、オス1匹とメス2匹で展示されています。基本、寝ていることが多く、ここでも寝ることも多かったのですが、どちらかというと座って遠くを眺めている所が多かったです。
このサバンナエリアのてんじで一番面白かったのは、「ライオン、ハイエナ、ここで展示されている草食動物が一つの空間で暮らしているように見える」ことです。当然、肉食動物と草食動物を全く同じスペースで飼育するわけにはいきません。しかし、本来は、同じ空間で暮らす生き物たちです。とって、ここでは、肉食動物のスペースからでも草食動物のスペースが見えるように設計されています。また、肉食動物と草食動物の区切りに堀が彫られており、その堀がコンクリートではなく、岩石でできているように再現し、自然にできた堀のように見せています。生き物単体で展示するのではなく、サバンナ全体で生き物たちが暮らしているように見せている所がとても面白かったです。
10.環境エンリッチメント
最後は、「環境エンリッチメント」について説明していきます。皆さんは、「動物園の動物たちは幸せか?」と言ったら、どう感じるでしょうか?これ自体、色々議論の的になりますが、少なくとも動物園の中で退屈しないように暮らせる工夫は必要ではないでしょうか?つまり、動物をただの飾り物にしないということになります。その時のキーワードがこの「環境エンリッチメント」になります。
「環境エンリッチメント」とは、以下のように説明されます。
私は、「本来の自然環境に近い環境で飼育すること」や「本来の生態をだせるように飼育する」または、「退屈しない生活をできるようにする」ことが環境エンリッチメントの一環だと思います。先程説明したサバンナエリアでの生態展示も環境エンリッチメントの一例となります。天王寺動物園では、動物たちに退屈な思いをさせないための工夫をしています。特にエサを巡って創意工夫されたしかけが多かったです。以下、写真で説明していきます。
今回は、4例ほど紹介しましたが、これ以外にもまだまだありました。実際に生きた生の動物を見るだけでなく、おいてあるものを見て、底からどのような目的があるのか、どのような行動をするのかを考えるのも動物園の楽しみかたの一つだと思います。
11.まとめ
以上が、今回での天王寺動物園での面白かった点や見どころになります。私が来館した時の印象として、「天王寺動物園は、今、変化している最中である」と感じました。環境エンリッチメントもですが、特に、サバンナエリアのような生態展示へとこだわっていました。つまり、実際の自然で生きているかのような動物たちの姿を見てほしいということです。ここでは、紹介できなかったのですが、ペンギン・アシカの展示は、新しい施設を作っている途中でした。特に、ペンギンにおいて、「フンボルトペンギンを飼育しており、彼らは南米の生息になる。だから、ペンギンというと南極のような氷をイメージした展示から本来の生息場である岩場や土を土台にする」と飼育員さんから教えてもらいました。大阪テレビが、ペンギンとアシカの施設をどのように変えているのかについて非常に分かりやすく報道していました。こちらも是非、ご覧ください。
「動物を見せる展示」から、「現地の自然を切りとり、その場面で生きる動物を見せる」という動物園へと変わっていく最中の動物園を見れる時に天王寺動物園へ行けたと感じています。歴史ある動物園であるが故、すぐにすべてを変えるわけにはいきませんが、過去の動物園の印象と今の最先端の動物園はどうなっていこうとしているのかを対比で感じる絶好のタイミングで行けたと思い、この時期に行けたことは、非常に意味があったと思います。
以上になります。ここまで読んでくださりありがとうございました。
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