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大坂自然史フェスティバル(2022/11/19~2022/11/20)

1.初めに

 こんにちは。IWAOです。11/19、11/20の2日をかけて大坂自然史博物館に行ってきました。大坂自然史フェスティバルというイベントが2日間にかけて開催されているということで、どのような展示がされているのかを見るために行ってきました。各団体が出品するブースでの説明がとても面白く、どのような展示をしているのかなどについて話を聞き、質問をして、私なりに学んできました。
 今回は、大坂自然史フェスティバルで私が面白かったと感じた展示についてここで解説していきます。

2.琵琶湖ベース

 まずは、琵琶湖ベースという水族館をご存知でしょうか?最近、開館したばかりの水族館になります。小型の水族館ですが、琵琶湖にしかいない淡水魚、両生類の展示を行っている水族館になります。販売していたグッズの多くが、サンショウオやカエルなどの両生類でした。私は、朝のNHKのニュースで知りましたが、琵琶湖の固有種の展示が豊富だなと感じました。いつか、ここに行ってみたいなと感じる水族館でした。
 https://www.biwako-base.com/

3.骨好き大好き中学教員の会

 このブースでは、哺乳類や爬虫類を中心とした骨格標本を展示していました。そのほとんどは、ロードキルのものをもらい、肉や繊維を落として骨格標本にしていました。鳥獣法等で許可なく野生の生き物を獲ってはいけないため、シカやイノシシは、猟友会からもらったものであると教えてもらいました。また、ヌートリアの標本もありますが、これは大阪府の機関から捨てられそうになったものをもらい、標本を作製したと教えてもらいました。

(めちゃくちゃ種類がありました。)

 ここでは、自分で作ったものだけでなく、川や海から拾ったものもコレクションにしていました。その一例は、この写真になります。でかい羽根に見えますが、これは、オットセイの肩甲骨です。アラスカの海で拾ったと教えてもらいました。

このでかい羽見たいなものです。

 シカの頭骨を川で拾ったとも言っていました。私たちが普段目にする骨格標本は、全身を骨で組み立てたものが多いので、部位ごとにバラバラになったものだけを見ても、どれがどの骨かわかりません。しかし、動物ごとに大きさ、比率、曲がり方などが違うため、それで見分けていると教えてもらいました。

(川で流されてバラバラになるものなのに、どこの骨でどの動物のものかまで分かるとはすごすぎますね…)

 ここのブースで面白かった体験ができました。それは、「標本の組み立て」です。私も分解した魚の標本を作ってますが、分解して部位ごとにして終わりです。しかし、それを元通りに組み立てるとなると非常に困難な作業になります。また、煮るなどの過程で肉や繊維を落とすのですが、骨や歯の部分の一部は、どうしても落ちてしまいます。そのバラバラになったものを組み立て直す途中の骨を持ってきてもらい、私たちが組み立て直しました。

(狸の歯がどこにはまるのかを組み立て直すものになります。)
(狸の下あごの歯を組み立てましたが、半分もできませんでした…
とても根気のいる作業です…)

 20日の閉館ギリギリのタイミングで、貰たものがあります。それは、シマウマの頭骨(30%に縮小したもの)です。ありがとうございました。博物館の収蔵庫に入っていたものを基に作成されました。そのため、とてもリアルな頭骨の縮小標本です。

4.堺ふれあいの森

 ここのブースの目玉展示は、「ジュニアたちによる標本作成」になります。虫を捕まえて、標本を作製するのに満足できず、生きている時の姿にこだわって作成していました。

(左を作った子が右の立体的なカブトムシを作りました。)

 このカブトムシだけでなく、カミキリムシを作成しましたが、カミキリムシの胴体がどれだけ浮いていて、右足と左足の位置の微妙な違いがどれだけあるのかを生きている個体の観察を繰り返して完成させたと聞きました。

(観察を積み重ねて完成させた標本がこれです。とんでもない執念ですね…)

 昆虫標本の展示以外でも面白いと思う点がありました。それは、「堺市の自然」です。堺市の自然でも、「里山生態系」の現状に関する説明についての話を聞きました。堺市全体で見た場合、まとまって残っている自然は、下のパネルのような「南部丘陵」という所で、その中でも完全に人の手入れが入っているのは、黄緑の部分で、かつての里山生態系が残されているのは、極一部のみとなっております。

 堺市全体では、5251種の生物が確認されていますが、この黄緑色のふれあいの森の部分では、1710種類が確認されています。つまり、「堺市全体の約32.5%がここにいるホットスポット」になっています。
 このふれあいの森について、私が、アカガエルがいるのに気づいた時に生物保護についての話を聞きました。

 アカガエルは、堺市に生息しているが、このふれあいの森のみが確実。各地でいることは確認されているが、世代を超えてそこで生息しているわけではない。

聞いたことをうる覚えだが、文字に

 


(緑が繁殖までできる地点。薄緑は、繁殖はできないが、そこで住むことまではできる地点。)

 生き物が住める場とその地で代々繁殖する場は必ずしも一致しません。上の図で表すとなると、①や②の状態に近いと思います。アカガエルに限った話ではありませんが、生息地が狭いこと、部分的に点在している状態は好ましくありません。その場で病気が蔓延し、逃げ場がないことなどのリスクを考えたら、全滅する可能性があります。よって、生息地を拡大しなければなりません。この図に当てはめたら、①は、緑の部分が拡大すること、②は、部分的な生息地を③のようにつなげることが望ましいです。そのようなことをアカガエルの説明から感じました。

5.淀川イタセンパラ保全市民ネットワーク

 ここは、「イタセンパラ」を指標生物として、淀川の自然について解説した展示となっております。残念ながら、イタセンパラは、特別天然記念物にしてされており、運搬が非常に厳しく制限されているため、ここでは見れませんでした。しかし、琵琶湖博物館、東山動物園、アクアトト岐阜などでは生体が展示されています。よって、現地の博物館へ行き、生きたものを見ることをお勧めします。イタセンパラは、婚姻色がキレイです。紫色をする所が、他のタナゴとの違いになります。

代わりになりますが、我が家で昔飼育していたニッポンバラタナゴを載せます。
タナゴは、日本の生きる宝石だと思います。
(左から、モクズガニ、在来種、外来種となります。)

 イタセンパラを何故、指標生物とするのかについて説明します。イタセンパラを含めたタナゴという魚の最大の特徴は、「イシガイなどの二枚貝に産卵する」ということになります。

これは、野生の二枚貝です。この中に卵を産みます。

 その二枚貝は、繁殖しますが、産まれた時から貝のまま生まれるのではなく、プランクトンのような状態になって生まれます。種類によりますが、海や川なども漂うものもいますが、タナゴの産卵に関わる二枚貝は、「大きくなるまで魚に寄生して過ごします。」寄生といっても寄生バチなどのように魚から栄養を搾り取るのではなく、ただくっついているだけです。この二枚貝に寄生する魚は、在来種のみで、ブラックバスやブルーギルのような外来種にはくっつきません。つまり、外来種が放され、定着すると在来種の数が減るため、二枚貝が繁殖するための在来種が減り、二枚貝そのものが減ります。二枚貝の数が減ることで、イタセンパラを含むタナゴの繁殖ができなくなります。その上、二枚貝は、水質浄化を行います。まとめると、下のような図の負のサイクルを生みます。
 
「ブラックバスの放流よりも、開発の方が問題だ」みたいな反論もありますが、実際、開発がされてない所に放流され、在来種が激減した事例があります。先述したように、外来種を放流したことで捕食圧を受けた結果、在来の魚が食われただけで終わるのでしょうか?そのようなことは決してなく、その魚を何らかの形で、利用していた生物に対しても間接的に影響が出ます。食われた魚がいなくなったせいで、利用していた生物も姿を消してしまうことも決しておかしいことではないと思います。生態系というのは、そのように複雑につながっていることを理解しなければなりません。
 ブラックバスの問題点とは何かやおかしい突っ込みに関して、とてもいい動画が2本あります。こちらの動画を閲覧することを超絶お勧めします。
(*Rickyさん、勝手に動画を挙げてしまい、申し訳ありません。)

在来種に寄生して、幼生期間を過ごしてますが、これだと白点病にかかったみたいですねww
在来の魚とは何万・千年単位で関係を作ってきたが、新米の外来種は、そのような関係をすぐには作れないと思います。
ギンブナ、カネヒラ、オイカワなどが展示されていました。彼らに二枚貝の幼生が寄生します。

 では、何故、イタセンパラを守ることは、何につながるのかというについてもここで解説します。
 先述したように、イタセンパラが生息できる環境のためには、まず、「産卵もとである二枚貝が生息できる環境」が必要になります。その二枚貝が生息できるためには、彼らが寄生する先である在来の魚が必要になります。その在来の魚が生きていけるようにするには…と多くのことが繋がります。つまり、イタセンパラの保護を起点にして連鎖的に地域の自然環境を守ることにつながります。だからこそ、イタセンパラの保護が大切であるという理由になります。

 外来種は、在来の生き物に対して大きな脅威ですが、外来種を取り除けば、元の自然が帰ってくるわけではありません。在来種が元に戻ってこれる環境を取り戻さなければならないことも大事です。ダムのような止水域を作ってしまったことが間接的にバスなどの外来種を定着する要因にもなりえたので、そのような環境を作らないこと、在来種にとって、隠れ家となる場所を増やすことなどがその例になります。このような話をブースの人から教えてもらいました。開発が在来種の減少の要因になってのは、間違いないです。しかし、開発は、私たちの生活を守るために大切なものであり、すぐにはなくせません。つまり、「いかにして自然を守りつつ、私たちの生活の場を守るのかというバランス」が求められているということになります。
 開発との関係だと、モクズガニが象徴的です。幼生の時期は、プランクトンとして浮遊して海で過ごし、成長すると海に帰ってきます。カニのほとんどは、海と川を回遊するものが大半で、サワガニなどの極一部が純淡水性です。つまり、モクズガニがいるということは、「川と海が繋がっていること」を現しています。
 ダムのような水をコントロールし、生活を守らなければなりませんが、自然の恵みを受け取る、繋げるためにも水量のコントロールと環境保全の両立が求められています。

20㎝は超えていたと思います。めちゃくちゃでかかったです。

6.池田・人と自然の会

 ここでは、主に水草の展示が中心に行われていました。ここでの展示で改めて思ったことですが、水草は、「水位によって姿・形を変えることがある」のが非常に面白いなと思いました。耕作放棄、除草剤の影響によって水草は数を減らしています。しかも、オオカナダモのような外来種も猛威を振るっています。そのような状況でも残り続けた水草が展示されていました。
 今回のイベントで一番面白いと感じたことでもありましたが、まず、見てほしい写真があります。横から見た場合の方が分かりやすいですが、「同じ種類でも姿・形が違う」ことが現れています。

 これは、「表現型可塑性」を指しています。表現型可塑性とは、「同じ遺伝子を持っていても環境によって姿・形を変化させる」というものになります。ここでは、ヒツジグサがいい例になりますが、「浮草」となっているものは、スイレンのような形をしています。しかし、「沈草」となっているものは、スイレンのような形ではなく、私たちがイメージする水草の形をしています。下の図のように赤丸の地点(地面よりかやや水中か完全に水中か)のどこに位置するのかによって、姿・形を変えます。つまり、位置の違いによって姿・形が違うのを展示で見れた所がとても面白いと感じました。遺伝子だけで生き物の姿・形は変わるとは限らないということを表しています。ブースの人に解説されるまで気づきませんでした。このことを教えてもらい、この展示がめちゃくちゃ面白いとやっと思わされました。

 *表現型可塑性の参考として、ウキシバが挙げられます。参考にどうぞ。

 日本には数多くの水草がありますが、その多くは絶滅の危機にあります。その要因に、開発の影響によって、水域環境が単調化してしまったことになり、同時に水草を生息環境にしている生き物が、減少する原因にもなっています。それぞれの水草がそれぞれ姿・形を変えることによって、様々な水位に生息しつつ、隠れ家、産卵場を提供します。しかし、コンクリートで変化のない水場を作ってしまったら、底が深いだけの水場があり、そこにしか住めない生き物しかいないことになります。よって、どこをみても同じ生き物しかいない、種数が少ない自然に変わってしまいます。
 また、このような水草の存在が、台風や洪水などの災害などがあった場合、その衝撃を和らげる緩衝地帯、生き物にとっては避難地帯にもなります。これは、私たちの生活でも同じです。主に湿地帯ですが、このような湿地帯を保護することが、新しい防波堤を作るよりも安く、簡単に防災につながるとの研究結果もあります。今、水草の住める湿地などの環境が求められています。
 

7.伊丹市昆虫館

 ここでの目玉展示は、「生きたカブトムシ・クワガタが展示されている」ことになります。私が、ムシキングをプレイしていた世代であったため、ここに展示されていたカブトムシ・クワガタは、ぶっ刺さる個体ばかりでした。
 持ち上げたら、怒って挟んでケガをさせるリスクがあるため、その個体を持ち上げることはできませんでした。しかし、軽く触る程度なら、問題なく、つかまっている木を持って記念撮影をしてもらえました。私は、サタンオオカブトとヘラクレスオオカブトで記念写真を撮ってもらいました。他にもオオクワガタやニジイロクワガタがいました。
 「ヘラクレスオオカブトとその仲間は大人しい」との話があります。ただ、実物が、標本じゃないかというぐらいじっとしていたので、あんまり動かないが故、大人しいのだなと感じました。
(*コーカサスオオカブトはあまりにも気が荒すぎるから展示できないとも言っていましたww)

(初めて当てたレア甲虫は、サタンオオカブトでしたので、彼と会えたのは光栄です。今も一番お気に入りのカブトムシです。)
(ギラファノコギリクワガタもいて、めちゃくちゃでかかった…)
(世界のカブトムシというとヘラクレスオオカブト。これは、ヘラクレスの中でも最大のヘラクレス・ヘラクレスでした。)

8.まとめ

 今回は、大坂自然史フェスティバルへと行き、ここで面白いと感じた点をまとめてみました。私が、魚や虫を飼育しているので、そちらの説明に偏ってしまいました。しかし、他にも菌類、鳥類、植物、恐竜の展示もなされていた上、知床、沖縄など日本全国からも出展がありました。関西圏を中心としつつも、扱う展示は非常に広かったと思います。
 この大坂自然史フェスティバルで感じたことは、開催者は、自分の住む所の自然が本当に大好きだということです。6.池田・人と自然の会で、私に水草を教えてくださった方から、「私は、魚が好きだけど、本当に好きなのは、その魚たちの生息を支える環境が好きだ。だから、そのような環境を守っていきたい」と述べていました。地元の自然を守り、その魅力を発信していくのは、研究員、行政で勤める人たちだけでなく、ボランティアなど、地元の人たちの活動があってこそだと思います。彼らがいなければ、地域ごとの自然の現状や課題が分かりません。彼らの貢献は、大きいものであると改めて感じました。
 今回の報告は以上になります。大坂自然史フェスティバルに限らず、このようなイベントが別で開催される場合、行ってみたいと感じました。その時は、このような報告レポートが出ます。
 最後になりましたが、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


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