【嘘エッセイ】お手軽2本セット
電気を消してもなかなか眠れない。
そんな夜に、嘘の思い出についてポチポチ綴ってみました。
全部嘘かもしれないし一部本当かもしれないショートエッセイです。
ちょっとしたコラムだと思って気軽にちょいちょいと読んでください。
馬を延長した話
大学2年の秋、2限の授業に間に合うように家を出たあと定期券を持っていないことに気づいた。もう駅は目前だった。
引き返すか迷ったが、ここまで馬を2頭乗り継いでやっとたどり着いたのでいまさら引き返すわけにもいかない。切符を買うかとカバンを漁ったが、財布も見当たらない。小さなポケットからずっと探していたタイプCの充電コードが12本出てきて、こういうときって過去の失くしものが本当によく出てくるものだなぁと感心した。
試しにタイプCのコンセントを馬につないでみたところ、今までの比にならないくらいスピードが上がった。
じゃあもうコレでいいじゃん!
そのまま走らせ続けて、なんとか2限に間に合った。
4限を終えて帰ろうとしたが、正門横に停めておいた馬はもうどこかに去っていた。仕方がないので徒歩で帰宅し、3日後に無事たどり着いてとてもよく眠った。
その時の馬の延長料金は3億円あまり。
現時点で2億5千万円までしか返せていません。
校庭で派手に秋を感じた話
変な小学生だった。
小学生のころから今まで、感性が全く変わっていない。
ある日突然、昼休みの20分間で校庭の一番外側を一周歩いてみようと思いついた。そしてその歩数を数日間記録して、平均を出すことにした。
計測初日、友達の誘いを断って校庭を歩き始めた。
なるべく一定の歩幅になるよう気を付けながら、20分かけてちょうど一周した。結果は666歩。
ゾロ目だ!と興奮しながら教室に戻り、いそいそと自由帳に記録した。
翌日も図書室に行く誘いを断り、校庭へと繰り出した。初日と同じ場所を、同じ歩幅で歩くように意識した。20分ちょうどで一周し、666歩だった。
カチッと音がした。
え?
その瞬間、校庭からすべての人が消え去った。
仲良しの友達も、先生も、教育実習生もだれもいない。
校庭の真ん中に大きな亀裂が入り、爆風とともに紫色の何かが出てきた。
轟音と振動、ものすごい熱波が同時に襲いかかる。
ゆっくりと出てきたそれは、ほかほかのやきいもだった。
おいしそ~。
ほかの児童が全員いなくなったので、わたしはそのやきいもを独り占めすることができた。めちゃくちゃうまい。なめらかな舌触りでとっても甘い。焦げてカラメルになった蜜の香ばしい香りが鼻に抜け、脳内にもみじが舞った。そうか。もう秋だ。
ほくほくで教室に戻ると、全員普通に授業を受けていてめちゃくちゃ怒られた。そして授業は爆睡した。
また眠れなかったら更新します。